日本車に肉迫するヒュンダイの脅威/桃田健史(2/3)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:ヒュンダイ・モーター・カンパニー
欧米日からの転職組の活躍
韓国は日本以上に学歴社会だ。厳しい受験競争を戦い抜き、ソウル大学など首都ソウル周辺の一流大学卒の「勝ち組」が、ヒュンダイ・キアグループや、LG、サムソンなど韓国超一流企業に就職できる。ヒュンダイ・キアでの車両開発はこれら精鋭エンジニアたちによって推し進められ、そして韓国に大きな変化の時期が訪れた。それが1997年の金融危機だ。
韓国の民間銀行の多くが事業に行き詰まり、その後のIMF(国際通貨基金)の救済によって韓国経済は事実上のゼロからのスタートを切った。その1997年以降から2000年代にかけて、韓国は欧米、そして日本の文化をより広く取り入れる社会背景が整っていった。一般家庭では、子供への英語教育が盛んになった。
そして自動車産業界も変わっていった。ヒュンダイ・キアでも韓国人だけの精鋭部隊に加えて、世界各地域での実情に詳しい様々な外国人を雇い、登用していった。なかでもデザイン分野では、南カリフォルニアのデザイン・車両開発施設に、米系、欧州系のデザイナーが数多く転職した。
2011年現在、ヒュンダイのデザインは「エグカッコイ(エグい&カッコイイ)」感じになった。ボディのカットラインが大胆不敵。時には、コンセプトモデルより量産車の方が刺激的に見えたりする。こうしたエグカッコ良さを強調したデザインは、ヒュンダイ・キアを街中でスタンドアウトさせた。そしてお客の足をディーラーへと向かわせた。
10年程前まで、ヒュンダイ・キアのデザインは、目立たない、地味~ぃな感じだった。それが各国デザイナーのエッセンスが凝縮されてきた近年、どんどん派手になり、洗練されていった。その過程で一時、ヒュンダイ○○はホンダ○○にそっくりだ、などとアメリカで訴訟案件になるのならないと騒がれたことがあった。だが現時点ではそうした次元を越え、ヒュンダイ・キアのデザインには独特の躍動感が生まれている。
さらに、数年前まではサスペンションの基本設計や味付けが影響し、乗り心地やハンドリングで日本車にやや劣る感じがあった。それが2011年現在では、ほとんどのモデルで日本車レベルと言えるほど洗練されてきた。
またパワートレインでも、エンジン、トランスミッション共に性能が上がり、耐久性と燃費のレベル向上が目覚しい。さらには「ソナタ・ハイブリッド」など次世代開発でも、独自技術による量産化を実現した。ヒュンダイ・キアグループではいま、生粋の韓国エンジニア・デザイナーと欧米日からの転職組がバランス良く仕事をしている、と言える。
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