メルセデス・ベンツ AMG GT 海外試乗レポート／島下泰久(2/2)

7,000rpmからトップエンドへ至る、吸いこまれそうな伸びの良さはまさに「快感」

低中速域でのこのエンジンは非常に従順。有り余るほどの力はカドがきれいに丸められ、アクセル操作に対してリニアにクルマを前に進めていく。但し、排気音はかなり大きく、街中では相当気を使いそうだ。

もちろん、そんなものは序の口に過ぎない。更に右足を深く踏み込んでいくと回転計の針が猛々しいほどの勢いで上昇しはじめ、同時に豪放なパワーが一気に炸裂する。チョイ濡れの路面では4,000rpm以上は空転しっ放しだったほどだ。

7,000rpmからレッドゾーンへと至る、トップエンドの吸い込まれそうなほどの伸びの良さはまさに「快感」。

7速デュアルクラッチギアボックスのマナーも上々。ダイナミックセレクトで「SPORT+」や「RACE」の走行モードを選べばショックを厭わず素早い変速が行なわれるが、普段は終始滑らかに、黒子に徹した仕事をしてくれる。

この圧倒的なパワーを受け止めるシャシーは相当締め上げられている。端的に言って乗り心地はかなりハードなのだが、それはボディ剛性の高さを実感させる材料にもなっていて、どんなに突き上げられても、まるでガチガチの殻に包まれたような印象をもたらす。

フットワークも刺激的な味付けで、ステアリング操作に対して即座にノーズがインを向くだけでなく、クルマ全体が旋回モードに入っていくようなFRらしからぬ強烈な一体感を得られる。これはトランスアクスルレイアウトのおかげだろう。

SLS AMGからは一転して、走りと向き合えるスポーツカーへと仕上げられた

今回はラグナセカでのサーキット試乗も出来たのだが、ここでもアンダーステアとは無縁の走りを楽しめた。

もっとも、それはいつでも容易にオーバーに転じるという意味でもあるのだが、出来る限り右足はアクセルペダルの上にという運転を心がけていれば、十分にコントローラブルと言っていいと思う。本気でタイムを狙うには簡単ではないが、楽しめるアシである。

いかにもスーパースポーツらしい見映えや威圧感の方が強調されていたSLS AMGからは一転、AMG GTは正真正銘、走りと真剣に向き合えるスポーツカーに仕上がっている。

メルセデスとして見ると、快適性や直進性、あるいは使い勝手の部分で首を捻りたくなる部分も無くはないが、それらを割り切れたのは、まさにこれが「AMGだから」なのだろう。歴史はこれから拓かれていく。激戦の市場でどのように受け入れられていくのか、注目の1台だ。

メルセデス・ベンツ AMG GT S 主要スペック

全長×全幅×全高：4,546×1,939×1,289mm／ホイールベース：2,630mm／エンジン：4リッターV型8気筒／最高出力：375kW（510hp）6,250rpm／最大トルク：650Nm 1750-4750rpm／車重：1,570kg／0-100km加速：3.8秒／最高速度：310km/h／タイヤサイズ：（F）255/35ZR19（R）295/35ZR19

メルセデス・ベンツ AMG GT 主要スペック

全長×全幅×全高：4,546×1,939×1,289mm／ホイールベース：2,630mm／エンジン：4リッターV型8気筒／最高出力：340kW（462hp）6,000rpm／最大トルク：600Nm 1600-5000rpm／車重：1,540kg／0-100km加速：4.0秒／最高速度：304km/h／タイヤサイズ：（F）255/35ZR19（R）295/35ZR19