スバルはターボとMTを諦めたのか!?ハイブリッドになった新型フォレスターの是非を問う

新型フォレスターにターボとMT未設定でスバリストがザワついた!

守旧派のスバリスト界隈では、新型フォレスターからターボとMT(マニュアルトランスミッション)がなくなったことで大いにザワつきました。

そこで今回はこの場を借りて「フォレスターからターボとMTがなくなったこと」について、僭越ながらその是非についての思いを語らせていただきます。

フォレスターは初代から4代目まではターモデルがラインナップされていた

そもそもフォレスターは1997年に初代モデルがデビューしたときから搭載エンジンはターボのみというSUVらしからぬ設定で(NAは半年後に追加)、「オンロードでスポーツ走行ができるSUV」という新境地を切り開いたクルマでした。

水平対向エンジンの低重心をアドバンテージとし、他のSUVとは一線を画すオンロードでの走りの良さと、乗用車ベースなのに本格クロカンに匹敵するレベルの悪路走破性を兼ね備えたことで支持層を拡大してきたのです。

フォレスター=ターボで速いSUV

初代と2代目モデルには、オンロードでの走りをさらに高めたSTIバージョンも設定。「SUVなのに熱い走りに没頭できる」ところが、走り好きや運転好きのユーザーから大いに評価され、その人気を年々高めてきました。

標準仕様車はターボでも最高出力を控えめにして中低速重視とするなど、レガシィやインプレッサとの差別化をはかっていましたが、それでも同クラスのSUVの中では突出した速さを誇り、「フォレスター=ターボで速いSUV」とのイメージが浸透します。

>>ハイブリッドのe-BOXER追加!スバル 新型フォレスターの画像を見る

4代目フォレスターはターボよりNAの方が人気に

しかし、時代の移り変わりやユーザー層の多様化に伴い、フォレスターのキャラや立ち位置も変わってきました。

先代にあたる4代目モデルでは、スバル車としては異例の「ターボなのにボンネットのエアインテークが無い」デザインを採用。車格が上がってコンフォート性が高くなり、ターボ搭載車からMTがなくなるなど、「フォレスターは大人になった」という印象を受けました。

私のような一部の守旧派にとっては寂しさを禁じ得ない変化とも言えましたが、市場にはドンピシャでハマり、いつしかフォレスターはスバル車の世界販売の中でもっとも数多く売れるクルマに成長しました。

日本国内でも人気は高く、2017年あたりまでは常にSUV販売の上位にランキングされ、ターボからMTがなくなっても、フォレスターの人気はさらに高まったのです。

ターボモデルの販売比率は2割前後まで落ち込んだ

4代目モデルではターボ搭載のXTよりもNA搭載グレードの方が人気が高く、モデルライフの後半ではターボの販売比率は全体の2割前後にまで下がりました。昔はその逆でしたが、時代とともにフォレスターのユーザーは「ターボじゃない方が良い」とする人が増えたのです。フォレスターのターボ搭載車を買う人は、先代モデルの時点ですでに少数派となっていたのですね。

新型からターボがなくなることが判明した直後は、瞬間的にターボ搭載グレードの注文が増え、中古車市場でもターボ搭載のXTの相場が上がるという現象が見られましたが、それは一部のターボ好きの皆さんが慌てて手を出されたからでしょう。

関連記事:スバル フォレスターの実燃費を徹底評価。2.0XTはターボモデルとは思えない結果に!?

中型SUVで唯一MTの設定があったフォレスターはマニアにとって最後の砦

MTについては、ターボよりもさらに超ウルトラ少数派となっていました。先代モデルではNA搭載車に設定があったものの、MTの受注は月に数台というレベルにまで少なくなっていたのです。パーセンテージでいうと1%以下で、平均すると0.2~0.4%ほど。わたくしマリオ高野が先代のインプレッサG4の1.6i(5MT)を買うときにも思いましたが、よくもまぁ、そこまで受注の少ないグレードを最後まで整理することなく作り続けてくれたものだと感心したものです。

