マツダ アテンザスポーツ 試乗レポート

マツダ アテンザスポーツ 試乗レポート
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プラットフォームからエンジンまで新開発。ミディアムクラスの国際戦略車が誕生した。

リアスタイリングインパネ

マツダのラインナップ上は「カペラの後継車」。とは言うものの、実質的には何もかもがオールNEWの、これからのマツダの行く末を占う国際戦略車でもある。セダン/ワゴンと共に用意をされた5ドアHBボディは『スポーツ』なるサブネームを与えられ、シリーズのイメージリーダーに置かれている。エンジンは新開発の2.3/2.0Lの4気筒ユニット。もちろん、これを横方向にマウントしたFWD車ということになる。

そもそもは日欧市場をターゲットに開発がスタートしたものの、後にアメリカ市場でも販売されることが決定。その際にボディ拡幅が決定したとされ、結果的には全幅が1780mmと日本では少々持て余し気味になりそうなサイズまで成長してしまったことが気にかかる。デザインはご覧のようにスポーティ。「5ドア」とは言ってもボディ後部にノッチが与えられたため、一見ではセダンと大差なく見えるのがひとつの特徴と言える。

2.3Lエンジンを搭載する5ドアHBは期待以上のスポーティテイストだ。

エンジンシフト

カペラの後継という意識には捕らわれず「一からすべてを考え直した」というクルマだけに、その走りのテイストは新鮮だ。215/45というファットな17 インチタイヤを履くにも拘わらず、乗り心地は無闇に硬すぎたりしない。むしろ、走り出しの瞬間から路面の凹凸をきちんと追従するために、期待以上にしなやかな乗り味を提供してくれる感触が強い。限界近くのコーナリングではアクセルOFFによる後輪接地感の低下幅がやや大きめで、フロントに対してリアサスの剛性感をもう一歩高めてもらいたい気もする。が、バネ下の軽い動きと4輪接地感の高さ。そしてステアリングホイールを通じての路面とのコンタクト感の高さは「なかなか感激のレベルにあった」と言っていい。

エンジンは、マツダが“親会社”である米国フォード社との協力関係の元に開発を任された完全新開発のユニット。「そのチューニングには特に力を入れた」というように、全域でストレスを感じさせない爽やかなかつスポーティなサウンドが印象的。一方残念なのはAT。4速仕様ではもはや完全に時代遅れだ。

パッケージングはスタイル重視。大人4人が実用的に座れる居住空間を備えている。

フロントシートリアシート

前述のように日本では「大型車サイズ」の全幅を持つアテンザだが、そうした外寸からすると室内スペースは特に広いという印象ではない。むろん、大人4人にとっては十分実用的な空間ではあるが、前後左右のウインドウの倒れ込み角が強めなこともあってか、そうした感触を受けることになる。

テールゲートを支える“ヒンジ”部分が後席パッセンジャーの頭部位置と重なるが、それでも頭上には多少の余裕が残る。が、この部分にこだわるならば『セダン』を選んだ方が賢い。ちなみに、こうして大型のテールゲートを持つクルマの場合、路面凹凸で“ドラミング”と呼ばれる低周波ノイズが発生しやすいが、このクルマの場合にもややその傾向が見受けられた。

1780mmの全幅は日本の道路状況に合わないが、ワゴン顔負けのラゲッジスペースは魅力だ。

ラゲッジスペースラゲッジアレンジ

マツダが敢えて5ドアHBボディをイメージリーダーとする理由として、昨今の日本ではどうしても『セダン』のイメージが沈みがち、という事柄が関係をしていそうだ。確かに、合理主義が幅を利かせるヨーロッパでは、セダン以上のユーティリティを備えるハッチバックが昔からセダンを上回る人気を持つ。アテンザの場合、セダンのトランクスペースも広大だがさらにワゴン顔負けという『スポーツ』のユーティリティ性の高さは魅力的。ただし、後席の居住性や走りのテイストにこだわるのであれば、『セダン』を選ぶのが賢明だ。決定的な差とは言えないまでも、頭上空間やボディの剛性感などで、両者の間には違いが感じられるからである。

気になるのは例の全幅。アメリカ市場を気にするあまり、小型車枠を一気に80mmも越えてしまったそのサイズは、どんな言い訳をされたとしてもやはり無視出来ない大きさだからだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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