日産自動車 EV技術開発本部 エキスパートリーダー 宮本丈司 インタビュー(3/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤靖彦
電気自動車専用に設計されているリチウムイオンバッテリー
日産にしても、三菱にしても、あるいはトヨタのハイブリッドカーやPHVであっても、自動車メーカーはリチウムイオンバッテリーの安全確保に神経をとがらせている。
【宮本丈司】走行中の電気自動車に掛かる負担として、機械的には振動や衝撃といった点が厳しく、対応を必要としますが、電気的負荷は、通常の使い方であればそれほど厳しくはありません。
たとえば、リーフのバッテリー容量は24kWh(キロワット・アワー)ですが、走行中は5kWhくらいしか使わないよう、設計面からも負荷を軽くしています。携帯電話やパーソナルコンピュータで使われる汎用リチウムイオンバッテリーより負荷は小さく設計しているのです。電気自動車専用の設計が必要だということになります。
リチウムイオンバッテリーの信頼性や品質に対する取り組みは、クルマ開発という永年の経験からの着眼点が大きな意味を持ち、電機業界の方と共同で、互いによいところを出しながら開発できた成果は大きいと思います。
ですから、バッテリーメーカーだけで電気自動車用リチウムイオンバッテリーを開発し、市販するのは、難しい面もあり、時間がかかるのではないでしょうか。逆に、バッテリーメーカーは「自動車メーカーに何がわかるか」と思っておられるかもしれませんけれど(笑)
バッテリーについて消費者が気になる点では、暑さ寒さに対してどこまで機能できるのか?ということにある。たとえばカメラは寒さに弱いというのを体験するし、ノートパソコンが熱さに弱いといったことも経験する。
【宮本丈司】エンジン車に比べ、暑さや寒さに弱いのは事実です。そこで、暑いなりに、あるいは寒いなりに手当てをしておかないと、性能差が出ます。とはいえ、暑いから冷やそうとか、寒いから温めようということをしていては、エネルギーの収支として何をしているのかわからなくなってしまいます。
そこで、外気温と同じ温度で使える耐久性を作り込むのが王道と言えます。バッテリーの熱問題は、発熱をどう制御するかです。この発熱は、バッテリーの内部抵抗に左右されます。内部抵抗が大きいと、電流が流れたときに熱を出します。だから、ノート型パーソナルコンピュータが熱くなるのです。
そこで、熱が出にくいように内部抵抗を下げる設計をする。寒さに対しても、寒さによって電解液の粘度が上がり、やはり電気が流れにくくなって性能が落ちる。そこで、粘度を低くしたり、出力面積を増やしたりすることにより、寒くても電気が流れやすいように設計します。
日産のリチウムイオンバッテリーの特徴は、ラミネート型である点だ。
【宮本丈司】ラミネート型を私が選んだ最大の理由は、端子構造の簡素さです。最初、ソニーと一緒に開発した際は円筒型でした。これは、内部抵抗を少なくしながら大電流を得ようとしたときに、高価な方式でした。お客様の手に届く価格にして、普及を目指すには、コストは大きな課題です。もちろん、信頼性の確保は譲れません。
ラミネート型は、板状の電極を取り付け、あとはヒートシール(熱で密封する:筆者注)すれば、絶縁、気密、容量に関わる表面積を確保できる長所があります。放熱性も、車両への搭載性もよくなります。設計も量産もしやすく、低いコストで実現できます。合理的で、簡素で、確実でと、私のなかでベストな選択だと思っています。
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