コンパクトクロスオーバーSUV 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
クラスを超えた快適性
RVRのエクステリアは、三菱のアイデンティティである「ジェットファイターグリル」と呼ばれるフロントマスクが印象的だ。
全長こそ短めだが、厚みのあるノーズや抑揚のあるボディパネルにより、実寸以上に大きく見える。カワセミブルーのようにユニークなボディカラーを設定したのも特徴だ。
すでに定評のあるアウトランダーと共通のプラットフォームを譲り受け、快適性を重視したセッティングが施されたことで、走りにはこのクラスらしからぬ落ち着いた印象がある。
攻めた走りをしても、重心の高さによるデメリットや突っ張った印象を感じさせることもなく、いたってナチュラルな動きをする。後席に座っても、乗り心地のよい印象は変わらない。
エンジンは吸排気ともにMIVEC(連続可変バルブタイミング)を採用した1.8リッター直列4気筒のみの設定で、最高出力102kW[139ps]/6,000rpm、最大トルク172Nm[17.5kgm]/4,200rpmというスペック。これに「INVECS-3」と呼ぶ6速スポーツモード付きCVTが組み合わされる。
マニュアルモードでは、多少の変速ショックを許しても、変速レスポンスの素早さを重視した印象の味付けで、パドルシフトを操作するのが楽しみになる。
オートモードの変速制御は、燃費を重視した印象が強く、やや物足りなさを感じるが、踏み込めば即座に加速重視の変速比に移る。
ひとつのモードの中で、ECOモードとパワーモードを上手く兼ね備えた仕上がりとなっている。さらにエネルギー回生システムを採用することなどにより、2WDで10・15モード燃費15.2km/L、4WDで同15.0km/Lという低燃費を実現したのは立派といえるだろう。
スポーティなルックスと走り
4,315mmという全長はRVRよりもわずかに長く、全幅はRVRとほぼ同じだが、全体のフォルムは大きく寝たフロントスクリーンや、ウェッジシェイプのサイドビュー、絞り込んだリアセクションなどにより、背が高いながらもスポーティな感覚を受ける。
日本よりも欧州のセンスを採り入れた印象のエクステリアデザインは、未来感のある斬新なもので、全体のフォルムやボンネットの左右に膨らみを設けるなどして個性を表現している。
2009年9月の一部改良では、フロントグリルのデザインが変更されたほか、サイドにクロームメッキモールを追加、フロントフォグランプを標準装備するなどの変更が加えられた。
エンジンは2リッター直列4気筒のみの設定で、スペックは最高出力101kW[137ps]/rpm、最大トルク200Nm[20.4kgm]/rpmとなっている。
トランスミッションは、6速のエクストロニックCVT-M6が組み合わされる。パドルシフトは付かないが、フロアセレクターをDレンジから右に倒すと6段のマニュアルシフトが可能となっている。
アクセルペダルの操作に対し、やや変速比が大きく動きすぎる傾向はあるが、加速感に概ね不満はない。足まわりには、ザックス製のハイスピードダンピングコントロールショックアブソーバーを採用している。
減衰を強めに効かせた、引き締まった印象の乗り味が身上で、低速で凹凸のある路面を走った際にはコツコツ感をともなうが、車速を増すとしなやかさが出てくる。
結果的にタイヤの路面への追従性はもっとも高くなっている。欧州風味のドッシリとした感覚とスポーティな俊敏性を上手くバランスさせた、気持ちのよいドライブフィールを持っている。
コンパクトカーのように軽快な走り
全長は4,135mmとショートだが、全幅は1,700mmを超えるため3ナンバー車となる。
ノーズ先端が低く、ルーフにかけてAピラーが直線的なラインを描き、さらにCピラーの傾斜角も大きいため、横から見ると台形状のシルエットとなっている。
また、上記2モデルとは、フロントの三角窓とリアクォーターピラーウィンドウの設定も異なる。ウレタンのアンダーモールを活かしたエクステリアは、XGグレードではルーフレールも標準装備するなど、よりSUVテイストを強調している。
2009年5月の一部改良では、フロントグリルがメッシュタイプとなり、アルミホイールのデザインも変更された。エンジンは2009年5月の改良で1.5リッターの1機種に絞られている。
また、5月の改良時にエンジンに可変吸気システムが採用され、最高出力が82kW[111ps]/6,000rpm、最大トルクが145Nm[14.8kgm]/4,400rpmへと従来よりもわずかだが向上した。トランスミッションは4速ATのみの設定ではあるが、とりたてて不満があるわけではなく、むしろATらしい自然な加速フィールには、かえって好感を抱く。
動力性能自体も、1.5リッターの割にはよく走るという印象。
従来あった2リッター車との差も小さく、軽量なこともあって、上記2モデルと比べてもそれほど遜色はない。タイヤサイズは205/60R16と、上記2モデルよりもワンサイズ小さめで、リアがドラムブレーキとなる点が異なる。
SX4のシャシーはなんの変哲もないが、走りのフィーリングはキビキビとしており、やや高めのアイポイントを除けば、ベースのスイフトなどのコンパクトカーと何ら変わらない軽快さを持っている。
総評
クラスを超えた落ち着き感を持つRVR、欧州風味のスポーティさを持つデュアリス、軽快な走りのSX4と、走りのキャラクターがそれぞれ異なる。いずれも2WDのほかに4WDがラインナップし、4WD車には2WD/4WD/オートモードが任意に選べ、擬似的なデフロックモードも備える電子制御4WDシステムが備わる。ちなみに、ボディサイズは近いが車両重量は意外と異なっており、RVRの2WDが1,350kg~1,360kg、4WDが1,420~1,430kg、デュアリスの2WDが1,420~1,460kg、4WDが1,480~1,520kg、SX4は2WDが1,190kg、4WDが1,250kgとなっている。
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