日産 リーフ 試乗レポート/金子浩久(3/3)

  • 筆者: 金子 浩久
  • カメラマン:オートックワン編集部
日産 リーフ 試乗レポート/金子浩久
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クルマのスピードだけが上昇していく独特の感覚

日産リーフ

シフトレバーが、パソコンのマウスのような形状をしている他、乗り込んで発進するまで、リーフは一般的な自動車と変わらない。

エクステリア同様に、インテリアも“あえて、変えていない”ようにも見受けられる。

スイッチをオンにしてスタンバイOK。この辺りの流れは、プリウスと同じだ。パーキングブレーキを解除し、アクセルペダルに置いた右足を踏み込んでいくと、リーフは音も無く走り始めた。

正確には、音はある。

タイヤがアスファルトの路面を擦る音と、風切り音。それに、歩行者に電気自動車が接近していることを伝えるための人工のスイープ音だ。

スイープ音は、車内からは聞こえにくく、車外では認識しやすい音が時速30キロ以下の速度域で発せられる。運転席では、ヒュウウーンッという風に聞こえていた。電気自動車には内燃機関のトランスミッションは存在しないから、変速ショックのようなものは一切ない。エンジンからの微振動やトランスミッションからの区切りのようなものも存在せずに、クルマのスピードだけが上昇していく感覚は独特だ。

テストコースで80キロ前後の速度で周回を始めると、動力源からの音は皆無に近いから、風切り音とタイヤの擦過音が余計に目立って聞こえてきた。驚くほど静かというわけではないが、リーフの属するCセグメントと区分される大きさのクルマたちの中にあっては、とても静かだ。

リーフの走りっぷりが、同セグメントのクルマたちに較べて異なっているところは、もう一点ある。

日産はリーフの車両重量を公開していないからわからないが、重量のかさむバッテリーを積んでいることによって、ライバルたちよりも総体的に重たいクルマに仕上がっていることは間違いない。

重さは燃費やハンドリングにとって大敵だが、フラフラしない安定感やソフトな乗り心地などには大きく貢献する。同じ理由から、三菱 i-MiEVも、ベースとなっている軽自動車 i(アイ)よりも格段に快適な乗り心地を達成している。

日産リーフ

テストコース上の、アップダウンを伴った連続コーナーでも、リーフは安定して回った。しかし、その分、軽快感はもう少しあっても良かった。車両重量の重さによるメリットとデメリットが、リーフにはよく現れている。

テストコースを2周した後、展示されていたリーフに乗り込んでみた。後席に座ると、シートそのもののデキ以前に、前席シートの下の空間が狭いので、自分のつま先を入れられないことが気になった。ここにつま先を入れられないと、後席の乗員は足を伸ばせなくなるから、窮屈でたまらないのだ。

また、テールゲートを開けて、トランクスペースをチェックしてみると、ハリのようにトランクを前後方向に分断する太い出っ張りがあった。充電するための装備だそうだが、これではせっかくの広いトランクも小分けされてしまって、スーツケースや大きな段ボール箱などが斜めにしか入らない。

上記の2点は、電気自動車であろうがあるまいが、クルマの基本中の基本だ。日本人よりも体格の大きな欧米人や、日本よりも、大きな荷物を自分のクルマで運ぶ習慣の強い欧米マーケットから、このままでは必ず指摘を受けるだろう。

リーフには1周約3キロのテストコースを2周するだけだったので、肝心の航続距離や充電時間などはわからなかった。また、エアコンやヘッドライトを使った場合の電気の消耗量の違いなども、購入を考えていれば大いに気になるところだろう。

走りに関しては限定的なことしか知ることはできなかったが、革新的に新しいものが抱いている大きな可能性を感じることはできた。

興味深かったのが、日産がリーフの発売と同時に運用を始めるネットワークだ。

例えば、充電量が少なくなってくると、自動的にカーナビと連動させ、モニター画面上に最寄りの日産ディーラーを表示したり、充電可能施設を表示したりする。

リーフというクルマそのものとともに、こうしたネットワークやインフラ構築が電気自動車の普及に大きな影響を及ぼすことになるはずだ。リーフは、僕らの自動車生活を根本から改める起爆剤になるのか、どうか。

12月に発売され、社会にどう受け入れられていくのか、興味は尽きない。

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金子 浩久
筆者金子 浩久

モータリングライター 1961年東京生まれ。 自動車と自動車に関わる人間について執筆活動を行う。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』など。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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