2台前の車両まで検知! ホンダの次世代先進安全技術「ホンダセンシング360」は2022年から中国で販売される自信作
- 筆者: 山本 晋也
- カメラマン:森山 良雄/ホンダ
ホンダは2021年11月25日(木)に栃木県にあるさくらテストコースでメディア向けに「安全ビジョン・テクノロジー取材会」を開催した。交通事故ゼロはすべての自動車メーカーにとって理想とすべき交通社会だが、ホンダは2050年までにホンダ車による死亡交通事故ゼロを目指すと意欲的な目標を発表した。どのような技術が用意されているのだろうか。
先進運転システム「ホンダセンシング」の上位版「ホンダセンシング360」を紹介していく。
2030年までホンダ車の死亡事故半減を目指すために生まれた「ホンダセンシング360」
ここでいうホンダ車というのは二輪・四輪の両方であり、2050年時点での保有車すべてを対象に交通事故による死亡者をゼロにすることを目指すという非常に高い目標だ。そこに向かう目標として、2030年に同じくホンダ車の関わる死亡交通事故を半減するという宣言も行なった。
現在、2021年11月であるから2030年というのは約8年後の話だ。未来の目標ではなく現在進行形のテクノロジーによって交通事故を減らすということになる。
その具体的な技術として期待されているのが、2022年より中国向けモデルに搭載されるという次世代の先進運転支援システム「ホンダセンシング360」だ。
いきなり中国向けというのは違和感を覚えるかもしれないが、その狙いをエンジニア氏にうかがえば「巨大自動車市場の中で、先進運転支援システムでカバーするのがもっとも難しいエリアにチャレンジしようということで、もっともハードルが高い中国でのスタートを選びました」という答えが返ってきた。それだけの自信作といえる。
2台前の車両まで検知してブレーキをかけることができる
今回、ホンダセンシング360を搭載した開発車両に試乗。従来のホンダセンシングとの違いを体感するという機会に恵まれた。
まずはホンダセンシング360の構成要素からお伝えしよう。
センサーとしてはミリ波レーダー(5個)とカメラ(1個)を使っている。フロントウインドウの内側に置かれたカメラについては、現行のホンダセンシングと同等の機能といえる。
ホンダセンシング360専用となるのがミリ波レーダーだ。フロント用として200m程度までを見通せる77Ghzの長距離レーダー、四隅に100m程度の検知距離を誇る77Ghzのレーダーを配置している。これにより、文字通りに360度の周辺認知が可能になっている。
ドライバーが認知して反応する前にシステムが作動
まずフロントにミリ波レーダーを追加したことで、直前を走るクルマの先までを見通すことができるようになったという。そうすることで、具体的にどんなシチュエーションで役に立つのか。
たとえば、前走車に追従して走行中、突然停止車両が現われたとき。前走車がギリギリで避けたため、もう反応する時間が残されていないといった場合に、ホンダセンシング360であればAEB(衝突被害軽減ブレーキ)を作動させることができる。
今回の試乗では時速50km程度で走行中に、前走車が車線変更すると停止車両が現れるというシナリオを体験したが、ドライバーが停止車両を認知して反応する前に、車両がAEBを働かせ急ブレーキで停止することで事故回避できるという先進安全のすごさを体験できた。これこそフロントの検知にカメラとミリ波レーダーを併用している成果だ。
目視で見えない角度から近づく車両も検知!
