フォルクスワーゲン ゴルフ GTX 試乗レポート

フォルクスワーゲン ゴルフ GTX 試乗レポート
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ゴルフシリーズの最上級の装備群 ”ゴルフGTX”

フロントビューリアビュー

日本のマーケットでゴルフVが売れている。2004年の6月にリリースされて以来の累計登録台数は翌年2005年4月初旬の時点ですでに1万3000台余りとのこと。フォルクスワーゲンが「5年連続輸入車ブランド・ナンバー1」の偉業を成し遂げたというニュースはまだ記憶に新しいところだが、そこに大きく貢献をしたのがモデルチェンジを行ったばかりのこの新型ゴルフである事は、もはや誰の目からも疑いのない事柄だ。

そんなゴルフ・シリーズに2005年3月から追加設定されたのが、シリーズでは最上級の装備群を備えると共に現時点では最も高い走りのパフォーマンスを誇る『GTX』グレード。最高出力200psをマークするターボチャージャー付きの直噴4気筒2リッターDOHCエンジンとVWグループ自慢の先進トランスミッション"6速DSG"から成るパワーパックは、間もなくリリースされるホッテスト・モデル『GTI』グレードのそれを先取りするカタチでの採用。そんな心臓の高性能ぶりを支えるべく、"スポーツ・サスペンション"や17インチのシューズもさりげなく標準装備とする一台がこのモデルだ。

秘めた走りのポテンシャルはより厚いオプラートの内側に

インテリアセカンドシート

ひと昔前であれば誰もが決して想像する事など出来なかったであろう「200psのターボ付き心臓を積んだゴルフ」。 が、日本上陸を目前にすでに話題を集めつつあるホッテスト・バージョンの『GTI』に比べると、そんな『GTX』のアピアランスは何とも"普通のゴルフ"そのものという印象だ。 確かに、17インチのホイールに45%偏平タイヤという組み合わせなど、その走りのポテンシャルの高さを示唆する部分も皆無というわけではない。が、ボディそのものはすでに見慣れた5ドア・ゴルフのそれに過ぎないし、これみよがしのエアロパーツが装着されているというわけでもない。

それどころかさらにインテリアに目を移すと、このクルマが秘めた走りのポテンシャルはより厚いオプラートの内側に包まれてしまうもの。何故ならばそこでは、パワー調整機構を与えられたちょっとルーズな張りのレザーシートやウッド・ステアング、各部のウッドパネルなど、いわゆる"おじさん仕様"とも受け取れてしまう様々な仕上げを見る事が出来るからである。

見ると乗るでは大違い!「時代の最先端を行く」という感激

エンジンタイヤ

ところがいざ走り出してみると、このクルマが「見ると乗るでは大違い!」というキャラクターの持ち主である事をまざまざと教えられた。アクセルペダルを踏み込むとその排気サウンドは想像だにしなかったほどに勇ましく、サスペンションも「ハード」という表現を使いたくなるほどに路面凹凸を忠実に拾う。すなわちこのクルマは、そのエクステリア / インテリアのデザインから察するよりは遥かに硬派な走り味の持ち主。このまま、細部のお化粧をちょっと精悍に改めてみれば、もうそれだけで『GTI』のエンブレムを付けてもおかしくない、というくらいに…。

自慢の2ペダル式MT"DSG"のフィーリングも、これまでアウディA3で経験してきたそれとは随分と異なる印象。A3の各モデルに採用されたそれが「極めて良く出来たATの一種で、うっかりしているとシフトが行われた事にも気付かない」といった印象の持ち主であったのに対し、こちらはサウンドの変化によってシフト動作が行われる事を明確にアピール。いわゆるシフトショックは相変らず皆無に等しいものの感覚上ではきちっとしたメリハリ感を与えてくれ、端的に言ってA3での経験よりも遥かにスポーティでエモーショナルなテイストを味わう事が出来るのだ。

低回転域からトルクフルな直噴ターボ・エンジンは、そのまま高回転にかけてのパワーの伸び感も一級品。いずれにしても、このクルマのエンジンとトランスミッションの組み合わせが、かつて経験した事のない「時代の最先端を行く」という感激をと味わわせてくれたのは間違いないのである。

ライバルを追い込む実力の持ち主

走り

残念な事に今回は時間の限られた"緊急試乗"ゆえ、走りのチェックはどちらかと言えば動力性能にその重点を置かざるを得なかった。そして、ワインディング・ロードを追い込むようなシーンには遭遇する事のなかった今回のテストドライブの限りでは、――そして、『GTI』がもう間もなくリリースをされるという事が明らかになっている現時点では――脚をここまでかため、サウンドもここまで勇ましくする事はなかったのでは……という思いが頭の中をよぎるのも事実だ。

一方で、ここまで情感タップリなフィーリングを味わう事が出来るパワーパックを搭載したならば、もはや一般的なAT車そのもののセレクターのデザインは似合わないし、シフトのマニュアル操作をより愉しむためにはステアリング・パドルの類も欲しかった、といった感想を抱くのもまた事実というもの。

それにしても、比べてみれば明らかに「よりスポーティな走りのテイスト」に満ちているこのモデルが、同じパワーパックを搭載し、より高いプライスタグを提げるA3スポーツバックの立場を追い込む事になってしまうのは確実ではないだろうか? 裏を返せばこの『GTX』にはそれだけの割安感が漂うという事でもあるわけだが…。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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