ジープ最新モデル 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:原田淳
ジープのアイデンティティを色濃く打ち出す
ラングラーが10年ぶりにフルモデルチェンジした。
全体的にサイズアップしたボディは、かなり「大きなジープ」という印象を受けるものとなった。完全に新設計ながらキープコンセプトで仕立てられたエクステリアは、丸目2灯式のヘッドライト、セブンスリットグリル、オーバーフェンダーなど、ジープのアイデンティティを前面に打ち出している。
そして、4ドア&ロングホイールベース版の「アンリミテッド」が追加され、ストイックに走破性を追求したルビコンが追加されるなど、ラインアップの充実が図られた。まったく同じではないが、本国と同等の選択肢が揃えられたことになる。
「ジープらしいジープ」の4ドア版であるアンリミテッドに興味を持つ人も多いであろう。実際、すでにかなり好調な受注を挙げているという。
エンジンは全車に新開発の3.8L V6 を搭載。スペックは最高出力199ps、最大トルク32.1kgm、トランスミッションは4速ATが組み合わされ、パートタイム4WDシステムを採用する。
従来のラングラーに物足りない感があったのは否めないが、これで十分な動力性能が確保された。十分なトルクを必要に応じてアウトプットするエンジンにより、2トンに達するボディを不満なく引っ張ってくれる。
乗り心地はやや固めで、オンロードでのスタビリティをも重視した味付けとなっているようだ。バネ下の重さと足まわりの固さからくると思われる細かい振動も見受けられる。パワーステアリングは全体的に軽めで、街中での取り回しがよいが、もう少しセンターに据わり感が欲しい。
しかし、全体のドライブフィールは「ハンドリング」と呼べるほどの感覚でもないのだが、首都高速のような、それなりに速度が高くツイスティなシチュエーションでもスイスイと走りきってしまった。この身のこなしの軽さには感心させられた。
そして、さすがに乗用車ベースのSUVほどではないが、本格的クロスカントリービークルであるラングラーで、ここまで快適性が確保されていれば文句はない。
なお、別の機会に試乗した印象では、2ドアモデルよりもロングホイールベースのアンリミテッドのほうが、走りに落ち着き感があり、ピッチングの仕方やステアリングとの一体感などトータルバランスに優れた点もお伝えしておきたい。
モーグル的な悪路走行も試したが、これにはさすがのものがあった。もっとも本格的なラフロードを走るには、標準装着のタイヤがオンロードよりの設定となっていることがネックとなってしまうが、このクルマが持つ悪路走破性のポテンシャルの奥深さを感じさせられた。
驚くほどのハイパフォーマンスカー
2005年にフルモデルチェンジ。全体のフォルムやヘッドライト形状など、もともと洗練されたイメージのあるグランドチェロキーが、より次世代イメージを演出するとともに、ジープの1モデルであることを忘れていない、絶妙なスタイリングとなったと思っている。
そして、昨年秋に「SRT8」が追加された。SRT(=ストリート・レーシング・テクノロジー)というのは、クライスラーやダッジブランド車の高性能バージョンにはたびたび設定されていたが、初めてジープにも設定されたわけだ。
6.1LにボアアップされたHEMIエンジンは、圧縮比も9.5→10.3と引き上げられ、最高出力426ps、最大トルクは58kgmというとてつもないスペックを実現している。
また、SRT専用に調整されたオートスティック機構付き5速ATを採用し、強大なパワーやトルクに耐えられるよう開発されたクォドラトラック アクティブ オンデマンド4WDが搭載されている。なお、SRTの車重はオーバーランドの30kg減となっている。
公表されている0-100km/h加速タイムはわずか5秒。SUVとしてはおそらく世界一の俊足ぶりである。
この高性能を生かすため、シャシーにも手が加えられている。車高を約40mmローダウンし、ダンパーやスプリング、スタビライザー、ブッシュ類などひととおり強化されている。20インチのピレリ製ランフラットタイヤが装備される。
エクステリアは、空力やブレーキ冷却を考慮した専用バンパー、サイドシルエクステンション、大径デュアルクロームマフラーカッターなどが与えられている。ボディカラーは、ブライトシルバー、ブリリアントブラックの全2色となる。
実際、この加速フィールには圧倒される。低回転から図太いトルクを発揮し、トップエンドの6000回転付近まで豪快に吹け切ってしまう。その感覚は、いわゆるアメリカンV8のそれとはやや異質の緻密なフィーリングだ。
ローダウンされたとはいえ、それなりに車高の高いクルマ。しかし、ビルシュタインにより鍛えられた足まわりは、コーナリング時の姿勢変化を小さく抑え、不安をまったく感じさせない。やや固めの、引き締まった乗り味を堪能させてくれる。ブレンボ製ブレーキの剛性感、コントロール性も素晴らしい。
もはやこのクルマがSUVであるということを完全に忘れさせる圧倒的パフォーマンスであった。
ジープ初の3列シートと十分な高級感
やはりジープはこれでいくというスタイリングが印象的。グランドチェロキーゆずりのプラットフォームを持ち、実はボディ外寸は、全長が35mm、全幅は20mm大きい程度で、あまりグランドチェロキーと変わらないのだが、スクエアなフォルムによりかなり大きく見える。
ただし、3列シートを備えることで、室内空間を確保するため、リアピラーが直立気味となっているのに対し、フロントピラーが寝ているため、真横から見ると少しアンバランスな印象もなくはない。
クロームパーツを多用し、あえて別体としてボルト留めの部分を見せるようデザインされたフェンダーなど、ジープらしさを盛り上げつつ高級感を演出しているところもポイントだ。2007年モデルでは、新色ジープグリーン 、ライトグレーストーン、マグネシウム、ミッドナイトブルー、ミネラルグレー、スチールブルーメタリックが追加され、全9色が選べるようになった。
SRTでないグランドチェロキーに試乗したときも、その車重をあまり感じさせない操縦性や、ロール感の小ささ、高い快適性などに驚かされたものだが、コマンダーもしかり。そして、高級SUVと呼ぶに相応しい走りを提供してくれる。
エンジンラインアップは、4.7L V8と5.7L V8HEMIの2タイプで、いずれも「リミテッド」仕様となる。以前、両モデルに試乗した際の印象では、4.7Lでも動力性能面での大きな不満はなかったが、ハンドリングも含めた全体のまとまりは、5.7Lのほうがバランスがよいように感じられた。
デザイン・スペックの総評
ジープ車に期待されるのは、いかにジープらしいか、ということなのだろう。ラングラーはこれまで以上にジープらしさを強調し、コマンダーは、どんな方向性も考えられたはずだったところ、旧チェロキーを髣髴とさせるスタイリングで登場した。グランドチェロキーも、ジープの新たな方向性を提示するデザインであり、洗練されつつも、ジープであることを垣間見させる。走りのテイストは、価格相応でもあり、各モデルによりキャラクターが異なる。アンリミテッドは、従来のラングラーよりも格段に快適性が向上したものの、素性はクロスカントリービークル。グランドチェロキーSRT8は、SUVとして究極的なパフォーマンスを誇るほどのレベル。コマンダーは、高級SUVとして十分な風格と、快適なドライブフィールを実現している。
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