ランドローバー ディスカバリー(2014年モデル)・イヴォーク(2014年モデル)試乗レポート/金子浩久(2/2)
- 筆者: 金子 浩久
- カメラマン:ジャガー・ランドローバー・ジャパン
世界初の9速ATを採用したイヴォーク(2014年モデル)
ディスカバリーと同じように、レンジローバーイヴォークの2014年モデルも、外観こそ変わらないが内容が一新された。
最も大きな変更点は、トランスミッションに世界初の9速ATが用いられたことだろう。従来の6速ATと変わらぬ小型軽量の横置きエンジン用9速ATをトランスミッションメーカーのZF社が開発したことによって実現した。
ギア数の多さだけを競うのはナンセンスだけれども、段数が多ければそれだけエンジンからの出力を効率的に使うことができ、それはCO2排出量の削減と燃費向上に役立つ。
さらに、巡航時の静粛性も高まり、変速を司る電子制御の出来が良ければ(この時代に“電子制御が悪い”ということはあまり考えられないが)、レスポンスに優れ、ドライバビリティも向上する。AT本体が大きく重たくならなければ、いいこと尽くめなのだ。
翌日、ストラスブールからライン川の東側に出てドイツに入り、シュバルツバルト(黒い森)地帯を抜けてチューリッヒを目指した。
まだ身体に昨日のディスカバリーの運転感覚が残っているから、それと較べるとイヴォークは軽快だ。ジャケットを脱いでシャツ一枚になって走り出したみたいだ。
9速ATに注意しながら走ると、オンロードでは2速から発進して、40km/hに達しないうちに3速に入る。直進状態で少しでもスロットルペダルを戻したりすれば、ポポポポンッとシフトアップして、すぐに7速や8速、あるいは9速に入っている。
高速道路で、9速で100km/h巡航時のエンジン回転数は1550回転。回転を下げることができた分、静かになっている。
シフトタイミングなどがスポーティな設定となるSモードを選ぶと自動的には9速には入らない。ハンドル裏のパドルでシフトアップすれば入る。
ATを9速化すると、必然的に変速比の幅は拡がる。六つに割っていたところを九つに割ったのではなく、上と下を伸ばしている。それによって下の段のギア比は相対的に上がる。先代の6速ATの1速の変速比が4.148だったのに対して、9速ATの1速は4.713。2速を比較しても、6速ATは2.370であるのに対して、9速ATは2.842だ。
1速と2速のギア比が上げられたことによって、オフロードでの悪路走破性の向上も確実に見込める。ディスカバリーのような本格的な副変速機を装備するスペースもなければ重量的な余裕もないイヴォークのような横置きエンジン搭載のアーバンSUVの悪路走破性向上のための優れた方策だ。その手があったかと唸らされるコロンブスの卵的な発想だ。
新たに採用した9速ATと4輪駆動システム
もうひとつ、2014年モデルのイヴォークが改めたのは4輪駆動システムだ。「アクティブ・ドライブライン」と称し、いわゆるオンデマンド4WDと呼ばれる種類に分けられる。
アクティブ・ドライブラインは、停止からイヴォークが動き出す時には4輪を駆動し、約35km/hで、PTU(パワートランスファーユニット)が後輪への駆動系統を切り離す。様々なパラメーターをモニタリングし、必要だと判断した場合には350ミリ秒以内という非常に早い間隔以内で再び後輪に接続する。
これによって稼げる機械的な損失は大きく、典型的な運転パターンでは75%、112km/hの定速走行ではなんと91%も低減することができる。
なお、テレインレスポンスシステムでオンロード走行モード以外のモードを選んだ場合(つまりオフロード走行)は、常時4輪が駆動される。
イヴォークの新型は、9速ATの採用とアクティブ・ドライブライン、さらに新たにアイドリングストップの採用によって、燃費を大幅に軽減することに成功したという。EUの基準では11.4%、日本のJC08基準では20%も軽減された。
さらにアクティブ・ドライブラインは電子制御式ディファレンシャルに左右2組のクラッチを状況に応じて断続することによって、いわゆるトルクベクトリング効果も生み出し、オンロード走行での俊敏性の向上にも貢献している。
アクティブ・ドライブラインはオフロードだけでなくオンロード走行性能向上までもカバーする賢く実際的な4輪駆動システムだ。それはまた、オン&オフの走行性能だけでなく燃費向上と排出ガス低減などをも兼務しているのだから八面六臂の活躍振りだ。4輪駆動を知り抜いているランドローバーならではの技術と言えるだろう。単にZF社製の9速ATをポンッと付けただけではないのだ。
この大幅なアップデイトによって、アーバンSUVとしてのイヴォークの魅力はさらに増している。
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