新型プリウスPHVと新型プリウスの価格・燃費・デザインなどを徹底比較

新型プリウスPHVと新型プリウスの価格・燃費・デザインなどを徹底比較
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徹底比較!新型プリウスPHV vs 新型プリウス

2016年度(2016年4月から2017年3月)に日本国内で最も多く販売された車種は、ハイブリッドカー(HV)のトヨタ 新型プリウスだった。2位は軽自動車のホンダ N-BOXになる。初代プリウスは1997年に世界初の量産ハイブリッド乗用車として発売され、特に先代型の3代目は、価格を割安に抑えたこともあって好調に売れた。先代プリウスから乗り換えるユーザーも多く、爆発的に売れた3代目ほどではないにせよ、4代目となる現行型プリウスの販売も好調だ。

現行型の価格も先代型と同様に割安で、売れ筋のSは247万9091円、上級のAも277万7563円となる。

現行の新型プリウスはプラットフォームを刷新して、先代型の欠点だった走行安定性と乗り心地を改善した。新たに装着された安全装備のToyota Safety Sense P(トヨタセーフティセンスP)は、歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動させる。プリウスは海外を含めてハイブリットカーとしてもトヨタの主力車種だから、力の入った開発を行っている。

そして2017年2月に追加されたのがトヨタ 新型プリウスPHVだ。新型プリウスに充電機能を装着して、駆動用リチウムイオン電池の容量も拡大。バッテリーに充電された電気を使って走行できる。さらに、世界初の「ソーラー充電システム」もオプション設定。 ルーフ上に太陽光発電が行えるソーラーパネルを設置して、走行中は駆動用電池の消費を抑え、停車中は駆動用電池に充電を行う。先代プリウスPHVは単純に充電機能を追加したクルマだったが、現行型はフロントマスクなどの外観にも変更を加え、新型プリウスの上級車種に位置付けた。

今回は気になる価格や燃費面などを含め、新型プリウスPHVと新型プリウスをいろいろな角度から比べてみたい。

燃費性能とエコカー減税比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス

エンジンを駆動してハイブリッド車として走った時のJC08モード燃費は、新型プリウスPHVが37.2km/Lだ。新型プリウスはEが40.8km/L、S以上のグレードは37.2km/Lになる。ただし新型プリウスEはリアワイパーや遮音材などが省かれるので、一般的な選択ではない。

従ってボディは、充電用バッテリーなどにより新型プリウスPHVが重いものの、エンジンを駆動して走る時の燃費は同等だ。エコカー減税も両車ともに免税で違いはない。

勝者:引き分け

グレード構成と価格・維持費の割安感比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス
トヨタ プリウスPHV

新型プリウスPHV・Aの価格は380万7000円、新型プリウスAは277万7563円だ。新型プリウスPHVが102万9437円高いが、カーナビが標準装着される。またヘッドランプは、新型プリウスはバイビームLED、新型プリウスPHVでは合計22個のLEDを使う。

その半面、雨滴感応式オートワイパーとカラーヘッドアップディスプレイは、新型プリウスAには標準装着されるが、新型プリウスPHVではAプレミアムの専用装備になる。装備によって新型プリウスPHVが劣るところもあるわけだ。

こういった点を考慮すると、新型プリウスPHVの充電機能(急速充電を含む)や外観デザインの変更に支払われる価格は、約72万円と考えられる。

ただし新型プリウスPHVはクリーンエネルギー自動車とされ、申請すれば経済産業省による補助金が交付される。新型プリウスPHVの場合、以前は1台当たり9万6000円だったが、5月以降の登録を対象とした2017年度の補助金額は20万円だ。

通常、補助金額は時間の経過、つまり普及に伴って減額されるのが常識だが、プラグインハイブリッドは一律20万円とされる。経済産業省では「以前の補助金額はリチウムイオン電池の容量に基づいたが、それでは電池容量の小さなプラグインハイブリッドは電気自動車に比べて不利になる。そこで電気自動車の交付上限額が40万円だから半額とした。プラグインハイブリッドの普及を図る目的もある」という少々不可解な返答であった。

