米最大の自動車メーカーGMが業界タブー、いわゆる「白タク」の大手と組む理由(1/2)

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:米ゼネラルモーターズ
米最大の自動車メーカーGMが業界タブー、いわゆる「白タク」の大手と組む理由
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非常識が常識になる時代

2016年3月15日、ゼネラルモーターズ(GM)とライドシェアリング大手のLyft(リフト)が、新しいサービス「エクスプレス・ドライブ・プログラム」を発表した。

具体的には、GMがコンパクトSUVのシボレー「エクイノックス」を、リフトのドライバーに提供するというものだ。サービスは同月末にイリノイ州シカゴで開始し、その後に全米各地での展開を予定している。

これは、世界の自動車産業界にとって「強烈な衝撃」。いままでの常識を覆す、「とんでもない出来事」だ。

そう聞いても、「何がどう、なぜ衝撃なのか?」が分からない方がほとんどだと思う。

そこで、順を追って説明してきたい。

「いわゆる白タク」が急増するアメリカ

リフトと手を組んだゼネラル・モーターズ

まず、リフトとは何者か?キレイごとで表現すればライドシェアリングだが、ズバリ言えば「いわゆる白タク」だ。

普通の人が、自家用車を使って、営利目的でタクシー行為をすること。これが「白タク」だ。日本では旅客業務用のナンバープレートが緑色であるのに対して、自家用では白色のため、こう呼ばれる。

以前は、成田空港、羽田空港、さらに六本木や新宿など、タクシー需要が足らなかった時代は「ちょっと、そこのお兄さん、お安くするよ」と声がかかったものだ。最近では「白タクは違法行為」という認識がタクシー利用者のなかで徹底しており、「白タク」の出番はかなり減った。

そんな「白タク」を、「なかば合法化」するビジネスモデルがアメリカで急増。その代表格が、2012年創業のリフトだ。また、リフトより先にハイヤーの空き枠をシェアリングしてきたUber(ウーバー)も、リフト同様に「白タク」事業を強化したことで、売上が急増。その他、「白タク」型のビジネスモデルは世界各地で急増しており、シンガポールの「グラブカー」、インドの「オラ」、フランスの「ブラブラカー」、そして中国の「嘀嘀快的」などがある。

各社とも、数百億円から数千億円単位の投資マネーを定期的に受けており、事業規模が急激に拡大している状況だ。

つい最近、リフトの創業者が日本のビジネス関連会合に出席。その際、経済系メディアのインタビューを受けて、ライバルであるウーバーとの違いを強調した。そのなかで露骨に、ウーバー批判を展開した。リフトは、GMと連携するなど既存の自動車産業と共同歩調を取っているが、ウーバーはそうではなく既存産業と対立する姿勢があると指摘した。

まあ、彼の言い分も分からないではないが、実際にアメリカでリフトもウーバーも実際に使ったことがある筆者としては、「どっちもどっち。しょせん、白タク」というのが素直な感想だ。

そんな「白タク」業者のリフトに、世界トップクラスの自動車メーカーであるGMが2016年1月、5億ドル(約550億円)にも及ぶ投資を決めた。ひと昔前までなら、あり得ない非常識な話が、こうして現実になっている。自動車メーカーとして、「白タク」ビジネスに投資を決めたのは今回のGMが世界初だ。

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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