BMW 5シリーズ グランツーリスモ 試乗レポート/岡本幸一郎(3/3)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
5シリーズGTは極めてオールラウンドな高級車
ルームミラーに目をやると、上端が丸く異様に横方向に太いCピラーの存在が独特で、正直、後方視界はあまりよろしくないのだが、これは割り切るしかないだろう。
やや高めの地上高だけでなく、フットワークの印象も独特で、俊敏さの中にもおっとりとした感覚のあるステアリングや、当たりのソフトな乗り心地など、なんとなく「SUV(SAV)入ってる」ような感覚も垣間みることができる。このあたりは、これから出てくる5シリーズセダン/ツーリングに対しても、キャラクターの差異となるはずだ。
ただし、サスペンション自体は比較的よく動いているのだが、タイヤが硬そう。2トンを超える車体を支えるランフラットタイヤを履く宿命か、ちょっとしたコツコツ感を常にともなう点は少々気になるところだ。
アクティブステアリングもさらに洗練度を深めた。高速巡行するとビシッと直進が定まり、そこから切り始めるとリニアに反応してくれる。こうなっているほうが結果的に切り過ぎが少なくなり、同乗者に不快な思いをさせることも減るはず。
このあたり、同様の可変ステアリングレシオ機構を持つ国産メーカー車では、一連のフィーリング面でもそうだが、微少舵角領域での反応に課題を残すものが少なくない。ぜひBMWを見習って欲しいところである。
5シリーズGTを見て感じたのは、X6の登場時にも似たようなことを感じたのだが、ブランドというものの底力と、ブランド力があれば何でもできる、ということだ。
BMWほどのブランド力があればこそ、5シリーズGTのようなクルマも世に出すことができるし、出したクルマには多くの人が興味を持ってくれるだろうし、気に入って購入する人の割合も増えるという好循環が期待できる。
なにぶん価格の高いクルマだけに、今の日本でそれほど数が出ることはないだろうが、5シリーズGTならではの強みといえるのは、ライバルにはない極めて「オールラウンド」であることだ。
そして、もちろん高級車としての資質も十分に備えている。このクルマには、まったく新しい高級車像があるし、こういったユニークな高級車があってもいいと思う。
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