チャイルドシート義務化から20年「使用率7割どまり」その理由は?| 間違った使用で子どもの致死率20倍に!?
- 筆者: 加藤 久美子
2020年4月でチャイルドシート義務化から20年となったが、依然として装着率は7割にとどまる。その理由はユーザーの意識の低さか、警察の対応不足か。せっかく装着しても、実に6割のユーザーが子供の命に関わる不適切使用という衝撃の調査結果も。
我々親たちがわが子の命を守るにはどうすれば良いのか。チャイルドシート指導員の資格を有するモータージャーナリスト、加藤 久美子氏が緊急レポートする。
遅すぎる! 日本のチャイルドシート義務化は欧米の10-20年後ようやく実現
6歳未満の子どもを車に乗せる際にチャイルドシートの使用を義務付ける道路交通法(第71条の3第3項)が施行され、2020年4月でちょうど20年になる。
日本におけるチャイルドシートの法制化は諸外国と比べるとかなり遅く、オーストラリアでは1970年代後半、アメリカでは1980年代、欧州では1980~90年代前半までには、たいていどの国も義務化がされている。
2000年の義務化は、先進国の中ではもっとも遅い部類に入ると言っていいだろう。
ちなみに、チャイルドシートの前段階、つまり妊娠中の女性のシートベルト着用に関しても、日本はかなり遅れていた。筆者が調査を開始した2000年時点で、日本以外の先進国では妊婦もベルトを着用するのが当たり前だったが、日本は2008年11月に「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)が改正され、やっと妊婦に対してもシートベルトの着用が勧められるようになった。
なぜチャイルドシートの使用が義務付けられた?
そもそもなぜチャイルドシートの使用が義務付けられるようになったのか? それは、1990年代後半に自動車乗車中の事故で子どもがケガをしたり亡くなったりするケースが急増したからである。
警察庁の調査によると、6歳未満の1994年の死傷者数が6267人に対し、1998年には9548人とわずか5年間に5割以上も増えた。
この時期、バブル崩壊後の1992年以降、1990年代は交通事故死傷者数が大幅に減少していた時期であるにもかかわらず、子どもが乗車中に死傷する数だけが急増していたのだ。
20年間で着用率はどれくらい上がったのか?
義務化以前、1997~98年のチャイルドシートの使用率は10%以下、義務化となった2000年で40%に増えた。
警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の「チャイルドシート使用状況調査」によると、2002年以降は50%前後で横ばいとなり2007年には46.9%まで下落。2008年6月に後部座席のシートベルト着用が義務化されて以降はじわじわ上がって2013年には初めて6割を超え(60.2%)、2019年で前年比+4.3ポイント、初の7割超となった。(70.5%)
義務化から20年経っても7割、その理由は?
年齢層別の使用率がこちら。1歳未満は乳児用(後ろ向きで使うベビーシート)、1-4歳は幼児用、5歳だと学童用(ジュニアシート)世代となる。
20年経ってもなぜ7割なのか? 理由は様々に考えられる。第一は法制化されても警察による取り締まりがほとんど行われていないことだろう。また、保健所などが開催する「母親教室」「妊婦教室」などでもチャイルドシートに関する講座なども積極的には行われておらず、子どもを持つ多くの保護者はチャイルドシートに関する正確で安全な情報を入手する方法が分からない。
母子手帳への記述もほとんどがあっさりした内容だ。取り付け方法に関して警察に聞いても、「取り扱い説明書を読んで自分でつけてください」というばかりである。
使用率7割超でも、そのほとんどは命に関わる「不適正」使用
また、使用率が7割超えたと言っても、そのうちのほとんどが不適正な状態で使われている。チャイルドシートを不適正に使うことの恐ろしさは警察庁の「致死率」のデータでも数字になって表れている。
[JAFユーザーテストより]
チャイルドシートを使用しないで衝突実験を行った際の映像だ。この動画を観たあとでも、まだチャイルドシートを装着しないで良いと思うだろうか。親ならばしっかり自覚を持って欲しいところだ。
自動車同乗中(6歳未満幼児)のチャイルドシート使用有無別致死率のデータでは、
チャイルドシートを適正使用していた場合の致死率は0.03%だが、
不適正に使用していた場合は0.65%と一気に20倍以上に跳ね上がる。この場合の致死率はなんとチャイルドシート不使用の致死率(0.42%)よりも高くなっている。
チャイルドシートをしっかりと固定し、また子どもを座らせた後にハーネスをしっかり締めることが確実に子どもの命を守ることにつながる。
近年はISO FIX対応シート(車についているISO FIXの金具にチャイルドシート側の金具をガチャっとはめ込むだけで確実に装着できる)の普及で取り付けはしっかりできていることが多いようだが、子どもをシートに固定するためのハーネスがゆるかったり、ハーネス肩ベルトの位置が適正でなかったりすると、急ブレーキレベルの衝撃でも床に転がり落ちる危険がある。
約6割がチャイルドシート不適切使用、大半が「ハーネスに問題あり」
JAFと警察庁が毎年行っている「チャイルドシート着座状況調査結果(2019年)」においても、間違いがとても多くなっている。
0~5歳まで平均して6割強でチャイルドシートが正しく装着できておらず、また、乳児用で95.7%、幼児用で91.2%が「ハーネスに問題あり」(ハーネスの高さが間違っている、締め付けが緩い、よじれなど)とされている。
子どもの安全を考えるなら新基準に合わせたジュニアシートは必須
命に関わる「使用状況」に関して、乳幼児では「ハーネスの間違い」がほとんどであるが、学童用シートになると「体格不適合」が4割近くになる。これは、「まだ幼児用シートの体格(体重18kg以下、身長100cm以下)なのにジュニアシートを使っている」ということである。
さらにチャイルドシートの使用義務は5歳までだが、6歳以降はシートベルトの着用義務の対象となる。
車両シートベルトが安全に装着できる身長は145~150cmなので、11~12歳頃まではジュニアシートを使って子どもの体を事故や急ブレーキなどの衝撃からしっかり守る義務がある。
背もたれナシのブースターシートは体重22kg、身長125cm以上で使用
ところで、ジュニアシートと言えば背もたれがない座面だけの「ブースターシート」を思い浮かべる人が多いと思うが、2017年2月より実はEマーク(ECE R44/04)の安全基準が変わっていることをご存知だろうか?
背もたれのないブースターシートは年齢に関係なく身長125cm、体重22kgを超えてからの使用する設計となり、それ以下の子どもはヘッドレストと背もたれの付いたフルバケットタイプのジュニアシートを使うことがルールとなっている。
注意すべきは、座面だけのブースターシートは、『スマートキッドベルト』や『マイフォールド』など肩ベルトの位置だけを調整するタイプと同様、「体重15kg以上、3歳から使用可能」と記載されているものがほとんどだということだ。
これらは2017年2月以前の旧基準で安全基準に合格しているため、メーカー側に違法性はない。しかし、子どもの安全を第一に考えるならば、体重22kg、身長125cmを超えるまでは使用を控えるべきだろう。
[筆者:加藤 久美子]
「あなたのチャイルドシートは大丈夫ですか?」[jafchannel(JAF)動画より]
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。