最後の実用コンパクトFR!? BMW 新型 1シリーズを買うなら断然”118d”がいい
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
BMWのコンパクトハッチバック「1シリーズ」は、同セグメントでは唯一のFR(後輪駆動)レイアウトを採用する。BMWでも他のコンパクトモデルはFF化が進んでおり、果たして次期1シリーズもFRのまま維持出来るかは怪しいところ。今や世界でも例をみない貴重なFRコンパクトカー「BMW 118d Sport」を、自動車評論家の渡辺陽一郎さんが試乗。何者にも似ない、唯一無二の味わいについて語ってくれた。
3シリーズも良いけれど、クルマ好きなら新型1シリーズにも注目しておきたい
BMWは「3シリーズ」が人気の中心だ。しかしクルマ好きなら「1シリーズ」にも注目したい。実用性を兼ね備えたコンパクトでスポーティーな後輪駆動車であるからだ。
全長が4340mm、全幅が1765mmのボディは、スバル インプレッサスポーツやマツダ アクセラスポーツよりも少し小さい。後輪駆動だから最小回転半径は5.1mに収まり、小回り性能も優れている。5ドアハッチバックだから、後席の乗り降りもしやすい。
このサイズになると、後席側のドアを備えた5ドアハッチバックやセダンは前輪駆動になり、後輪駆動を求めるとトヨタ 86やマツダ ロードスターのようなクーペになってしまう。コンパクトながらもファミリーカーとして使いやすい後輪駆動車は、少なくとも日本では1シリーズが唯一の選択肢だろう。
早めに選んでおきたい絶滅危惧種、FRコンパクトカー「1シリーズ」
そして現行1シリーズは、日本国内の発売から数えても5年近くを経過した。次期型は「BMW X1」や「2シリーズ アクティブツアラー」などと同様、「MINI」シリーズと共通のプラットフォームを使う前輪駆動車になると思われる。先ごろ披露された中国向けの新しい「1シリーズセダン」も、前輪駆動のレイアウトだ。
「今の前輪駆動は走りが上質だから、駆動方式にこだわる必要はない」という意見もあるが、良し悪しではなく、運転感覚の違いは依然として残る。シフトレバーが高い位置に装着され、運転席に囲まれ感が伴うのも後輪駆動ならではだ。
輸入車を選ぶ時には、このような実用性とは異なる趣味的な価値が大切になるから「こだわる必要はない」とはいえない。毎日の生活の中で便利に使えるコンパクトな後輪駆動車が欲しいなら、1シリーズは早めに選んでおきたいクルマだと思う。
1シリーズはディーゼルモデル118dが俄然お買い得だ
1シリーズのエンジンは、ほかのBMWと同様に全車がターボを装着する。ガソリンには直列3気筒の1.5リッター「118i」、直列4気筒の2リッター「120i」、直列6気筒の3リッター「M140i」があり、これに直列4気筒2リッターディーゼルの「118d」が加わる。
割安なのはディーゼルだ。118dスポーツは378万円で、1.5リッターガソリンの118iスポーツと比べて価格上昇を21万円に抑えた。動力性能は118dスポーツは最高出力が150馬力(4000回転)、最大トルクが32.6kg-m(1500~3000回転)と強力。特に最大トルクは3リッタークラスのターボを装着しないガソリンエンジンに匹敵する。
118iスポーツは136馬力(4400回転)/22.4kg-m(1250~4300回転)だから、これも十分な性能だが118dスポーツと比べれば見劣りする。
そしてJC08モード燃費は118dスポーツが22.2km/L。軽油価格の安さも考慮すると、燃料代は1.3リッターエンジンを積んだ国産のコンパクトカーと同等だ。118iスポーツも18.1km/Lだから性能の割に低燃費だが、使用燃料がプレミアムガソリンでもあるため、118dスポーツと比べて走行コストは相応に高い。JC08モード燃費をベースに計算すると、118dスポーツの燃料代は118iスポーツの64%程度で済む。
クリーンディーゼルの118dならエコカー減税(100%免税)にも適合する
もうひとつ、エコカー減税の違いにも注意したい。118dスポーツはクリーンディーゼルだから「クリーンエネルギー自動車」に属し、燃費数値に関係なく最上位のエコカー減税が適用される。エコカー減税は2017年4/5月に改訂されるが、従来と同じく購入時の自動車取得税と同重量税、3年後の初回車検時に納める自動車重量税がすべて免税になり、購入の翌年度に納める自動車税も75%減税される。