次にコーナー部分に新設されたミリ波レーダーの成果を確認した。
交差点で横断歩道を渡ろうという歩行者を見つけると、ドライバーはブレーキを踏んで歩行者が渡るのを確認する。そのとき渡っている歩行者に目を奪われていると、歩行者に続いて横断しようとする自転車に気付かないということはままある。
ミリ波レーダーやワイドになったカメラによって、そうした接近する軽車両を検知できるので、ドライバーが自転車に気付かず発進しようとしたときに車両がブレーキをかけて事故を防ぐことができるというシーンを体験した。
さらに対車両でもミリ波レーダーは有効だ。たとえば、流れのいい幹線道路に、建物に挟まれ視界が悪い道から左折して合流するといったシーン。壁に阻まれ、遠くから接近してくるクルマは見えないという状況で、ゆっくり合流しようとするとクルマが急ブレーキをかける。次の瞬間、時速約80kmで接近してきた車両が目前を通過した。ドライバーからはまったく見えない角度から近づいてくる車両を、フロントコーナーに配置されたミリ波レーダーが検知したのだ。
最新のホンダセンシングは二輪の検知機能も高めた! 交差点や右直の事故も予防
似たようなシチュエーションとして、もうひとつのシーンは信号のない交差点が舞台。一時停止してから左右を確認して進入するというものだったが、このときも横から猛スピードで接近してくるバイクをミリ波レーダーが検知、ブレーキをかけることで衝突を回避した。四輪車だけでなく、前面投影面積の小さな車両に対してもミリ波レーダーが有効であることが確認できた。
いずれにしてもミリ波レーダーが100m程度先まで見通せることで、高速で近づいてくる車両をしっかりと検知、事故につながらないようブレーキをかけることができるというわけだ。
交通事故による死者数を減らすには、死亡事故につながりやすい事故シチュエーションを重点的に先進安全機能によってカバーすることが有効。ホンダセンシング360が77GHzという比較的、遠くまで見通せるミリ波レーダーを5個使っているのは、高速で接近する車両を検知するためである。それは高速であるほど死亡事故につながりやすいからだ。
二輪対四輪に多い右直事故の削減にも貢献
対二輪の検知能力を上げているのも同様の狙いで、やはり二輪と四輪の事故になるとライダーが死亡するケースは増えてしまう。四輪側が二輪との衝突を避けられるシチュエーションを増やすことは「二輪・四輪を合わせたホンダ車による死亡事故」を減らすには欠かせないのだ。
すでに現行のホンダセンシングにおいても検知できる対象車両に二輪車が含まれている。バイクが一時停止しているのにドライバーが気付かなかったとしても、ホンダセンシングが見つけてAEBを作動させることができるという。今回、テストコースで新型シビックに試乗、そうした対二輪のシチュエーションにおいてAEBが作動する様子を確認することができた。
また、二輪と四輪の死亡事故の典型的なケースとして右直事故(接近してくる二輪車のスピードを見誤って右折してしまい衝突する事故)だが、現行のホンダセンシングの機能であっても制御のバージョンアップにより右直事故を避けられる可能性を高められるという。
農道など狭い道で路外逸脱してしまうのをホンダセンシングで防ぐ
そのほか、一般道における居眠りや運転ミスによる路外逸脱というのも死亡事故につながりやすいシチュエーションだ。すでに最新のホンダセンシングでは低速走行時の路外逸脱をカバーするステアリングアシスト機能がついている。
こちらもテストコースで体感したが、たしかによそ見などでステアリングの操作ミスをしたときにクルマがカバーしてくれることが、今回の試乗で確認できた。これならば農道などで田畑に落ちてしまうような事故を減らすことができそうだ。
すでに軽自動車にもホンダセンシングが搭載されているなど安全の意識は高い
冒頭で記したように、2030年までに保有を含むホンダ車による交通事故死者数を半減するというのは非常に高い目標である。一般的にクルマの寿命は12~15年程度といわれるので、2030年には現在売られているクルマがまだまだ多く残っていることが考えられる。つまり、この目標を達成するためには今から動き出したのでは遅く、すでに動き出していなくてはいけない。
実際、ホンダは軽自動車にもホンダセンシングを広く展開するなどADAS(先進運転支援システム)の普及を進めている。その上で、ホンダセンシング360という進化したADASを生み出した。
ホンダセンシング360は2030年までには先進国で販売する全モデルに搭載することを目指しているが、その中であえて中国という大市場から投入することは本気で死亡事故を減らそうという意思が感じられるといえるのではないだろうか。
【筆者:山本晋也】
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