サーブ 新型9-5 海外試乗レポート(3/3)
- 筆者: 西川 淳
仕上がりはライバル「A6」のような雰囲気
フロントスクリーンによって切り取られる前方視界が、ちょっと飛行機のそれのようで、他のサルーンとは違う景色である。それは上下に薄く、左右に回り込んでもいて、ちょっとキャノピー風だ。
サーブらしい逆L字型のダッシュボードにはスイッチ類が整然と並び、高めの位置にシフトレバーが生えている。緑の指針が鮮やかだ。
ステアリングフィールやアクセルペダルの具合、足回りの反応など隙がなくカッチリとした仕立てではあるけれども、スッと馴染んでいける。
何か特別な印象をいきなり与えるようなライドフィールはない。エンジンの存在は「サーブらしく」無きに等しく、ターボチャージャーにしてもドカンと利かせるタイプではないが、お互いの力を上手にバランスさせながら、力強く前進する。
悪く言えば個性に欠けるが、どこまでも身を任せて走っていけるという気分になる。
要するに、安心安楽な乗り味で、疲れないクルマだ。車両の姿勢が安定しているうえに、速度感に乏しいから、知らぬ間に高い速度域で走っている。
そして、たとえばカントリーロードを100km/hくらいで巡航しているときが、一番気持ちいい。このように書くと、まったくもってスポーティさのないクルマのように思われるかも知れないが、実はガンガン走らせても面白い。
流行りの走行制御モードを「スポーツ」にすれば、ステアリングやアクセルペダルの反応、ATの変速時間、ダンパーの硬さ、4WDの前後駆動力配分などがスポーツ志向となって、なかなかの「ハンドリングマシン」に変身する。
サーブブランドとしては、アウディのポジショニングを目指すという。よって、このクルマのライバルはA6である。なるほど、そういう雰囲気に仕上がった。
クルマの完成度も高い。BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツ Eクラスのように、メカニズム的な最新モデルらしさはないけれども、実用車としては上出来である。
結局のところ、サーブは日本人にとってニッチな輸入車の中の、さらにニッチな選択肢である。
メルセデス、BMW、アウディが嫌となれば、このクラスで選ぶべきは今、ジャガーかキャデラックくらいしか選択肢がない。それを考えると、サーブは面白いチョイスになるのではと思う。
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