インドの頭脳が活躍する自動運転技術、肝心のインドでの実現性は0%!?

インドの道路環境はカオス! でもハチャメチャな運転なのになぜかぶつからない!?

人口13億人を超えるインド。首都のデリー市内に一歩足を踏み入れると、そこには日本とは異次元の空間が広がっている。

なかでも驚きなのは、デリー中央駅近くの商店街。未舗装の狭い道に、「リキシャ」と呼ばれる小型3輪車や手押し車、さらに乗用車やトラックや自動二輪車などが入り乱れて走っている。その合間に歩行者がワンサカといるのだ。

そんなハチャメチャな状況なのだが、不思議なことに、事故に遭遇しない。それぞれが接触することもなく、皆がスイスイと走り回っているのだ。

すべては「勘」が頼り。いわゆる「動物的な勘」という類のものだ。皆が生き抜くための術を知っており、超過密な交通環境に身体が順応しているのだ。

こうした光景は、ベトナムのハノイやホーチミン、フィリピンのマニラ、タイのバンコクでも見受けられるが、交通の密度の高さではインドはピカイチという印象だ。

>>混沌としたインドの街中、ここに自動運転カーが走る日は来るのか[画像ギャラリー]

一般道と高速道路では白線は無意味

次に、市街の少し広い道に出てみよう。

片側2車線の道路をライドシェアリングのウーバーなどを使って走ってみると、彼らのほとんどが、白線をあまり気にしないで走っている。片側2車線が事実上、片側3車線だったり、場合によっては片側4車線だったり。目の前に少しでも速度の遅い車がいれば、ハイエナのように、左右からガンガンに追い抜きをかける。

また、側道からの合流でも物凄い状況になる。日本だったら「どう考えてもぶつかるタイミング」までブレーキを我慢して「自分が先に行く」意識を丸出しにするのだ。

こうした状況でも、滅多なことでは事故につながらない。前後フェンダーの傷があるクルマを数多く見かけるが、これはクルマ同士でぶつかっているケースより、壁やガードレールなどとの物損での結果が多いようだ。

こんな走行環境は、最近にデリー近郊にも増えている高速道路でも同じだ。しかも、困ったことに走行するクルマの速度差は時速100キロメートル以上に達するという、危険な状態だ。タクシーやライドシェアリングの上級ドライバー、またはスポーツカーや高級SUVを見せびらかす金持ちたちは、制限速度などまったく無視して、思い切ってアクセル全開。時速150キロメートルオーバーも珍しくない。

インド・デリーショーで自動運転の展示がゼロなのはなぜか

そんなインド・デリーで2月上旬に開催された、2年に一度の自動車業界最大のイベント、オートエキスポ2018(デリーモーターショー2018)。

インド政府が唱えるEVシフトを踏まえて、インド地場大手のタタやマヒンドラ&マヒンドラからは様々なEVコンセプトモデルが登場した。

しかし、世界各国のモーターショーで近年出展が増えている自動運転については、日系、欧州系、韓国系を含めて出展がなかった。

これは、当然といえば当然なこと。自動運転を行うための基本は、交通ルールを守ることだからだ。

皆が交通ルールを守ることを前提に、車載センサーやデジタル地図の技術が進化してきた。ところが、インドのように走行車線を守って走行しない、法定速度を大幅に超過して走行しても警察に捕まらない、故意の逆走もちょくちょくある、といった交通環境では自動運転を想定することは「無意味」だと思う。

実は、欧州大手自動車メーカーはインドのベンチャー企業などに、自動運転や通信のコネクテッドカーの肝となるソフトウェア開発を委託している。インド人は数学や物理など理数系の学問が得意で英語も堪能な優秀な人材が多く、また開発コストが欧米や韓国などに比べると安いことが欧米企業にとってのインドの魅力だという。

だが、皮肉なことに、そのインドでは、交通ルールがまったく守られないハチャメチャな交通状況であり、自動運転の実証は極めて難しいのだ。

[Report:桃田 健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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