MT車のラインナップが多いことでMT好きから好評のマツダでも、中型SUVのCX-5には初代モデルから国内仕様にMTは未設定(小型SUVのCX-3には今もMTアリ)。フォレスターは中型SUVのMT車最後の砦だったのです。

個人的には、先代インプレッサと同様に「廉価なNAグレードではなく、ターボ搭載のスポーティなグレードにMTがあればもっと売れたはず」と思うところもありますが、そもそもターボ自体があまり売れなくなっていたので、事態はそれほど変わらなかったでしょう。昔のフォレスターはターボが人気でしたが、選ばれるミッションはATの方が圧倒的に多かったものです。

走破性を高めるX-MODEで悪路走行が可能に

そんな実態を振り返ると、新型フォレスターにターボとMTがなくなった理由はよく理解できます。売れないグレードや仕様をやめるというのは、メーカーとしては当然の判断でしょう。

ただMTに関しては、フォレスターの場合は豪雪地域などでのヘビーデューティな需要に対応したいとの考えにより、先代モデルの最後までやめなかったという理由もあります。スバルは先代モデルのインプレッサでも最廉価のFFではなく、AWDにのみMTを設定し続けましたが、それも同じ理由です。

しかし、2016年にフルモデルチェンジしたインプレッサでは、国内仕様はMT未設定。その後発売されたインプレッサの派生モデルであるXVにはX-MODEも搭載されて悪路走破性が上がったことで、豪雪地域の需要に対応できます。

フォレスターでも「X-MODEがあればMTの必要がない」との判断もあり、新型からMTがなくなったという側面もあります。

フォレスターのMTは役目を終えた

つまり、インプレッサもフォレスターも「MTナシでもユーザーが実用性能面で困ることはない」という状況が整えられたから、MTは役目を終えたとされました。

フォレスターは、2代目モデルの前期までトランスファーに低速副変速機を付けた「デュアルレンジMT」が設定され、それはまさに豪雪地域やガチで悪路を走るユーザーのために設定されたものでしたが、今のCVTとX-MODEがあれば、日本国内の道路を走る限りにおいては、走破性が不足することはほぼありません。

新型フォレスターのe-BOXERはターボに代わる走りの良さがある

とはいえ、クルマ好きの観点からすると、やっぱりターボとMTがなくなるのは寂しい限り。たとえ実用上は誰も困らなくなったといっても、運転フィールや楽しさの部分ではまだまだ必要とされています。

ウェブ上では新型フォレスターにターボがなくなったことを嘆く声が続出しているのも事実で、特にスバルは「愉しさ」を旗印に掲げているのですから、ターボとMTがあれば「さすがスバルは他とは違う!」などと賞賛されることでしょう。

それを思うと、スバルファンとしても惜しまれてならないのが正直な気持ちです。

そんな守旧派ならではの要望をスバルに伝えると、「新型フォレスターには、ターボとMTに代わる新しい走りの良さがあるから、そこを見て欲しい!」という意味の答えが返されました。

注目のe-BOXERはターボの代わりになるのか?

短時間ではあったものの、クローズドコースで新型フォレスターを試乗した際の第一印象では、「やっぱりターボが欲しい!」と思いました。最大の理由は、ハイブリッドのe-BOXER云々の前に、新型フォレスターはボディとシャーシの出来が良いからです。400馬力ぐらいのエンジンを積んでも安全にスポーツドライブができそうなほどの余裕を感じました。

ボディや足が良くなると「モアパワー!」と言いたくなるのは、クルマ好きのサガというものですが、「これでターボとMTがあれば宇宙イチ痛快なSUVが誕生するのに!」と思えたのです。

上質で大人っぽくなった新型フォレスターにターボとMTは必要なのか?

