ホンダ シビックが10代目で国内7年振りの復活! 新型シビックの走りはいかに

ホンダ シビックが10代目で国内7年振りの復活! 新型シビックの走りはいかに
ホンダ 新型シビック ハッチバック(右)とセダン(左) ホンダ 新型シビック ハッチバック(左)とセダン(右) ホンダ 新型シビック ハッチバック(右)とセダン(左) ホンダ 新型シビック ハッチバック(右)とセダン(左) ホンダ 新型シビック ハッチバック ホンダ 新型シビック ハッチバック ホンダ 新型シビック ハッチバック ホンダ 新型シビック ハッチバックに乗る筆者の河口まなぶ氏 ホンダ 新型シビック ハッチバックと筆者の河口まなぶ氏 ホンダ 新型シビック ハッチバック ホンダ 新型シビック ハッチバック 画像ギャラリーはこちら

ホンダ 新型シビック セダン/ハッチバック(日本仕様)はどんな仕上がり?

この夏、日本でも発売される、ホンダ新型シビック。日本に導入されるのは3タイプ。セダン/ハッチバック、そしてスポーティモデルのタイプRだ。

発売を間近に控え、メディア向けに早くも日本仕様の新型シビック プロトタイプに試乗する機会を得た。10代目となり日本での復活を果たす新型シビックはどんなクルマに仕上がっているのか? 気になる試乗レポートをどこよりも早くお届けする!

10代目新型シビックのコンセプトは“操る喜び”

ホンダ 新型シビック ハッチバック(右)とセダン(左)

ホンダ新型シビック プロトタイプの試乗会は、袖ヶ浦フォレストレースウェイで「CIVIC DAY」という名で開催された。パドックには巨大なテントを建てて、いかにもこの新型に力を入れていることをアピールしつつ始まったのだった。

プレゼンテーションが始まる。「10代目となるシビックは…」と言い放たれ、「コンセプトは“操る喜び”です」と、プレゼンは進んでいく。

もちろん気持ちは分かる。日本市場では2010年9月以降、特殊なタイプR以外の販売は行っていなかったが、ホンダとしては欧米でそれぞれ仕向け地別のモデルを送り出していたから、日本でその名が消えても世界では消えていなかった。そして今、再び日本市場に投入する新型について、いち早く我々に説明したいことがあることも分かる。

ただ、僕としてはここで改めて、ホンダにとってのシビックという存在についてより丁寧に説明して、その上で“改めて日本市場に投入する意味”を、場合によっては感情的な部分まで含め、ホンダとしての思うところを正直に述べて欲しいと感じた。

そうすれば、その後に10代目となる新型シビックのコンセプトは“操る喜び”という説明も、実際に聞いた時ほど軽々しく聞こえなかったかもしれない。

だから僕は、そうした部分における、ちょっと雑な感じを残念に思いつつも、そうはいっても話は始まらないので、新型の説明を聞いたのだった。

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生産はセダンは国内、ハッチバックは欧州

ホンダ 新型シビック ハッチバックホンダ 新型シビック セダン

新型シビックのラインナップはまず、セダンとハッチバック、そしてタイプRの3種類が存在する。セダンは国内で生産され、ハッチバックとタイプRは英国で生産されたものが輸入される形となる。

搭載パワートレーンはセダン/ハッチバックともに1.5リッター直噴VTECターボで、トランスミッションはともにCVTを採用し、ハッチバックにのみ6速MTも用意される。またタイプRは専用2リッターVTECターボに6速MTのみの組み合わせとなる。

ちなみに使用ガソリンはセダン(日本仕様 HONDA測定値)がレギュラー仕様となり、最高出力は173psで最大トルクが220Nm。ハッチバックとタイプRはハイオク仕様となり、ハッチバック(日本仕様 HONDA測定値)は最高出力が182psで、最大トルクが220Nm(CVT)/240Nm(6MT)。タイプR(欧州仕様 参考値)は最高出力が320psで最大トルクが400Nmとなる。

タイヤサイズはセダンが17インチのブリヂストンを履き、ハッチバックが18インチのグッドイヤーを履き、タイプRが20インチのコンチネンタルを履いている。

プロファイルはこんな具合。こうして新型シビックは欧州Cセグメントに投入されるモデルとして開発され、そこで存分に戦える性能を実現した、と説明されたのだった。

ちなみに今回、新型シビックタイプRは展示だけにとどまり、試乗できたのはセダンとハッチバック。ともに袖ヶ浦フォレストレースウェイを4周づつという極めて短い時間での試乗だった。

ライバルはVWゴルフとスバル インプレッサ

ホンダ 新型シビック セダン

まず試乗したのはセダン。走り出してすぐに、路面からの当たりがまろやかで、いかにもセダンらしい上質な乗り味が生まれていることを確認できた。これはVWゴルフやスバル インプレッサなどが、ライバルといえるだけの乗り心地の良さだろう。