いずれにしても新型プリウスPHVを購入しやすくなることは確かだ。補助金額の20万円を72万円の実質価格差から差し引いた52万円が、充電機能の最終的な対価と考えられる。

そこで実用燃費をJC08モードの85%、レギュラーガソリンの価格を1リッター当たり130円で計算すると、新型プリウスAの2WDが1km走るのに必要な金額は4.1円だ。

一方、新型プリウスPHVは充電された電気で走ると走行コストを抑えられる。東京電力の従量電灯Bの場合、電気料金は1kWh当たり19.52円。新型プリウスPHVの電力消費率は10.54km/kWhだから、実用電費がカタログ数値の85%であれば、1km走るのに必要な金額は2.1円だ。つまり新型プリウスPHVが充電された電気だけで走れば(新型プリウスPHVのEV航続距離は68.2km)、新型プリウスに比べて1km当たり2円の節約が可能になる。

そうなると最終対価の52万円を取り戻せるのは、モーターだけで走行して27万kmを走った頃だ。給油して走れば、その距離はさらに伸びる。

ちなみに、三菱 アウトランダー PHEVのEV航続距離は、60.8km(最上級グレードのSエディションは60.2km)まで可能。アウトランダーの2.4リッターノーマルエンジン車と、アウトランダーPHEVで同様の計算をすると、走行コストの格差が大きいために10万km少々で取り戻せる。

新型プリウスPHVは、アウトランダーPHEVと異なりベース車もハイブリッドだから燃費が優れ、なおかつ新型プリウスの価格が割安だから、充電機能のコストを取り戻しにくい。

勝者:プリウス

▼新型プリウスPHV & 新型プリウスの燃費・価格比較

新型プリウスPHV&新型プリウス 燃費・価格比較
プリウスPHVプリウスアウトランダーPHEV(参考)
グレードAAG Safety Package
価格3,261,600円2,777,563円3,973,860円
カタログ燃費(JC08モード)37.2km/L37.2km/L19.2km/L
EV走行換算距離68.2km/L--60.8km/L
100V/6A
普通充電(100%)
14時間--13時間
200V/16A
普通充電(100%)
2時間20分--4時間
急速充電(80%)20分--25分

ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス/プリウスPHV

新型プリウスPHVと新型プリウスでは、ピラー(天井を支える柱)や天井、前後のドアパネルなどは共通化されるが、フロントマスクやフロントフェンダー、リアゲート、リアビューなどは別設計になる。新型プリウスのフロントマスクはかなり個性的な形状で好みが分かれるが、新型プリウスPHVは比較的馴染みやすい。

また新型プリウスPHVのリアウインドウは波打つような形状で、後ろ姿に個性的な特徴を持たせた。空力特性でも有利だが、リアワイパーはグレードを問わず装着できない。

両車ともにサイドウインドウの下端を後ろに向けて持ち上げて、最後部のピラーが太いので、斜め後方の視界が悪い点は注意が必要だ。

新型プリウスPHVのボディサイズは、全長が4645mm、全幅が1760mm、全高が1470mm。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は両車ともに等しいが、新型プリウスPHVはホイールからボディが前後に張り出した部分が長く(前方は25mm/後方は80mm)、全長も105mm上まわる。全幅の数値は等しい。最小回転半径も同じだ。取りまわし性はボディが短い新型プリウスの方が少し優れている。

勝者:プリウス

内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウスPHV

両車ともに内装の基本デザインは共通だ。新型プリウスPHVでSを選べばインパネの形状も同じになる。

ただし新型プリウスPHVナビパッケージ以上のグレードでは、11.6インチのカーナビ画面が縦長に装着され、空調の吹き出し口を含めてインパネの配置が異なる。11.6インチ画面はノートパソコンにも多く使われ、縦長に装着したことにより、地図画面を表示した時は進行方向の様子が分かりやすい。

Sナビパッケージの価格は、Sに比べて40万5000円高いが、カーナビと併せて急速充電機能(Sのオプション価格は7万5600円)、LEDフォグランプ(2万1600円)なども加わり、実質的な価格上昇は約30万円だ。

一方、新型プリウスではカーナビが全グレードにわたりディーラーオプションとされ、11.6インチ画面のカーナビは装着できない。

また新型プリウスではA以上のグレードに乳白色のフロントコンソールトレイが備わるが、内装色がブラックの場合はコントラストが強すぎる。そこで新型プリウスPHVでは、内装色と合わせるようにした。

勝者:プリウスPHV

前後席の居住性比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス
トヨタ プリウス

室内空間の広さは両車ともに共通だ。前席は特に座り心地が良いわけではないが、おおむね満足できる。頭上の空間にも余裕を持たせた。

後席は造りが異なる。新型プリウスは3人掛けだが、新型プリウスPHVは中央にアームレスト兼用の収納設備を配置して2人掛けとした。燃費数値は定員乗車で計測するため、乗車定員を4名に抑えると重量が軽減されて燃費数値が有利になる事情もある。

後席中央の収納設備は上端部分が低く、常設のアームレストとしては使いにくい。だからといってサイズを拡大すると、後席を倒して荷室を広げる時に邪魔になってしまう。つまり新型プリウスのような後席を倒して荷室を拡大できる5ドアハッチバックでは5人乗りが適している。

身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は両車とも握りコブシ2つ分。広さに不満はないが、腰が少し落ち込む。サイドウインドウの面積が狭めだから閉鎖感も伴う。

勝者:プリウス

荷室比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス

荷室の床面積自体は、両車ともに同程度。ボディ形状が5ドアハッチバックだから、実用的には十分に確保される。

その上で比べると、新型プリウスPHVは荷室の床が持ち上がった。荷室の床下に駆動用リチウムイオン電池を配置したからだ。開発者によると「床下部分の空間まで含めると、タイヤパンク応急修理キット搭載車同士の比較で160mm高い」という。リアゲートを開いた時も、床が高まっていることが分かる。荷物の収納性は新型プリウスが優れている。

勝者:プリウス

動力性能&エンジンフィーリング比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス

エンジンと駆動用モーターの性能は両車ともに等しい。車両重量は新型プリウスPHVが170kgほど重いので、通常のハイブリッド走行時の動力性能は新型プリウスが勝る。

ただし新型プリウスPHVでは、充電された電気を使ってモーターのみの駆動をする場合、登坂路や加速時などは発電機(発電用モーター)も駆動に使えるようにした。そうなれば先代型ではエンジンを始動させた場面でも、モーター駆動だけで走りやすい。

つまり現行型では、発電機も駆動を兼任できるようにしてパワーアップを図り、充電された電気で走る時にはなるべくエンジンが始動しないよう配慮した。いい換えればモーター駆動の領域を広げたことになる。それでも動力性能がトータルで勝るのはボディの軽い新型プリウスだ。

勝者:プリウス

走行安定性比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス

新しいプラットフォーム”TNGA”(Toyota New Global Architecture:トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を採用したことで、新型プリウスは走行安定性と乗り心地を向上させた。先代型に比べるとカーブを急激に曲がる時でも旋回軌跡を拡大させにくいが、走行状態によっては後輪の接地性が物足りない場面もある。乗り心地を含めて走行性能の優れたクルマとはいえないが、先代型よりは良くなった。

新型プリウスと新型プリウスPHVを比較すると、走行安定性は前者が勝る。新型プリウスPHVは車両重量が重く、しかもリアサスペンションの上(荷室の下)に駆動用リチウムイオン電池を配置したから、旋回時には慣性の影響も受けやすい。挙動の変化が穏やかでドライバーを不安にさせる心配は少ないが、新型プリウスに比べるとカーブを曲がる時に旋回軌跡を拡大させやすい。逆に下り坂のカーブで制動した時などは、後輪の接地性が見劣りする。

さらに新型プリウスPHVの中でも、転がり抵抗を小さく抑えた15インチタイヤ(195/65R15)装着車は、ボディが重いために雨天時のグリップ性能が不満。同サイズのタイヤを履いた新型プリウスの方が安定している。

勝者:プリウス

乗り心地比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウスPHV

プリウスは現行型になって乗り心地を向上させたが、段差を乗り越えた時などはショックが少し気になる。新型プリウスPHVは、角の丸い穏やかな印象だ。車両重量が170kg上まわり、駆動用リチウムイオン電池の搭載に伴って補強を受けた部分もあるため、15/17インチタイヤともに乗り心地では有利になった。