しかし、冷静になって考えると、結論は変わってきます。上質感も高まってさらにオトナ向けのクルマとなった新型フォレスターに、そういう仕様は本当に必要かと言われれば、即座にYESとは言いづらいところ。仮に、新型フォレスターにターボとMTがあったとしたら、クルマ好きの間ではもてはやされそうですが、おそらくあまり売れないでしょう。

「ターボが欲しい!」と言いながらも、自分が実際にフォレスターを買うとなれば、普通にNAの直噴2.5リッターエンジン、もしくは2リッター+モーターのe-BOXERを選ぶと思えたのも事実でした。

自分が20歳代のワカモノで、フォレスターが200万円そこそこで買えた時代だったら1ミリも迷わずターボ&MTを選んでいたでしょう。しかし、40歳代半ばとなった今の自分が中型SUVを買うとなると違います。WRXのようなクルマの場合は、この先自身の老齢化が進んでも過激なターボエンジンとMTの組み合わせを選びますが、もはやSUVはそういう仕様はなくてもいいかと。他人にススメる場合はなおさらです。

e-BOXERはターボの代わりにはならない!

開発エンジニアが言う通り、e-BOXERには「新しい走りの気持ち良さ」があり、新型フォレスターの上質感や車格に相応しいパワートレーンだと思いました。「トルクが欲しい」と思った瞬間にクッと車体を押してくれるなど、電気モーターならではのトルク感には新世代の「ファン」があります。ダイレクト感も気に入りました。

と言いながらも、e-BOXERはターボの代わりにはなり得ません。ターボの気持ち良さはわずかなタイムラグの後にグワッー!っとトルクが立ち上がるところにあるので、e-BOXERの気持ちよさとは質的に対極にあるからです。

これまでのフォレスターと同様に、ピークパワーを抑えた環境対応型のターボがあればなお良いとは思いますが、中型SUVという車格からすると、やや大きめの排気量のNAと電気モーターアシストという現状の2本立てには、理解と納得はできます。

e-BOXERベースの新たなパワートレインやSTIコンプリートカーに期待

話はいろいろ矛盾しますが、私なりの意見を整理すると、

・e-BOXERはターボの代わりにはならないが、新しい気持ちよさは得られる

・車体に余裕がありすぎるため「モアパワー!」と思ってしまうが、冷静になって考えるとそうでもない

・一般的な人にオススメするなら、仮にターボがあってもe-BOXERか2.5リッター直噴を推す

・現状で不満はないが、クルマ好きの気持ちとしては、ターボとMTが欲しい

というものになります。

新型フォレスターには計り知れない潜在性能を感じるので、クルマ好きの観点からするとターボとMTへの未練はなかなか断ち切れないところですが、世情を鑑みると現状のラインナップは妥当なところでしょう。

将来的には、ターボ+電気モーターのe-BOXERの発展版的なパワートレーンや、STIのコンプリートカーの登場への期待が高まります。

フォレスターのMTが無理なら、レヴォーグのMTが欲しい!

MTに関しては、フォレスターよりもレヴォーグへの設定が待望されるところです。

フォレスターにMTが設定されても、どうせまたコンマ数パーセントしか売れないでしょうが、レヴォーグでMTを待ってる人はとても多いので、今後も要望を発信し続ける所存です。

[TEXT:マリオ高野]

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

検索ワード

マリオ 高野
筆者マリオ 高野

1973年大阪生まれ。免許取得後にクルマの楽しさに目覚め、ヴィヴィオとインプレッサWRXを立て続けに新車で購入。弱冠ハタチでクルマローン地獄に陥るも、クルマへの愛情や関心は深まるばかりとなり、ホンダの新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、ダイハツ期間工(アンダーボディ組立て)などを経験。2001年に自動車雑誌の編集部員を目指し上京。新車情報誌やアメ車雑誌の編集部員を経てフリーライターとなる。編集プロダクション「フォッケウルフ」での階級は「二等兵」。記事一覧を見る

MOTA編集部
監修者MOTA編集部

MOTA編集部は自動車に関する豊富な知識を持つ専門家チーム。ユーザーにとって価値のあるコンテンツ・サービスを提供することをモットーに、新型車の情報や、自動車の購入・売買のノウハウなど、自動車に関する情報を誰にでも分かりやすく解説できるように監修しています。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

スバル フォレスターの最新自動車ニュース/記事

スバルのカタログ情報 スバル フォレスターのカタログ情報 スバルの中古車検索 スバル フォレスターの中古車検索 スバルの記事一覧 スバル フォレスターの記事一覧 スバルのニュース一覧 スバル フォレスターのニュース一覧

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる