ホンダ 新型シビック e:HEV試乗┃進化したe:HEVにより、同じシビックでもガソリン車やMT車よりも乗りやすくスポーティな走行性能を実現【2022年】
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン::和田 清志/本田技研工業/MOTA編集部
今年、発売開始から50周年を迎えたホンダ シビック。今回は、8代目以来のハイブリッド復活となった新型シビック e:HEVを試乗した模様をモータージャーナリストの岡本幸一郎さんがお届けします。
8代目以来のハイブリッド復活となる新型シビック e:HEV
実はちょうどメディア向け試乗会が開催されていた頃に、シビックは生誕50周年を迎えました。2021年夏に登場した11代目(現行型)となる新型には、当初からe:HEVもあるとウワサされていましたが、このほどそれがいよいよ現実となりました。シビックとしては8代目以来のハイブリッドの復活となります。
新型シビック e:HEVは、ガソリン車との差別化はそれほど多く図られていませんが、ドアミラーやモールの処理など、ひとめでわかる識別点がいくつかあります。
新型シビック e:HEVのパワートレーン(動力源)
新型シビック e:HEVに搭載された新開発の2.0リッターエンジンは、直噴である点が同じくe:HEVをラインナップする新型ステップワゴン等との大きな違いで、クルマのキャラクターにふさわしく、よりスポーティな性格が与えられています。スペック的には、ガソリンの1.5リッターターボが最高出力135kW、最大トルク240Nmであるのに対し、新型シビック e:HEVはエンジンが同104kWで182Nm、モーターが同135kWで315Nmと圧倒的です。
ご参考までに車検証の記載によると、新型シビック e:HEVが車両重量1460kg、前軸重910kg、後軸重550kgで、ガソリンのCVTは車両重量1370kg、前軸重9840kg、後軸重530kg、MTは車両重量1340kg、前軸重9810kg、後軸重530kgと、2ペダル同士で比べるとe:HEVのほうが90kg重く、うちリアが20kg重くなっています。
※軸重(前後のタイヤにかかる重量)
同じシビックでもガソリン車やMT車より、乗りやすくスポーティにも走れると感じたe:HEV
新型シビック e:HEVは、以前にクローズドコースで乗る機会があり好感触でしたが「質の高い軽快感」を追求し「爽快スポーツ」をコアバリューとする走りは、公道でもよい印象が変わることがなかったことを、あらかじめお伝えしておきます。
発進から車速を流れに乗せてからも、バッテリーが十分に残っている分、ずっとモーター走行が維持されます。レスポンスとリニアリティを訴求したというふれこみのとおり、本当にアクセルペダルを操作したとおりに反応してくれて、意のままに走れるあたりに、既出のe:HEVとの違いを感じます。
ワインディングロードでも、このレスポンスとリニアリティは大いに武器になります。アクセルの加減で、曲がり具合を積極的にコントロールできるので、走っていて楽しいのなんの。さらには踏み込んだときにはエンジンが始動して、力強く加速します。爽快なエンジンの吹け上がりも、やっぱり気持ちが良いです。
その点では、ガソリン車もパワーは十分でトルクの盛り上がり感もあるのですが、高回転まで回したときに意外と早く頭打ちになるのと、振動が出てくる点が少々気になります。往年のVTECエンジンのような味に期待すると、いささか物足りない感があるのは否めません。
とくにMTはシフトチェンジ時のエンジン回転落ちが遅いのもやはりいただけないでしょう。むしろ低めの回転域しか使わない普通に市街地を走るときのほうがなおさら気になりました。その点では、スポーティな走りを求める人にも、走りにダイレクト感があり、マニュアルシフトを試みると俊敏にシフトダウンできるCVTのほうが薦められると思っているほど。そして、それよりもさらに新型シビック e:HEVのほうが、乗りやすくスポーティにも走れて燃費もよいというわけです。
新型シビック e:HEVは「2.0」と付けたほうが良いぐらいこれまでのe:HEVから進化している
新型シビック e:HEVはスポーツモードにすると、よりスポーティな走りと人工エンジンサウンドによる演出も楽しめます。ドライブモードスイッチがだいぶ後方にあるため、前方から視線を外さないと操作しにくいのは改善の余地がありそうですが、電子制御のギアセレクターはガソリンのシフトレバーと違って指先だけで操作できて、しかも既存のe:HEVのものよりも使いやすく進化していることがわかりました。
十分に確保された動力性能により、高速道路でも余裕が感じられ、再加速する際にもストレスを感じさせません。これまでのe:HEVは高速走行時のエンジンドライブモードでは、回転上昇が先行して加速が遅れてついてくる、一昔前のCVTのような感覚がありました。それが新型シビック e:HEVでは、ロックアップ(AT車特有の伝達効率の悪さを解消する機構)領域が拡大したことで、加速Gの立ち上がりが鋭くなり、アクセルを踏み増したときに、回転と音と車速の伸びが一体になって加速していけるようになりました。燃費も、この日はいろいろな走り方を試したのでちゃんと計測していませんが、感触としてはかなりよさそうな印象を受けました。
これはもう次世代e:HEVとして、ひとつの節目を迎えたように思います。他の車種と同じ「e:HEV」と同じ名前で呼ぶのがもったいないぐらい。「2.0」など付けたほうが良いぐらいに感じたというのが正直な気持ちです。
これまでのホンダ車のイメージと異なり、荒れた路面でもフラット感が高い新型シビック e:HEV
足まわりの仕上がりも、ガソリン車も悪くなかったものの、より上質な印象になっています。ガソリン車に対して新型シビック e:HEVは重量が増して、重量配分がいくぶん前後均等に近づき、重心が低くなり、バッテリー搭載へ一環でクロスメンバー(車体の剛性や強度を向上させるために使われている部材、自動車に対して横方向に設定されている)の追加により実はボディ剛性も向上しています。これにより乗り心地にとっては有利な要素が並ぶわけですが、それに加えて、サスペンションのチューニングそのものより洗練されているようです。
フラット感が高く、路面の小さな段差やうねりを通過してもしなやかに受け流して、瞬時に収束させてフラットさを保ってくれます。おかげで高速道路を巡行するときも目線がぶれにくいので、疲れが小さくてすみそうです。もともとホンダ車はキレイな路面ではフラットなのですが、路面が荒れているととたんに突き上げや跳ねが気になる例が少なくありませんでした。それが新型シビックでは、荒れた路面でもあまり大きく印象が変わらなくなったところが大きな違い。大きめの入力では追いつかないときもありますが、電子制御を使わずによくぞここまで仕上げたもの。新型シビック e:HEVのほうが一段上のまとまりですが、その点ではガソリン車もかなり頑張っている印象です。
また、ガソリン車も含め新型シビックは、このクラスとしては太いサイズのタイヤを履く点も特徴的ですが、その恩恵はワインディングロードでの絶対的なグリップ力の高さによる安心感はもちろん、高速道路でのスタビリティ(ハンドル操作、揺れの少なさ/アクセル・ブレーキ操作などの安定性)の高さにも寄与していて、より低くなった重心もあってなおのこと、4輪が常にふんばっている感覚があります。スッキリとしたステアリングフィールにもより磨きがかかっています。
率直に申し上げて、MT派は別として、新型シビックのガソリン車をすでに購入したものの、実は新型シビック e:HEVに興味を持っているという人が乗ったら、少なからず悔しい思いをする可能性が高いように思います。それぐらい印象は上々でした。
[筆者:岡本 幸一郎 撮影:和田 清志/本田技研工業/MOTA編集部]
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