国産スポーティコンパクトカー 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:山口敏尚
ひとまわり大きくなりあらゆる要素が向上
ボディサイズが大きくなり、傾斜した広いフロントウインドウや、フロントマスクの形状などを見るにつけ、明らかに初代よりもグレードアップした、いわばEP型のシビックに近い印象のクルマになったように見える。
3台を並べると、デミオやヴィッツよりも上のクラスのクルマという印象を受ける。車高も高く見えるが、実際にはヴィッツと同等である。
従来も「S」というスポーティグレードがあったが、現行モデルでは「RS」となり、専用のエクステリアパーツは、よりスポーティイメージに特化した印象を受ける。あたかも「タイプR」のようなアピアランスも感じられるほどだ。
メカニズム面では、まずパワートレインが進化した。出力向上したエンジンに、CVTにはトルコンが加わったことで、出足がよくスムーズな加速フィールとなった。変速制御には、ホンダらしいダイレクト感も相変わらず損なわれていない。マニュアルシフト時のレスポンスも良好である。
乗り心地がよくなったことも特筆できる。初代フィットは、縦横比でいうと背が高いこともあってか、従来モデルにはリアにコツコツ感があった。2代目ではその感覚が薄れ、ファミリーカーとしても十分に使える、ゆったりとした中にキビキビ感のある乗り味となった。
大幅軽量化スタイリッシュに一新
3代目となったデミオは、従来からコンセプト自体が大きく変わった。これまで2世代はトールワゴン的なパッケージによるスペースユーティリティがデミオの持ち味となっていた。
ところが、それまで評価されていた要素を捨ててまでも、ベーシックなコンパクトカーに生まれ変わった。とくに力を入れたのが軽量化とデザインである。
一見したところ、従来のデミオの後継モデルとは思えないクルマに生まれ変わった。エクステリアデザインは、ボディサイドのラインの入れ方など、すでにいわれているように、確かに結果的にヴィッツに似た部分はあると思う。
しかし、前進感や躍動感といった走りを想起させる要素では、デミオのほうが上回るだろう。
フロントマスクは、最近のマツダ車らしいデザイン。マイナーチェンジしたばかりのヴィッツや、東京モーターショーに出展された次期アテンザもそうだが、フラッシュサーフェイス風のデザインとなっている。また、クルマ全体に直線部分がほとんどない。
SPORTでは、エアロフォルムのエクステリアとなり、足まわりも強化される。走りについても、今回の中ではデミオが走っていてもっとも楽しさを感じさせる。各車にそれぞれの楽しさはあるが、やはりデミオの軽さと重心の低さというアドバンテージは大きい。
ステアリングフィールには適度な重さがあり、しっかりと路面に接地している感覚がある。リアも路面追従性に優れ、トータルでのライントレースが非常に高くなっている。そして、持ち前の軽さが効いてくる。今回の3台の中でも、個人的にもっとも好みな味であった。
個性的デザインを一般化させた功績
初代から2代目に移行した際に、初代で絶賛されたデザインテイストを受け継ぎつつ、大幅にボディサイズが拡大された経緯がある。
初代よりもエッジを効かせたスタイリングは、新しさを感じさせる。登場から3年近くが経過しても、見た目上の古さをあまり感じさせない。
反面、走りについてはやや古さが感じられる。動力性能では、CVTの制御を燃費重視に振りすぎているきらいがある。それは、1.3L、1.5Lともにそうであり、200ccという排気量差を体感するほどではない。
そういう意味では、ヴィッツ自体が、いささかノイジーな3気筒1L車と、あまり動力性能差のない1.5L車に比べると、1.3L車がベストバイという話にもなりうる。そしてRSの中でも、MT車であればいくらか排気量差を実感するところだが、CVT車では、1.5Lも1.3Lも、それほど大きくは違わないのである。
ドライブフィール全般においては、キビキビ感のあるスポーティな味付けであり、全体としてはそつない仕上がり。ただし、ライバルのレベルが上がったことで、古さを感じるようになってきた。それは、電動パワステのフィーリングや、リアが少し固めの乗り心地などにも見受けられる。
デザイン・スペックの総評
スポーティなイメージに期待して見た各車の位置付けはどうかというと、軽量化に注力したデミオの走りは、ライバル車にはない感覚がある。フィットは従来の延長上で、居住性と快適性の向上を図りつつ、スポーティな感覚も両立している。ヴィッツはスポーティなルックスであることを身上としているが、走りにおいては「RS」というからには、もう少しスポーティな感覚があってもいいだろう。
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