ホンダ 新型ジェイド徹底解説(2018年5月MC)|2列シート仕様追加でワゴンとしての魅力アップ!

ホンダの3列シートミニバン「ジェイド」がマイチェン

人気車が話題になる陰で、ひっそりと売られる不人気車もある。今はフルモデルチェンジを行う周期が長引き、発売から10年前後を経過した設計の古い車種も多い。そのために不人気車が増えた。

ホンダ ジェイドも不人気だが、2015年2月に発売されたので設計は古くない。3列のシートを備えたミニバンだから、カテゴリーも悪くない。エンジンは発売時点では直列4気筒1.5リッターのハイブリッドのみを搭載して、3か月後に1.5リッターのターボを加えた。価格は300万円以下に収まる。

つまり売れ筋の路線でもあるから、発売時点では1か月の販売計画を3000台と想定していた。ところが売れ行きは発売直後から伸び悩み、ターボを加えても状況は変わらなかった。2017年1~12月の月販平均台数は166台だから、目標に掲げた3000台のわずか6%にとどまっていた。

>>マイナーチェンジでどこが変わった?新型ジェイドの内外装デザインを画像で見る

ミニバン?ワゴン?どっちつかずだったマイチェン前のジェイド

ジェイドが売れない理由は明確で、人気カテゴリーのミニバンに分類されながら、その特徴やメリットをほとんど備えていないことにある。

今のミニバンはホンダならフリードやステップワゴン、トヨタならヴォクシーやアルファード・ヴェルファイアなど、後席側にスライドドアを備えた背の高い車種が売れ筋だ。それなのにジェイドは背が低く、スライドドアも装着していない。

またミニバンでは、アルファード・ヴェルファイアを除くと5ナンバー車が圧倒的に売れ筋だ。ステップワゴンやヴォクシーのエアロ仕様は3ナンバー車だが、標準ボディは5ナンバーサイズに収まる。それがジェイドは全車がワイドボディの3ナンバー車になってしまう。

3列目は補助席のようで、長距離の移動は難しかった

そして背が低いということもあり、3ナンバーサイズでも3列目のシートは補助席だ。腰が落ち込んで膝が持ち上がり、頭上と足元の空間がきわめて狭い。ミニバンでありながら、多人数乗車による長距離の移動には適さない。

また、3列目を畳むと荷室の床面積は広がるが、荷室高が低いから、自転車のような大きな荷物は積みにくいなど、ミニバンの機能的なメリットが乏しい。

そしてインパネの質感や1列目の座り心地は満足できるが、2列目は座面の奥行寸法が1列目に比べて55mm短く、大腿部の支え方に不満が生じた。座り心地も硬めだ。3列目は前述の補助席だから、居住性が快適なのは1列目に限られてしまう。

このようにジェイドは、ミニバンに分類されながら、実際には3列シートのワゴンになり、カテゴリーと機能が掛け離れてサッパリ売れなかった。

満を持してマイナーチェンジ!2列シートの5人乗りを設定

そこでジェイドは2018年5月17日にマイナーチェンジを行った(発売は5月18日)。天井の低い3ナンバーサイズのボディはどうにも変えられないが、そこは発想を逆転して対処している。

今回、2列シートの5人乗りを用意することで、ミニバンではなくワゴンに仕立てた。これなら窮屈な3列目シートがなくなり、ワゴンだから天井が低くても文句は出ない。

もともと中国などの海外で売られるジェイドには2列シート仕様もあったが、日本で新たに導入した5人乗りは後席の造りが異なる。座面の中央に反転式のテーブルを装着して、リラックスできるようにした。

スポーティなRSは、タイヤサイズを従来の17インチから18インチに拡大して、ショックアブソーバーの設定なども見直した。ジェイドの特徴とされていた内外装のカッコ良さと、優れた走行性能を引き上げている。

ホンダ ジェイドのグレード構成

グレード構成は、従来は全車が3列のシートを装着した6人乗りで、ハイブリッド、ハイブリッドX、1.5リッターターボのRSという3種類であった。

それが新型では、新しい2列シートの5人乗りとして、ベーシックな1.5リッターターボのGホンダセンシング、同じターボを搭載するRSホンダセンシング、さらにハイブリッドRSホンダセンシングも選べるようになった。

