マツダがミニバンを捨て日本に3列シートSUVの新型CX-8を導入する2つの理由
- 筆者: 桃田 健史
新型CX-8の対抗馬はトヨタ フォーチュナーと三菱 モンテロスポーツ
マツダ幹部は、3列シートSUVの“CX-8”の市場導入を公言している。
こうした大型SUVについて、SUV事情にあまり詳しくない日本のメディアの中には「主力市場はアメリカだ」と書く場合があるが、これは勘違いである。
アメリカでは、マツダはすでに新型CX-5と新型CX-9を発売しており、この2台でミッドサイズSUVとフルサイズSUVのセグメントをカバーしている。その中間に属するCX-8の存在価値は低く、現状では北米にCX-6を持って行く必要性を、筆者としては感じない。ただし、マツダがスバルのように、アメリカで販売が急上昇すれば、隙間のセグメント用としてCX-8が必要にある時期が来るかもしれない。
こうしたアメリカ市場にマッチしないSUVである新型CX-8が、活躍するのはどこか? それは東南アジアや中近東などの新興国である。
タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどを巡っていると、現地での主流の高級車とは、トヨタ フォーチュナーと三菱 モンテロスポーツ(仕向けによってはパジェロスポーツ)のツートップであることは一目瞭然だ。
フォーチュナーは、トヨタが新興国向けの車両規格として2000年代に立ち上げた、IMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ヴィークル)というプラットフォーム使った中型SUVだ。東南アジア各地で現地生産され、自国での完成車として販売、またはノックダウン方式と呼ばれる部品で輸入された各国で最終組み立てを行っている。筆者はこれまで、こうした各国の製造拠点を実際に訪問し、製造工程の詳細を取材してきた。新車の発売価格は300~400万円級であり、現地では富裕層向けの高級車だ。
また、パジェロスポーツ(モンテロスポーツ)は、三菱自動車工業が世界市場において現在、最も収益性の高いクルマだ。タイの製造拠点では「ミラージュ」と共に生産され、工場に隣接する港から専用船で東南アジアや南アフリカなど新興国各地向けに輸出されている。
こうしたトヨタと三菱の成功事例をマツダも応用したいのだ。
新型CX-5は東南アジア各国で、ヨーロピアン感覚がある斬新なデザインのSUVとして人気だ。この上昇気流に新型3列シートSUVのCX-8でも一気に乗りたい。これがマツダ新型CX-8の市場導入における最大の理由だ。
ディーゼル・ミニバンは出ない?
では、日本国内市場での新型CX-8導入はあるのか? 結論から言えば、『ある』。
その理由は、マツダのミニバン『MPV』の今後への対応だ。
周知の通り、日本市場は軽自動車とミニバンが主流。セダン、クーペ、そしてSUVやクロスオーバーはあくまでも、サイドイッシュ―(脇役)である。
そんな日本市場で、マツダはミニバン市場にどう対応していくのか? マツダのディーラーでは、「お客さんから、MPVのディーゼルが出れば、すぐに買いたいと言われているのですが、いったいいつ出るか?」という声をよく聞く。
こうしたユーザーの声は当然だ。2012年の初代CX-5導入から始まった、マツダ“第六世代”の大改革で実施された、三本の柱『魂動デザイン・SKYACITV・モノ造り革新』のなかで、ユーザーの心を直接強く突いたのは、ディーゼルユニットのSKYACTIV-Dだ。2.2リッターで始まり、1.5リッターへの展開し、マツダ躍進の主役となった。
その2.2リッターSKYACTIV-Dを搭載する、次期型MPVという発想は、ユーザーやディーラーからみれば、当然の流れだ。新型CX-5から始まった、マツダ第6.5世代のモデルラインアップの中に、「ついにミニバン登場か!?」という期待が高まる。
しかし、世界市場でのマツダの置かれている現状を鑑みれば、このタイミングで日本市場だけにほぼ特化するような中・大型ミニバンを導入する可能性は低いと思う。
その代替となるのが、3列シートSUVの『CX-8』という理論が成り立つ。
ミニバンの代替、マツダCX-8で望まれるマツダらしい世界観
東南アジアを中核とした新興国向け、さらに日本市場でのミニバンの代替、という立ち位置が見えてきたマツダ CX-6。
商品としての現実を考えれば、それは当然、新型CX-5をベースとした3列シートSUVになることは間違いない。
しかし、“ただのデッカイ、マツダCX-5”になるような真似を、マツダがするとは思えない。
モノ造りに対する徹底した深堀り、さらに新たなるブランド構築を目指すマツダとして、「なるほど、これは実に、マツダらしい!」と日本のユーザーが唸るような新型CX-8の登場を期待したい。
[Text:桃田健史]
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