フィアット 500ツインエア 試乗レポート/松田秀士(2/2)

  • 筆者: 松田 秀士
  • カメラマン:オートックワン編集部
フィアット 500ツインエア 試乗レポート/松田秀士
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ターボの過給圧が効いた低めの排気音が心地いい

では高回転域はとATモードでアクセルを踏み込むと、シフトダウンが素早く行われて加速も…と言いたいのだが5速シーケンシャル(デュアロジック)トランスミッションは粗大モデルほどではないにしろシフトラグはやや大きい。

ただし、シフトダウンされギヤが繋がってからの加速感はこれも予想以上。ターボの過給圧が効いた低めの排気音、しかも2気筒だから今までのクルマでは感じられなかった音質が心地よい。

85ps/5500rpmとスペックには記されているが、レッドゾーンの6000rpmあたりまではすんなり回るし、マニュアルシフトモードならしっかり回しきれてエンジンレブリミッターが当たった時のショックも小さく、きめ細かく入念にセッティングされているエンジンと感じた。

また、インパネに設けられたECO(エコノミー)スイッチを押すことでパワーステアリングのアシストが増えてステアリングが軽くなり、エンジンは燃料消費量を最小限にしたマネージメントに切り替わる。

このときエンジンのトルク特性は最大100Nm/2000rpmに抑えられている。また、ATモードでのトランスミッションの制御プログラムも燃費重視となる。

このECOモードでの走りで感じたことは、アクセルを踏み込んだ時のトランスミッションのダウンシフトコントロールがダルになること。

簡単にシフトダウンはせず、その時に使っているギヤを出来る限り維持しようとする。それゆえ走りがかったるく感じることも事実。

ただ、市街地ならばコレでも十分と感じた。ステアリングが軽くなることで駐車時などは楽になるが、もともとが軽いからそれほどありがたみは感じない。そのまま高速道路を走っても直進性が良いので軽すぎて不安になることもない。

サスペンションはリヤにトーションビーム式、フロントはストラット式と国産のコンパクトカーとあまり変わらないスペックだ。

しかし、室内の静粛性はマーチを上回るしボディの立てつけも国産を上回るかのようなしっかり感がある。

なによりも高速走行が思いのほか安定していて、さすがに欧州圏でヒットしたモデルであることを痛感させられる。

さらに、フロントの荷重が10kg以上軽量化されていることがハンドリングのレスポンスで明らかだ。これらを総合した出来は「少々荒削りなところはあるが、国産車にはまねのできない仕上がり」である。

クルマの楽しさとは何かを、はっきりと思い出させてくれた。

最後に、アイドリングストップについて触れておこう。一時停止が長引くときはハンドブレーキをかけてブレーキペダルを踏んだ状態でニュートラルにシフトすれば、ブレーキペダルを離しても最長で約2.5分間はエンジンは停止したままだ。

また、国産車などにあるハンドルを回しただけでエンジンが再始動するようなロジックは設定されていない。私はコレに大賛成。試乗中感じたのは、良く止まるということ。

ただし、再始動がクイックかというとそれほどでもない。セルモーターの回っている時間がちょっと長いと感じた。それは国産のアイドリングストップシステムがあまりにも優秀だからそう感じさせるのだろう。

しかし、これも500(チンク)だから許されるレベルであることも付け加えておく。気になるならアイドリングストップスイッチをOFFにすればよいだろう。

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松田 秀士
筆者松田 秀士

1954年高知県生まれ。僧侶の資格を持ち、サラリーマン、芸能人の付き人を経て、28歳でレースデビュー。92年には、デイトナ24時間&ル・マン24時間レースに出場。94年、インディ500マイルレースに日本人2人目のドライバーとして初参戦。2年目の95年には完走を果たし、翌年、当時日本人最高位完走という成績を残した。同じ頃から東京中日スポーツ新聞等で自動車評論活動を開始。現在も執筆活動の傍ら、レーシングドライバーとしても活躍中。記事一覧を見る

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