アウディ 新型 A6 試乗レポート/松田秀士(3/3)
- 筆者: 松田 秀士
- カメラマン:オートックワン編集部
切り込むほどにアジリティー溢れるハンドリング特性
走り始めて感じるのは、このクラスのモデルにしては視界が良好であること。メルセデスほどではないにしろ、四隅の感覚がダイレクトに読み取れるようになった。
シートは両モデルともにレザーが標準となっているが、3.0Lモデルにオール本革仕様(ミラノ)が採用されている。2.8Lモデルではサイドサポートなどが合皮だ。ただし、オプションのコンフォートシートは吸いつくように身体がホールドされ膝裏のサポートも完ぺきでとても快適だった。
今回、ハンドリング面でのイノーベーションに感動したので記しておきたい。それはRS5譲りのシャープなコーナーリング性能。ステアリングを切り込めば切り込むほどに回り込むアジリティー溢れるハンドリング特性だ。クアトロシステムを含めたトルクベクタリングと呼ばれるブレーキ制御技術によってもたらされている。
このクアトロシステムは通常フロントに40、リアに60の割合で駆動比が伝達されるが、前後配分は最大で前輪に70%、後輪に85%のトルクを伝える。この駆動配分はコーナーを攻め込んだ時、新型A6が新世代のアウディであることをはっきりと感じさせてくれる。
これまでのものはアンダーステア傾向に振ってリアのスタビリティ重視だったのだが、新型ではよりフロントのグリップを重視してニュートラルなステア特性になっている。また、トルクベクタリングシステムはコーナーリング中の内側タイヤの接地減少によるスリップ率を判断してそのタイヤにブレーキを掛けてきちんと駆動を確保する。これらによって、ニュートラルなハンドリングでありながらも4輪の接地感が高い安心の乗り味を実現しているのだ。
これまでのA6の落ち着いた印象からは大きくスポーティな方向に振られた印象だ。それでも、きちんとエコ性能も追及しているところにアウディの技術力を感じる。
とはいえ、最後に気になったところを挙げておこう。3.0Lモデルに比べて2.8Lモデルのロードノイズの高さが気になった。特にフロントトーボードからの音の侵入がある。また、電動パワーステアリングのニュートラル域でのダイレクト感の希薄さ(フリクションによるもの)が気になった。ただし、それらを凌駕するクルマの出来栄えが時間と共に忘れさせてくれたことも事実だ。
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