その後も袖ヶ浦フォレストレースウェイを速いペースで走らせても、全く破綻のない感覚を伝えてくる。操舵に対して忠実に向きを変えて行く感じ。ただし、最終的にはフロントが逃げて行く傾向だ。

セダンらしい乗り味を追求したからか、ハンドルからの入力を速めると、ややグニュっとした感じがあることが確認できる。こんな具合でハンドリングは全体的にコシがあってしなやかな印象だった。

1.5リッターの直噴VTECターボエンジンは、滑らかな回転感と適度なパワー&トルクを伝えてきて、淀みなく吹け上がって行く印象だ。とりたてて快感を覚えるようなフィーリングこそないが、実直に仕事をする好印象さがある。

またCVTは、ゴムバンドフィールをなるべく改善してできる限り違和感を減らそうとしていることは感じられる。最終的には間延びを感じるものの、普段使いではそれほど不満も多くないだろう印象だった。

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ハッチバックはスポーティ感覚が強い

ホンダ 新型シビック ハッチバック

次に乗り換えてハッチバックを試す。こちらは走り始めから、先ほどのセダンとは明らかに味が異なる。端的に言ってスポーティな感覚が強いものだった。

とはいえ、先にセダンで感じた乗り味の良さは継承されており、そこにプラスアルファとしてのスポーティさが加わった印象だ。サスペンションの動きはセダンよりもシャキッとした感じがあって、キビキビと走る感覚はこちらの方が強い。

ハンドリングのキャラクターは、最終的にはフロントが逃げるような感覚に陥るが、そこに到達するまでの姿勢変化はセダンよりも積極的なものへと味付けされていた。実際にESCをオフにして姿勢変化の推移をみると、操舵に対してリアを積極的に回り込ませて旋回させる。が、ある程度のところまで来るとリアの回り込みをしっかりと抑えて粘らせるという味付けになっていた。

エンジンはこちらの方が出力が高いが、サーキットでの全開走行に関していえば、圧倒的に違う…ということはなく、なんとなく力があるかな?と思える程度にとどまった。おそらく街中や一般道での再加速や踏み直しの方が違いは大きなものとして感じられるのではないか。

といった具合で、アッという間に試乗は終了した。セダン、ハッチバック総じての印象は、悪くない仕上がりだったと報告できる。同業者の中には走りの細かな部分に対するコンプレインを挙げている方もいたが、僕としてはクルマの完成度としては悪くないと思えたのだった。

新型シビックは可もなく不可もなくの「いい人タイプ」

ホンダ 新型シビック ハッチバック(右)とセダン(左)

ただ、ここから先が今回の本質的な話なのだが、新型シビックはセダン、ハッチバックともに悪くない仕上がりだった一方で、特に印象に残るようなところがなかった。

例えばこれがかつてのホンダのプロダクトであれば、どこかに突出して印象的な部分があったり、その一方で明らかにウィークポイントと思えるようなところがあったり…という感じだが、今回は印象が薄かったのが正直なところだった。

エンジンが飛び抜けて高回転までキレイに吹け上がるでもなく、乗り心地はイマイチだけどハンドリングが光るわけでもなく…あらゆる面で可もなく不可もなくと感じたのだ。よく言えば、バランスがとれている。

もっとも欧州Cセグメントのライバルというのは、そもそもそうした可もなく不可もなくの「いい人タイプ」が多いわけで、例えばVWゴルフやスバル・インプレッサも大枠でみれば一緒かもしれない。しかし、そうした中にあっても例えばVWゴルフはトータルバランスの究極を感じるし、実際に乗った時になんだかんだで完成度のとてつもない高さがある。

一方でスバル・インプレッサはフラット4とAWDの独自性が感じられたりして、好きな人には響くだろう要素といえる。またインプレッサの場合は最近では、アイサイトに代表される安全性の高さが、事前情報としてユーザーにもインプットされているがゆえに選ばれる…という点で他と違う商品性の高さになっている。

そうしたものと比べると、新型シビックは極々あっさりした感じが否めないのだ。もちろん、装備的にも不足はない。けれどプラスαが見つけられない。

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欧州ライバルと戦える走りを実現

で、何が言いたいかといえば、「どうしてもこのクルマでなければ」といえるようなポイントが新型シビックにはあまりない、ということ。

例えばこれがタイプRならば、もう他に変わりがないような1台だから納得もいく。しかし新型シビックのセダンやハッチバックには、そうしたものが感じられない。なかにはデザインに惹かれる人もいるだろう…が、デザインは他のライバルに関しても同じように言えることであって、やはりどこかで釈然としないものを感じるのだ。

そこで冒頭の説明に話は戻るのだけど、今回のコンセプトは“操る喜び”と言っていたことが、心に響いてこないのだ。確かに乗り味も良くてハンドリングも悪くなかったし、エンジンも淀みなく吹け上がる。けれど、それらをして“操る喜び”と呼べるほど、他に圧倒的な差があるようにも感じられなかったのも事実である。

