燃費や走りが「いいクルマ」と進化著しいトランスミッションの関係(2/2)
- 筆者: 清水 和夫
- カメラマン:茂呂幸正
ハイブリッドや自動運転の時代ほど、トランスミッションの重要性は増す
また、ホンダはトルクコンバーター付きのツインクラッチDCTを米中のアコードクラスのセダンに搭載している。DCTにトルクコンバーターを採用するのはホンダだけのアイディアだが、その意図はどこにあるのだろうか。
実はシングルクラッチだろうが、ツインクラッチだろうが、制御で難しいのは発進だ。坂道ならなおさら難しい。
ヒルホールドの自動ブレーキでクルマが動かないようにするが、ドライバーがアクセルを踏んだとき、クラッチを繋ぎながら、ブレーキを解除する。坂道発進でなくても、自動クラッチは発進時のクラッチ制御が難しく、エンジンの低回転のトルクと半クラッチの微妙な関係が必要だ。
DCTは走りだすとダイレクト感があって、気持よく走れるし、燃費と性能でもトルコンやCVTのATを凌駕している。だが、私自身は発進時の「もたつき」が嫌で、ポルシェ以外のツインクラッチはあまり好まない。
たとえば、微低速で段差を乗り越えるようなシーンでは使いにくいのだ。ホンダはDCTの欠点を補うために、発進時だけトルクコンバーターを使うDCTを開発したのである。でも、10段ギアのトルコンATがあるので、一本化するべきかもしれない。
なお、ホンダはハイブリッドにもDCTを積極的に使っている。フィットハイブリッド とレジェンドハイブリッドにはそれぞれサイズは異なるものの7速DCTを、NSXには9速DCTをそれぞれモーターと組み合わせているので、DCTの発進時の「もたつき」はモーターで補っていることになる。
また、普通のガソリン車にはベルト式CVTを用意する一方で、クルマ好きのためにS660からシビックタイプRまで6MTも用意している。これほどトランスミッションの種類を持っているメーカーは珍しい。
だが、私はハイブリッドや自動運転の時代になるほど、トランスミッションの重要性は増し、エンジンを補完する機能部品ではなく、エンジンとブレーキとドライバーの橋渡しをする重要な司令塔ではないかと考えている。
[Text:清水和夫]
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