勝者:プリウスPHV

安全&快適装備比較|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウスPHV

安全装備は、両車ともにサイド&カーテンエアバッグを標準装着する。Toyota Safety Sense Pは、新型プリウスではSとEにオプション設定され、それ以上のグレードは標準装着とした。新型プリウスPHVでは全車に標準装着されるが、安全装備の水準は同等だ。

異なるのは快適装備で、新型プリウスPHVでは11.6インチ画面を備えたカーナビをメーカーオプションで選べる。ソーラー充電システムもメーカーオプションとして用意した。後者のオプション価格は28万800円と高いが、充電された電気で走れるのが魅力だ。屋根のない場所に駐車すると、ソーラーパネルにて充電された電気を使って1日当たり最大6.1km、平均2.9kmを走れるという(JC08モード走行)。ソーラーパネルの28万800円を走行コストで取り戻すには70年以上使わねばならないが、エコカーにとって、短距離でもクルマ自身が発電して走れるのは魅力的だろう。

ただし、このソーラー充電システムはSのみに用意され、上級のA以上では装着できない。これも乗車定員と同様、車両重量の増加によって燃費数値に影響を与えるからだ。

勝者:プリウスPHV

総合評価/どっちが買い!?|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

トヨタ プリウス

単純に損得勘定だけでとらえると新型プリウスが断然買い得だ。

新型プリウスPHVでは、ガソリンをなるべく燃焼させずに走るエコロジーの考え方、モーター駆動だけで走行する時の運転感覚、新型プリウスとは異なる外観や専用カーナビの機能、ソーラー充電システムなど、独自の価値をどのようにとらえるかで、価値観と選択が変わるだろう。

勝者:プリウス

カテゴリー別勝者一覧|新型プリウスPHV vs 新型プリウス

燃費性能とエコカー減税比較:引き分け

グレード構成と価格の割安感比較:プリウス

ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較:プリウス

内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較:プリウスPHV

前後席の居住性比較:プリウス

荷室比較:プリウス

動力性能&エンジンフィーリング比較:プリウス

走行安定性比較:プリウス

乗り心地比較:プリウスPHV

安全&快適装備比較比較:プリウスPHV

総合評価/どっちが買い!?:プリウス

プリウスPHV & プリウスの主要スペック比較

新型プリウスPHV&新型プリウス 主要スペック比較
プリウスPHVプリウスアウトランダーPHEV(参考)
全長4,645mm4,540mm4,695mm
全幅(車幅)1,760mm1,760mm1,800mm
全高(車高)1,470mm1,470mm1,710mm
ホイールベース2,700mm2,700mm2,670mm
乗車定員4人5人5人
車両重量(車重)1,530kg1,360kg1,850kg
駆動方式2WD2WD4WD
ハイブリッド燃費(JC08モード)37.2km/L37.2km/L19.2km/L
EV走行換算距離68.2km/L--60.8km/L
電力消費率10.54km/kWh--5.96km/kWh
エンジン種類直列4気筒DOHC ガソリンエンジン直列4気筒DOHC ガソリンエンジン直列4気筒DOHC ガソリンエンジン
総排気量1,797cc1,797cc1,998cc
エンジン最高出力98ps(72kW)/5,200rpm98ps(72kW)/5,200rpm117ps(87kW)/4,500rpm
エンジン最大トルク142N・m/3,600rpm142N・m/3,600rpm186N・m/4,500rpm
モーター型式1NM
1SM
1NMS61
Y61
モーター最高出力1NM:72ps(53kW)
1SM:31ps(23kW)
1NM:72ps(53kW)S61:60kW(82PS)
Y61:60kW(82PS)
モーター最大トルク1NM:16.6kgf・m(163N・m)
1SM:4.1kgf・m(40N・m)
1NM:16.6kgf・m(163N・m)S61:137N・m
Y61:195N・m
駆動用バッテリー種類リチウムイオン電池リチウムイオン電池リチウムイオン電池
駆動用バッテリー電圧351.5V--300V
駆動用バッテリー総電力量8.8kWh--12kWh
トランスミッション電気式無段変速機--電気式無段変速機

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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