この辺りの表現は難しい。ホンダだって欧州Cセグメントを研究して、それらと戦える走りを実現したことは間違いない。けれど、それらと戦える一方で、それらと比べて突出して良い部分や光る部分は、残念ながら僕には見いだせなかったのが本音だ。

シビック独自の魅力やホンダらしさ

ホンダ 新型シビック ハッチバックホンダ 新型シビック ハッチバック

そうしてさらに話は最初に巻き戻っていく。僕は冒頭で、ホンダがシビックを再び日本市場に投入する意義を丁寧に説明して欲しかった、と記した。

なぜならば、ここまで記してきたことからもわかるように、いまやシビックのような欧州Cセグメントに属すモデルとしては、もはや戦うべき土俵が、単純なクルマとしての完成度だけではなくなっているからだ。

つまり、“操る喜び”がコンセプトです、といったところで、ユーザーはその商品とともに過ごす生活を想像できない。果たしてその商品を手にしたことで、どんなライフが描けるかの方が重要になりつつあるのが実際だ。ましてやこれまで、日本市場では不在だったシビックなのだから、余計にそうした説明が必要だろう。

さらに言えばこのクラス、正直いって走りが良いのは当然の話。どのモデルもある一定以上の走りの気持ち良さを当たり前のように手に入れており、それに加えて最近では安心や安全を強調しているブランドも多い。

そしてそれらを備えた上で、ブランドとしてユーザーに何を提供するのか? を難しいながらも導き出して言葉やコンセプトにしている。あるいはそれをストーリーとして付与して、商品としての魅力を伝える術にしているものもある。

今回、試乗の後にラウンドテーブルが行われて、新型シビックについての様々なお話を伺う機会を得たが、気になったのはシビック独自の魅力やホンダらしさについて、思わず膝を打つような明確なポイントがホンダの側からも聞けなかったこと。

また話を聞いて気になったのは、メカに関しては詳しいけれど全体の話になると…というシーンや、逆に全体的な話はできるけど、細かな部分はちょっと…というシーンが多かったこと。最近は分業が進んでいるから仕方ないが、シビックについて熱く語れる人を見たかったのも本音だ。

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新型シビック自体の完成度は悪くない、けれど…

ホンダ 新型シビック タイプRホンダ 新型シビック ハッチバックと筆者の河口まなぶ氏

僕はこの試乗会の帰り道に、実際に乗った印象等を踏まえてもう一度振り返ったのだけど、クルマって今やプロダクトが良ければ売れるという時代でもない、と改めて感じた。

圧倒的に群を抜くプロダクトならそれもありうるが、競合も常に進化しているのでセグメントから抜け出すは難しいのが実際だ。そう考えると、いかに存在意義をしっかりと説明できて、いかに丁寧にその商品のある生活を語れるか? ということも重要だと思えたのだ。

そして振り返ると、やはり“操る喜び”のプレゼンに行き当たる。もっともそこがホンダらしいといえばホンダらしい部分なのかもしれないが、昔からホンダはクルマとその性能について説明するのは上手なのだけど、それが何をもたらすかまでには言及しない。

それは確かに手に入れたユーザーの側の問題ではある。けれどこの点に関しては、そろそろ変化が求められる時期のような気がする。なぜなら、僕が今日試した新型シビックのプロトタイプは、もっともっと丁寧に説明してあげるべきポイントだってたくさんあるクルマだったからだ。

それだけに僕は、試乗の後のラウンドテーブルで感想を求められた時に、「正直、いまの時代のお客様に“操る喜び”だけでは納得してもらえないのではないか?」という意見をお伝えした。

最近では安全性やコネクティビティ、そして燃費や環境も相変わらず求められている。さらに生活をどう彩ってくれるか? それ以外にも高価なクルマに対して我々ユーザーは様々を求めるし、そうした要求に対する答えをわかりやすく教えて欲しいとも思う。

新型シビックタイプRのニュルFF最速についても、言いたいことはたくさんあるが、それは次の機会にするとして、もはや走りだけではクルマは価値を見出してもらえないものになりつつあるのは間違いない。

繰り返すけれど、新型シビック自体の完成度は悪くないと思った。けれど、それに意義を与えて商品として魅力を付与するという点においては、足りないものが多いのではないか?と思えたのが今回の新型シビック プロトタイプ試乗会で僕が感じたことだった。

[Text:河口まなぶ]

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河口 まなぶ
筆者河口 まなぶ

1970年生まれ。大学卒業後、出版社のアルバイトをしたのちフリーランスの自動ライターとなる。1997年に日本自動車ジャーナリスト協会会員となり、自動車専門誌への寄稿が増え、プレイステーション「グランツーリスモ」の解説も担当。現在、自動車雑誌を中心に一般誌やwebで自動車ジャーナリストとして活躍。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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