従来と同じ居住性やシートアレンジを備える3列シートの6人乗りには、ターボのXホンダセンシングとハイブリッドXホンダセンシングがある。

以上のように選択肢が合計5グレードに増えて、この内の3グレードがターボで占められる。開発者によると「ターボとハイブリッドを含めて、RSホンダセンシングの販売比率が70%に達するだろう」と予想している。残りがG/Xホンダセンシングとなる。

スポーティなRSはブラックメッシュグリルでよりシャープに

まず外観の特徴として、フロントマスクは低くワイドに見える形状に仕上げた。特にスポーティなRSは、フロントグリルがブラックのメッシュを強調したシャープな形状になり、LEDヘッドライト、LEDフォグライトの形状も改めた。

さらに新しく装着された18インチ(225/45R18)のアルミホイールは、アルミ切削とブラッククリア塗装によって、サイドビューを精悍に演出している。

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後席はポルシェ パナメーラをイメージ

内装では、新たに設定された2列シートの5人乗りが注目される。前席は従来と同様にセパレートタイプで、中央にはアームレストとセンターコンソールが装着される。

後席は3列シートの6人乗りの2列目と違ってスライド機能が備わらず、座面が固定されている。

開発者によると「後席の座面は、ホンダの上級車種と比べても十分な厚みがある」という。スライドなどのシートアレンジを省いた代わりに、座り心地は6人乗りの2列目に比べるとボリューム感が大幅に増した。

前後席に座る乗員同士の間隔は、2列シートの場合、3列シートの2列目を後端まで寄せた時よりも20mm狭まる。それでも足元には十分な余裕があり、座り心地が上質だから3列シートの6人乗りよりも快適だ。

5人乗りの快適性をさらに高めるのが、背もたれの中央を降ろして使う大型のアームレストと、座面の中央部分を反転させるテーブルだ。テーブルにはドリンクホルダーやポケットも内蔵されている。

このアイデアは、1999年に発売されたホンダ アヴァンシアの反転式リアシートテーブルに似ている。開発者に尋ねると否定はせず「ポルシェ パナメーラの後席をイメージした面もある」と言う。パナメーラとは驚いたが、確かに後席にもセンターコンソールが備わっている。開発する時の意気込みは強い方が良い。

内装色は、RSホンダセンシングはブラックのみだ。シート生地はラックス・スウェードとプライムスムースで、オレンジのステッチが入る。装飾パネルはカーボン調とした。

Xホンダセンシングは、ブラックに加えて明るいアイボリーの内装も用意した。シート生地はファブリックとプライムスムースで、アイボリーの装飾パネルはオーク木目調にして開放的な上質感を演出している。

5人乗りは3列目のシートを備えないので、荷室容量は後席を使った状態で440リットルを確保した。ゴルフバッグが4個収まる。床下にも23リットルのアンダーボックスを装着した。リアゲートを少し寝かせたから、背の高い角張った荷物は積みにくいが、ヒンジが前寄りに装着されるから開閉時にリアゲートが後方へ大きく張り出さない。縦列駐車をしているような状態でもリアゲートを開閉しやすい。

1.5リッターエンジンにターボ/ハイブリッドを組み合わせた

エンジンは従来と同じ直列4気筒1.5リッターで、ターボとハイブリッドを用意した。動力性能の数値も従来型を継承して、両方ともに直噴式だから性能に余裕がある。ターボは2リッターの自然吸気並みで、ハイブリッドも1.8リッターに相当する。JC08モード燃費はターボのRSが17.6km/L、ハイブリッドは24.2km/Lだ。

運転感覚は変更され、ターボのRSではCVT(無段変速AT)に、エンジン回転が上下動を繰り返しながら速度を高める有段式に似せたステップ変速制御を採用した。エンジン回転を高効率な領域で固定できるCVTのメリットは薄れるが、メリハリのある加速感が得られる。開発者によると「ステップ変速制御を採用しても、加速性能は悪化していない」とのことだ。

またブレーキングした時にエンジン回転を高めて減速感を向上させるブレーキ時ステップダウンシフト制御も採用した。

ハイブリッドは有段式ATとなる7速DCTのギヤ比と駆動力制御を見直した。ギヤ比は5速と7速、最終減速比は従来と同じだが、それ以外はローギヤード化されて発進加速の反応を機敏にした。このギヤ比は、同じハイブリッドシステムを搭載するヴェゼルと共通だ。

足まわりはRSが18インチタイヤを新採用したこともあり、綿密なチューニングを行った。タイヤの扁平率が45%だから振動では不利になり、ショックアブソーバーの設定に気を使っている。

買うならどのグレードがオススメ?

