フォード、WRC通算最多勝記録を更新する75勝をマーク
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WRC一行は、晩夏のニュージーランドに大移動し、今季第5戦ニュージーランド・ラリーを迎えた。
BPフォード・アブダビ・ワールド・ラリーチームのヤリ-マティ・ラトバラ/ミイカ・アンティラは、最終日の最終ステージで大逆転、僅か2.4秒差で今季初優勝を手にした。チームメイトのミッコ・ヒルボネン/ヤルノ・レーティネンは、4位でフィニッシュし、貴重なポイントを追加した。
第5戦終了時点で、フォードは151ポイントを獲得して、5点差で首位シトロエンを追いかける。ドライバー部門では、72ポイントのラトバラが2位につけ、64ポイントのヒルボネンが3位。
今回の勝利により、WRCの長年のパートナーを務めるフォード・モーター・カンパニーは、同選手権最多勝記録を更新する75勝目を手にした。フォードがWRC初勝利を記録したのは、1975年1,000湖ラリー(現ラリー・フィンランド)のこと。エスコートRS1600をドライブするティモ・マキネンによるものである。
今年のニュージーランドは、2010年から施行された新競技規則に基づいて、グラベルとターマックが混在するミックスサーフェスを採用するだけでなく、2004年8月のラリー・ドイチェランド以来最長となるスペシャルステージ(SS:競技区間)距離が設定された。
路面はスムーズ。かまぼこ状のカントがついている為、かなりの高速でコーナーをクリアできるのも、ニュージーランドの大きな特徴である。しかし、ライン取りには高い精度が要求される。順バンクならばタイムを稼げるが、反面、逆バンクに乗ってしまうとコーナリング中のスライドが制御不能となるおそれもある。
今回のラリーの総走行距離は1,461.51km、全21SSからなる競技区間は396.50kmの長丁場である。
夏らしい日差しに恵まれたデイ1。オークランド北、ワンガレイおよびカイパラ地区にレイアウトされたSSは8カ所。
4番スタートのラトバラは、当初リズムに乗り切れない様子だったが、SS3、4で本来の走りを取り戻す。特にSS4は、「地元フィンランドのようだった。」と語っている。午後も安定したペースで走り、ラトバラは、首位から1.4秒遅れの2番手で終えた。チームメイトのヒルボネンは、首位との差20.2秒の5番手で終えた。
デイ2は、オークランド南西のワイカトを中心とする全8SS。
前日2番手のラトバラは、首位から14.4秒遅れで午前中を終えた。午後も安定したパフォーマンスを見せたが、ライバルがそれ以上に速く、首位とは33.2秒差の3番手で最終日に臨むことになった。一方、ヒルボネンは、オープニングSSでスピン。マシンが180°回転し、進行方向とは逆向きに止まった為、貴重なタイムを失った。午後は巻き返しが期待されたが、SSベストは刻めず、首位とは60.2秒差の5番手。
最終デイ3。この日を首位で迎えたセバスチャン・ローブ(シトロエン)が、最終SSとなる2度目のワアンガでスピンを喫してタイムを落とし、さらにセバスチャン・オジェも同SS終盤でコースアウト。3番手のラトバラは、常に安定したパフォーマンスを見せて、トラブルフリーで逆転優勝を勝ち取った。
開口一番、「まさか優勝できるなんて思わなかった。キャリア最大のサプライズ優勝かな?」と発したラトバラ。「ワアンガが牙を剥いた、そんな感じだ。SS終盤にバンパーが落ちていたのだが、その時は誰のパーツだかわからなかった。SSを走り終えてからタイムを計算して、ようやく誰が勝ったのかわかった。今までにいくつか不運があったが、それを吹き飛ばす改心の勝利だ。」
6番手で最終日を迎えたヒルボネンは、首位とは1分以上の差があったが、この日だけで30秒以上を切り詰め、トップドライバーならではのスピードを見せつけ、4位でフィニッシュした。
逆転勝利を手にしたチームディレクターのマルコム・ウィルソンは、次のように語った。「ラリーとは、意外性のスポーツでもある。この3日間は、まさに興奮とドラマの連続だった。実際に目の当たりにした私でさえ、にわかには信じられなかった。ラトバラは、精神的な成長を感じさせてくれた。我々は昨年末から、安定感と成熟をテーマとしてきたので、今回の成長が余計に頼もしく感じられる。」
フォード・オブ・ヨーロッパでモータースポーツ活動を統括するジェラルド・クインは、「フォードは、一貫してWRCを支援してきた。今回、通算75勝をマークして、新たな高みに到達した。フォードは、エスコートで勝利を重ね、さらにシエラで勝利を記録してきたが、最多勝を記録しているのはフォーカスだ。その最終シーズンとなる2010年に、75勝という金字塔を打ち立てられたことに大きな意味がある。」とコメント。
第6戦ラリー・デ・ポルトガルは、アルガルベ地方のファロを中心に、5月27日~30日に開催される。