日本にない日本車「DATSUN(ダットサン)」~日産が懐かしいブランド名を再起用する理由とは~/桃田健史(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史/日産自動車
そんな「ダットサン」。90年代以降は、すっかり”過去のモノ”として世界から忘れられていった。なぜなら日産が世界市場で、「SIFT」などの企業イメージを統一するマーケティング戦略を展開。「NISSAN」ブランドを強調するようになったからだ。さらには、アメリカ発の高級ブランド「Infiniti」(インフィニティ:日本未発売)を育てていったことも大きい。
◎参考:■日本にない日本車「インフィニティ」[2012年7月25日]
そうした世界戦略のなかで再び、「ダットサン」ブランドの必要性が高まってきた。
それが、新興国の対応である。
筆者は今年5月、日産横浜本社で行われた同社2013年3月期決算発表記者会見の場で、 質疑応答の時間に、カルロス・ゴーンCEOに対してこう質問した。
「ブランドについてお聞きします。(日産、インフィニティ、ダットサン)3ブランド戦略のなかで、ダットサンへの期待はどうか? (この他に)ルノー日産グループとして(中国市場でのエントリー向けとして)ベヌーシア、さらに欧州では(ルーマニアの)ダチアなどを展開していますが、それらの関係性はどうなっていますか?」
◎参考:■【北京ショー2012】日産の中国専用ブランドに早くもEV「啓辰(ヴェヌーシア) e コンセプト」登場 ~日本にない日本車 特別編~[2012年7月25日]
これに対しゴーン氏は「プレミアム、グローバル、そしてエントリー(としての3ブランド化)です。世界の主要市場では(セールスボリュームゾーンに対する新車価格帯として)日産ブランドだけではいま、市場全体の60~70%に対応できています。ですが、新興国の場合、それが平均で市場の3分の1程度に留まっているのが実情です。
(こうした実情を鑑みて)日産として古き歴史を有するダットサンをインド、ロシアなど新興国市場、さらにはアフリカ市場などを主体に展開します。またベヌーシアは、あくまでも中国市場専用ブランドであり、グローバル市場での顧客が(ブランドイメージとして)混乱することがありません。またダチアはルノーのブランドであり、日産(関連)ブランドとは全く別な位置付けです」と回答した。
「ダットサン」ブランド日本投入の可能性は
また、筆者は今年3月、英国系自動車媒体の日本版の取材で、日産のブランド戦略を統括する同社常務役員の中村史郎氏に、同社横浜本社で単独ロングインタビューを行なった。
そのなかでも、ダットサンブランドについて聞いたが、部品の相互補完の観点からは、ルーマニアの「ダチア」との関係が深くなることを、中村氏は示唆した。ここ数年、「ダチア」がロシアや旧東欧市場を中心に、小型ミニバン「Dokker」や小型SUV「Duster」を投入することで業績を上げてきている。
以上のように、ルノー日産としては、新たなるブランド戦略として、十分な素材(ベースとなる車体と部品)が整っていたことで、「ダットサン」復活が実現したといえる。
では、日本市場への導入はどうか? 日本市場は新興国ではないので、そんなことは有り得ないのか?
軽自動車規定の改定があれば、一気に来る可能性も!?
前述の中村氏とのインタビューのなかで、ダットサンの日本導入は「今後の市場動向によっては、”絶対にない”とは断定できない」(中村氏)との回答だった。
これは、高齢化社会の進行や、ハイブリッド車や軽自動車の台頭など、”分かりやすい市場動向”に対しての発言ではない、と思える。
筆者としての考えを述べれば、”TPP(環太平洋自由貿易協定)”が、日本市場を大きく変えてしまう恐れがある。例えば、アメリカが日本への農産物・酪農製品への輸出に対する譲歩と引き換えに、軽自動車規定の大幅変更を強く求めてくるかもしれない。
そして、もし軽自動車規定がなくなれば、排気量1リッター前後の日系ワールドカーが、一気に日本市場へと流れ込んでくるだろう。
そのなかには当然、「ダットサン」も含まれる。
様々な分野で、激変が続いている世界自動車産業界。
「ダットサン」日本復活が起こっても、なんら不思議はない。
[レポート:桃田健史]
◎関連記事:
■日産、復活したダットサンブランド第1号「GO」を発表[2013年7月16日]
■日産、ダットサンブランドの第1号モデルのデザインスケッチを公開[2013年7月2日]
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