アメリカ生まれのオフロードタイヤブランド、BFGoodrichのニューモデル「マッドテレインT/A KM3」試乗レポート

アメリカの著名ブランド、BFGoodrichのニューモデルを試す!

今ではミシュランの一員となっている、アメリカ生まれのオフロードタイヤブランド「BFGoodrich」は、日本ではあまり知られていないが、アメリカで初めてタイヤにコードを用いたり、カーボンブラックやチューブレスをいち早く採用するなどアメリカで「初」づくしである他、1896年のフォードモデルAでの大陸横断やリンドバーグの飛行機、スペースシャトルなどに装着されていたことで知られる革新的なイメージの強いブランドである。

そんなBFGoodrichの7月発売予定のニューモデル「マッドテレインT/A KM3(以下「KM3」)」を、茨城県にある「ザ・ヒロサワシティ」のオフロードコースで試すことができた。オフロードタイヤはモデルサイクルが長く、今回のKM3も前身のKM2の発売から実に10年ぶりのモデルチェンジとなる。最新版のKM3で最も追求したのはとにかく頑丈であること。もうひとつがトラクションだという。

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ごっついタイヤで悪路を走れ!

そのKM3を装着したジープ ラングラーを、まずはアジアクロスカントリーラリーに出場予定のJAOS社員ドライバーである能戸知徳選手の運転で助手席に乗ったのち、自身も同じコースを同じクルマでドライブした。

筆者は、このコースを運転するのは初めてだった。一見したところあまり高低差もなく走りやすそうに感じたのだが、実際にはぜんぜんそんなことはなくて、かなりハードな難所つづきだった。

能戸選手によるとKM3は前身のKM2に対してサイドウォールが変わったのが大きな変更点で、もともと定評あるトレッド性能も、さらに性能向上が図られており、サンド(砂地)やマッド(泥濘地)などの滑りやすい路面でも噛んでくれるところがよいという。

それを助手でも体感できたのだが、自分でドライブするとより鮮明にその性能が伝わってきた。どんな路面でも前へ前へと進んでいく感覚があり、安定感は抜群だ。

V字丸太&ロックセクション|サイドウォールのグリップの安定感

さらに驚かされたのが、Vの字型に丸太を配したゾーンだ。ここではタイヤ真下の部分が接地せず浮いてしまい、サイドしか接していない状態となる。そうなると剛性が命。また、KM3のサイドウォールまでぐるりと大きく回り込ませたトレッドが効いてくる。

能戸選手によると、「剛性がないとタイヤが内側によってしまいます。普通ならもっと変形しそうなところ、KM3はしっかりしています。実は今回、空気圧を1.8Kまで落とした(悪路を走る際に接地面を増やすために一般的に行なう手法)のですが、もっと落としても大丈夫です」とのことだった。

窓から顔を出して下を覗いてみても、とても空気圧が低いとは思えないほど、タイヤが変形することなく、本来の形状がしっかり維持されていた。しかも直前の水たまりを通過して、タイヤの表面に水が残っていて滑りやすい状態であるにもかかわらず確実にグリップして、安定感ある走りを披露した。微妙なアクセルの強弱にもリニアについてきて、宙に浮いている感じもなく、しっかりとした接地感がある。おかげでこういう場所でも安心して乗ることができた。

ロックセクションでもステアリングを操作したとおりに進んでいってくれて申し分ない。一般的にはもっとステアリングが取られたり、弱いタイヤは裂けたりちぎれたりすることもあるが、それもない。ドライバーがするべきことは、アクセルを踏んでステアリングをきるだけだ。

坂でも岩でもなんでもござれ

水たまりをこえて約20度のキャンバーセクションでも、ほとんど横滑りしないのもたいしたものだ。助手席と運転席では印象がだいぶ違って、運転席だと地面が横に見えてこのまま倒れるのではないかと思うほど、傾斜をより強く感じるのだが大丈夫だ。

障害物の丸太超えの際も、接地面に水が残っていると滑りやすいのはいうまでもないが、水をひきずったままでもグリップして登っていける。しかもエンジンを吹かすこともなく、アイドリング付近のクリープでのトルクだけで前に進んでいく。これもタイヤの性能がいかに高いかを物語るポイントだ。

最後のハードロックセクションも、路面はヌルヌルだがそのまま進んで行ける。普通にアクセルに軽く足を踏んでいるだけで、まったく空転することもなく前に進んでいく。

能戸選手によると、前身のKM2でも、これぐらいのところは走れなくはないそうだが、KM3はさらに縦方向のグリップが高まっていることに加えて、サイドのグリップがKM3になって格段に高まっているそうだ。

筆者もむろんこれだけハードなコースだから、いろいろな目には会うわけだが、全体としてはとても走りやすいことが印象的だった。

最近のトレンドは、タイヤ剛性と噛む力

さらに能戸選手によると、今まではマッドテレーンタイヤはたわませて接地面積を広げるという考え方だったが、最近ではどのメーカーもサイドの剛性を高めるとともに、ゴムを硬くして、圧力を上げてツメでひっかいて路面を噛むようにしているそうだが、そんな中でもKM3はサイドの作り込みとゴム質がひと味違うとのこと。

前述のようにサイドまでトレッドとしているだけでなく、他社ではトレッドの真ん中が変形してたわむところ、KM3はサイドだけがたわむようになっているほか、他社では悪路を走り続けるとカドが丸くなるのに対し、KM3は全体がキレイにスライドしてまんべんなく摩耗していくので、耐久性が段違いなのだそうだ。

また、縁石などに乗り上げたり穴に落ちるなどしてサイドウォール部が強い衝撃を受けタイヤ内部のコードが切れて一部が膨れて変形してしまう「ピンチショック」と呼ぶ症状が起こると、もはや修復は不可能なのだがそれに対しても万全に対策しているという。

競技では耐久性が命だが、その点、KM3は申し分なし。KM3の市販品そのもので競技に臨む能戸選手も、非常に心強いと述べていた。

ちなみに同試乗会が行なわれたのは、アウトドア×4WDの祭典として23回目の開催となる「JOAフェスティバル」の場。バーベキューをはじめ家族で楽しめる催しのある中で、せっかくクロカン車を買ってもオフロードを走る機会がなかなかない人のために、こうした場で走る機会の提供される場でもある。興味のある人はぜひ参加してみるとよいだろう。

[Text:岡本幸一郎 Photo:茂呂 幸正]

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岡本 幸一郎
筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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