ルノー アヴァンタイム 試乗レポート

ルノー アヴァンタイム 試乗レポート
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常識破りのデザイン。ルノーが提唱する“ニューコンセプト・クーペ”

リアスタイリングドアライニング

何とも斬新で個性的なルックスの持ち主であるアヴァンタイムを、ルノーでは“ニューコンセプト・クーペ”と位置付けている。フロントカウルを前進させ、ボディのフロントエンドから1.6mを越える高いルーフ部分までをワンモーション風ラインで表現。いわゆるモノスペース調のキャビンを備えるそんなプロポーションのクルマを、しかしルノーでは決してミニバンなどとはカテゴライズしていない。それが証拠に、ヨーロッパの元祖ミニバンであるエスパスのシャシーをベースに生まれるこのクルマには、“ミニバン必需品”であるスライドドアや3列目シートは用意をされていない。それどころか、アヴァンタイムのサイドウインドウ・グラフィックからはBピラーが省かれ、ドアも左右に一枚ずつという常識破りのデザイン。パッケージングもデザインも、何もかもが前衛的で独創的なのが、まずはこのクルマ最大の特徴ということになる。

ミニバンとして接してはいけない。今まで感じたことのない新感覚のスタイリング。

サンルーフイメージ

これは“車輪のついた宇宙船”だ――“実物”を目前にし、乗降性向上のためダブルヒンジ式とされた凝ったドアを開いて室内に足を踏み入れたぼくには、このクルマのデザインがそう感じられた。

ミニバン風シルエットを持つこのクルマは、しかしそうしてミニバンを前提に接しようとすると、様々な点でつじつまが合わない事態を生じる。例えば、ホイールベースの真中当たりというグンと後退した位置に置かれたフロントシート。5人乗りレイアウトなのに、レッグスペースもヘッドスペースも不足気味の後席スペース。リアウインドウがグンと前進し、その分だけ削られることになったラゲッジスペースなどがそれだ。

一方で、そのスタイリングはどこをとっても見事に前衛的。スイッチ類やメーター類が大胆に整理をされた2トーンカラー基調で個性的なデザインのダッシュボードを目前にしてドライバーズシートに腰掛け、極端に遠いフロントガラスから前方の景色に目をやると、この冒頭に述べたような未来的な感覚を抱いてしまうのである。

どんなシーンでも十分な加速力を生み出す最強エンジン。

エンジン試乗

アヴァンタイムが自ら“ニューコンセプト・クーペ”を謳うとあっては走りのポテンシャルにもある程度の期待を抱かざるを得ない。が、実際このクルマはそうした期待に応えてくれている。まずは動力性能が、スペシャルティ・クーペと呼ぶに相応しい強力さだ。

日本仕様のアヴァンタイムが積むのは、本国では最強力バージョンに搭載される3リッターの4バルブV6ユニット。207psという最高出力を誇るこのエンジンは、およそ1.8トンと重い重量にも拘わらず、どんなシーンでも十分な加速力を与えてくれるのだ。

ATのプログラミングが「これまで出会ったフランス車の中で最上級!」と思わせてくれるものであったことも、静粛性の高さなど共にこうした好印象に拍車をかけている……と思ったら、マニュアルモード付きのこのAT、実は日本製とのこと。どうりで日本の道にもうまくマッチしてくれるわけである。

フットワークのテイストは、「しなやか」かつ「しっかり」といった印象。コーナリングのポテンシャルもなかなかに高い。“ちょっと速いコーナリング”でタイヤが悲鳴を上げたりすることもないのだ。

国産メーカーには真似できない、個性とユニークさを売るクルマ。

インパネシート

なんともユニークで個性的なアヴァンタイムには、日本で『500万円』という価格が与えられた。正直なところ「期待をしていたよりも高いかナ?」という思いもあるが、他に類を見ないこうしたクルマを――しかも、日本で大量に販売するのは不可能であることを知りながら――導入してくれたインポーターの努力を思うと、そうとも言い切れないもしれない。

それにしても、皆がこぞって“同じようなクルマ”を生み出すことになっている日本のメーカーのマーケティング戦略からは、決して生まれ得ないのがこうしたキャラクターのクルマ。とびきりフランス的にアヴァンギャルドな雰囲気を味わわせてくれるのが、このルノー・アヴァンタイムであると言うことが出来そうだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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