フォルクスワーゲン ゴルフ 試乗レポート

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またもや成長した、”史上最大のゴルフ”

通称ゴルフVというその名が示すように、今度のゴルフは1974年に初代モデルがヴェールを脱いで以来数えて5世代目となるモデル。モデルチェンジのたびに"重厚長大"化してきたのがこれまでのゴルフの特徴のひとつでもあるが、そんな歴史は今回も繰り返された。すなわち今度のゴルフは「史上最大のゴルフ」。4205×1760mmというその全長×全幅サイズは従来型(すなわちゴルフIV)のそれぞれ50/25mm増し。そもそもはFFレイアウトを基本に「最小限の外形寸法で最大の室内サイズ」を売り物してきたゴルフも、だからもはや決してコンパクトとは呼べないサイズにまで成長したのだ。日本仕様車に搭載されるパワーパックは1・6、もしくは2リッター・エンジンに6速ATという組み合わせ。ちなみに4バルブのDOHCヘッドを備えたエンジンはいずれも直噴システムを採用し、高圧縮比による高出力と優れた燃費ををセールスポイントとする。

スタイリッシュなインテリアは文句ナシ!

またも大きくなった最新のゴルフは、同時に歴代モデルの中でも「最もスタイリッシュなゴルフ」と言っても良さそうだ。0・32という空気抵抗係数は今では驚くものではないが、ピラー類とガラスの段差を詰めたフラッシュ化やボディのチリ(パネル間の隙間)の小ささが、今や"大衆車"と呼ぶには抵抗あるほどに上質な見た目の質感を生み出している。そうした外観を受けるように、インテリアのクオリティもなかなかのもの。ダッシュボード周りなど一部の樹脂質感に、ライバルを圧倒した従来型ほどの高さが感じられない印象は残るものの、それでも全般的には「文句ナシ」と言えるレベルの仕上がり。ボディサイズ拡大の効果は主に後席で感じられる。乗降時の足の運びや着席時のレッグスペースが確実に向上をしているのだ。ラゲッジスペースは「2BOXカーでは最大」と思える驚きの広さ。もはや一体ココに何を積めば良いのか!? と、そんな思いすら抱かされる。

従来にも増して”しっかり”した走り。

新型ゴルフの走りは「大方予測が出来た通り」と表現をしても良さそうなテイストだった。すなわち、従来型にも増してしっかり感の高いボディは従来型を凌ぐしなやかな乗り味とより優れた静粛性を実現。様々なシーンで接地感を確実に高めた足回りがより安定した走りを披露してくれていた、と言うことだ。スポーツサスペンションに55%偏平の16インチ・タイヤを組み合わせた日本固有の『GT』グレードでもそれ以外のグレードでも、こうした基本的テイストに大きな違いはない。ちょっと重めのセッティングが施されたパワーステアリングも、電動式にありがちな頼り無さのないごく自然で好感の持てる路面とのコンタクト感を実現させている。絶対的な加速力では当然2リッター・モデルが勝ることになるが、6速という贅沢なATが頑張って1・6リッター・モデルでも動きに不自由さは感じない。購入検討の際は是非とも両者を乗り比べて自らに相応しいモデルを選択すべきだ。

もはや「ベーシックカー」とは呼べない、「2BOXプレミアムカー」

再度のサイズアップを行った最新のゴルフは、その豪華さを大きく増したゴルフでもある。その雰囲気は今やまさに"2BOXのプレミアムカー"。クルマづくりのコンセプトは、だから実は30年前の初代モデルからすれば随分と大きく変わった事になる。「大きくてリッパになったゴルフ」は必然的に価格のアップも伴なった。そうした事が災いをしてか、欧州での立ち上がりセールスはVWの目標を下回る結果になったとも聞く。幸いにして日本の値づけはインポーターが頑張ってくれた印象だが、それでも「全幅が1760mmもあるゴルフは要らない」といった声が挙がる可能性も否定は出来ない。特に「ゴルフは世界きってのベーシックカー」と解釈をして従来のモデルを選んできたユーザーの中ではそうした思いが強いかも知れない。新世代のゴルフをどのように受け取るかは、『ゴルフ』というブランドにどのようなイメージを期待するかで大きく変わる事になりそうだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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