118iスポーツもエコカー減税に該当するが、免税にはならない。そのために2017年度のエコカー減税で計算すると、納める税額は118iスポーツが11万円ほど多いから、21万円の価格差が実質的には10万円に縮まる。クリーンディーゼルに過度に優しいエコカー減税の是非はともかく、118dスポーツは断然買い得だ。
ちなみに人気の高い3シリーズに2リッターディーゼルを搭載した320dスポーツは555万円。118dスポーツは177万円安い。いろいろな観点から見て118dスポーツは割安だ。
そこで実際に試乗して、それだけの価値を備えたクルマなのかを確認した。
新世代ディーゼルユニットはネガも少なく優れた特性を持つ
まず2リッターのディーゼルだが、2016年に発売された新世代ユニットとあってノイズがかなり小さい。現行320dが発売された直後は、旧世代ユニットのカラカラとしたディーゼル特有のノイズが響いたが、118dスポーツではほとんど気にならない。時速50km前後に達すると、風切り音やタイヤが路上を転がる時のノイズも相応に高まるから、ガソリンエンジンと比べた時のデメリットをほとんど感じない。
エンジンの出力特性もガソリンに近い。ディーゼルだから当然ながら実用回転域の駆動力が高く扱いやすいが、アクセルペダルを深く踏み込んだ時のシフトアップは、最高出力の発生回転数を超える4700回転で行われた(スポーツモード)。回転の上昇が頭打ちになるディーゼルの違和感がなく、高いトルクと扱いやすさを両立させた。燃費性能も含めて、優れたディーゼルエンジンに仕上げている。
やや設計の古さも・・・しかしFRらしい”駆け抜ける歓び”は健在だ
逆に気になるのが走行安定性だ。BMWらしく車両の向きは機敏に変わるが、3シリーズやX1に比べると、相対的に後輪の踏ん張り感が下がる。背景には重いクリーンディーゼルターボの搭載もあるだろう。クルマ好きのユーザーであれば、この性格を利用して、ハンドルとアクセル操作により車両の向きを積極的に変えられると思う。従ってスポーティなBMWでは一概に欠点とはいえないが、設計の古さを感じるところではある。
それでも後輪駆動のメリットにより、操舵した時の手応え、車両の姿勢変化は滑らかだ。峠道などに出かけなくても、前後輪の重量配分を含めて、バランスの良い運転感覚を満喫できる。
後席の居住性は必要にして十分だが、基本的には前席重視の設計
居住性は、前席については快適だ。
インパネ周辺のデザインは3シリーズなどと共通で、ボディサイズの割に質感が高い。
後輪駆動車らしくATレバーが収まるセンターコンソールの位置が高めで、適度な囲まれ感がある。視覚的にも車両との一体感を得やすい。
後席は腰が少し落ち込んで膝が持ち上がる。全高を1440mmに抑えているためだ。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ1つ半。十分な余裕とはいえないが、後席に座る乗員の足が前席の下にスッポリと収まるから、膝先空間が乏しい割には窮屈に感じない。大人が4名乗車出来る程度の、必要にして十分な実用性は備えていると言える。
1シリーズは日本の市場にも適した楽しい輸入車だ
118dスポーツの価格は378万円だから、決して安くはないが、各種の安全装備に加えてHDDナビゲーションシステムなども標準装着する。同じ価格帯に位置する日本車には「レクサス CT200h バージョンC」(390万9000円)、「マツダ アテンザセダン/ワゴン XD・Lパッケージ」(377万4600円)などがある。
118dスポーツは販売面ではBMWの脇役的な存在だが、日常的に使いやすく、運転も楽しい。日本の市場に適した輸入車だ。もし可能であれば(無理な相談だとは思うが)、今後も1シリーズは後輪駆動で進化を続けて欲しい。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正]
BMW 118d Sport[FR] 主要諸元
全長x全幅x全高:4340x1765x1440mm/ホイールベース:2690mm/車両重量:1480kg/駆動方式:後輪駆動(FR)/エンジン種類:直列4気筒 BMW ツインパワー・ターボ・ディーゼル・エンジン/総排気量:1995cc/最高出力:150ps(110kW)/4000rpm/最大トルク:32.6kg・m(320N・m)/1500-3000rpm/トランスミッション:電子油圧制御式8速AT/燃料消費率:22.2km/L[JC08モード燃費]/標準タイヤサイズ:205/55 R16/メーカー希望小売価格:3,780,000円[消費税込み]
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