アバルト500C エッセエッセ KONIキット装着モデル 試乗レポート/森口将之(3/3)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:茂呂幸正
トータルバランスの向上をはっきり実感できる、お買い得なキット
でもアバルト500CエッセエッセKONIキットは、単なる能天気グルマじゃなかった。
足回りがいい仕事をしていたからだ。乗り心地はたしかに固いが、不思議とゴツゴツとは来ない。鋭い段差から緩いうねりまで、KONIのFSDショックアブソーバーが絶妙な足さばきをしているのだろう。高速道路でのヒョコヒョコした上下動も減っているように感じた。
でも、このシャシーの本領はハンドリングにある。ロールが抑えられたおかげで、スタンダードで気になった腰高感ははっきり抑えられているし、路面への接地性もアップしているようで、コーナーの立ち上がりでのトラクションも信頼できるレベルへと向上していた。
ブレーキが十分以上に余裕の持ち主だったのも、安心して飛ばせる材料になっていた。
ただ、エンジンをパワーアップして足を固めただけではない。ファインチューンという言葉を使いたくなるほど、トータルバランスの高いスポーツモデルだった。
しかも今回の取材車は、ブラック&ホワイトの2トーンボディにブラウンのレザーシートという、アバルトとしては落ち着いたコーディネイトで、オープンということもあってマセラティを思わせるドレッシーな空気を漂わせていた。
そのボディに、アバルトやKONIといった名門ブランドをちりばめ、イタリア感満点の加速を演じつつ、乗り心地やハンドリングは大人っぽい。
そんなキャラクターを、全長たった3,655mmの5ナンバーボディに押し込めたこのクルマは、男のための宝石といっていい存在じゃないかと思った。
キット価格は54.6万円。実はエッセエッセじゃない、スプリングとショックアブソーバーだけのKONIキットもあって、それだけなら18.9万円ですむけれど、どうせ買うならエッセエッセでしょ。
アバルト500Cと合わせても393.6万円で、あれだけ愉快痛快になれるんだから。見た目は小さいけれど、中身の濃さを考えたら、お買い得じゃないかと思ってしまったのだった。
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