安全装備は全車にホンダセンシングを標準装着した。従来は設定のなかった歩行者事故低減ステアリングも採用している。車線をはずれて路肩の歩行者に衝突しそうな時、ステアリングも制御して回避操作を支援する。

価格は最も買い得感の強いターボのRSホンダセンシング(5人乗り)が255万8520円だ。ハイブリッドのRSホンダセンシング(5人乗り)は289万8720円だから、価格差は34万200円になる。ハイブリッドとノーマルエンジンの価格差としては妥当だが、ジェイドはターボになるから、ハイブリッドとの差額が大きいとも受け取られる。その意味でもターボが割安だ。前述のようにターボのJC08モード燃費も17.6km/Lに達するから、燃料代の差も開きにくい。

先代型と同等の装備が付いて比べやすいのは、3列シートのハイブリッドXホンダセンシングだ。新型の価格は308万8800円で、従来型に比べると16万8800円高い。ナビ装着用スペシャルパッケージ(従来型のオプション価格は3万7800円)が標準装着され、LEDヘッドライトもロービームから、ハイ/ロービームのインラインタイプに上級化された。買い得感を強めたとはいえないが、価格はおおむね据え置きか、若干の値上げと考えて良いだろう。

ジェイドはミニバンとしては欠点が多く売れ行きを低迷させたが、走行安定性と乗り心地のバランス、外観のデザインは優れていた。今回のマイナーチェンジでは、そこを際立たせている。2列シート仕様は、シビックワゴン的なクルマと考えれば分かりやすいと思う。

>>新型ジェイドの各グレードを画像で見る

「二度と同じ失敗を繰り返さないでもらいたい」

それにしてもジェイドに関しては、ホンダの国内市場に対する洞察力の低さに呆れてしまう。月販目標が3000台、実際の売れ行きが月166台では、誤差の範囲を逸脱している。N-BOXなどは国内向けの優れた商品に仕上げて成功しているのに、なぜジェイドのような失敗をしたのか。ホンダはもう少し国内を真剣に見て、その分析をホンダ社内で共有していただきたい。それはユーザーとホンダ双方にとって利益になると思う。

冒頭でジェイドが売れなかった理由を簡単に述べたが、ホンダはその分析を入念に行い、今後の商品開発と国内の営業展開に反映させるべきだ。同じ失敗を二度と繰り返さないようにしてもらいたい。

[TEXT:渡辺陽一郎&PHOTO:和田清志]

ホンダ ジェイドの主要スペック

ホンダ ジェイド

グレード

RS Honda SENSING

HYBRID X Honda SENSING

駆動方式

FF

全長

4660mm

全幅(車幅)

1775mm

全高(車高)

1540mm

1530mm

ホイールベース

2760mm

乗車定員

5名

6名

車両重量(車重)

1450kg

1510kg

エンジン

水冷直列4気筒横置

排気量

1496cc

エンジン最高出力

110kW[150PS]/5500rpm

エンジン最大トルク

203N・m[20.7kgf・m]/1600-5000rpm

155N・m[15.8kgf・m]/4600rpm

モーター最高出力

-

22kW[29.5PS]1313-2600rpm

モーター最大トルク

-

160N・m[16.3kgf・m]/0-1313rpm

燃料

無鉛レギュラーガソリン

燃料タンク容量

47L

40L

トランスミッション

無段変速オートマチック(トルクコンバーター付)

7速オートマチック+パドルシフト

JC08モード燃費

17.6km/L

24.2km/L

タイヤサイズ

225/45R18 91W

215/50R17 91V

価格(消費税込)

255万8520円

308万8800円

ホンダ/ジェイド
ホンダ ジェイドカタログを見る
新車価格:
244.3万円314.6万円
中古価格:
55.8万円253.4万円

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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