ランボルギーニ 新型ウルス 試乗│本格的なオフロードパフォーマンスを備えた猛牛のSUV(2/2)

一般道へ出ても優等生に変わりはないが、もちろん猛牛らしい部分も

サーキットで、とても速いSUVだということは分かった。けれども、優秀な制御のおかげもあり、サーキットでのドライブフィールはかなり洗練されたもので、およそスリリングとは言えない。冷静に、汗ひとつかかず攻め込めたことをもって、どう評価するのか。ミドシップの最新ランボルギーニをサーキットで走らせると、はるかに楽しいし、スリリングだし、背中もびっしょりになる。その世界観とはまるで違っている。

一般道へ出ても優等生に変わりはなかった。幅広いカントリーロードと街中の狭い道が交互に現れるルート。そこでのウルスは、とびきりの“乗用車”だったのだ。ソリッドな乗り心地は、ちょっと昔の欧州車を思い出させるもので嫌いではない。ストラーダモードではややアシがバタつくものの、スポーツモードにすれば、車体が引き締まり、足元のバタつきも収まって、フラットライドに終始する。ボディ剛性が高いせいか、アシが常によく動いているのが分かる。23インチでも、タイヤの薄さが気になることなどなかった。

なにより、鼻先の動きのニュートラルさに驚いた。クルマの先端までドライバーの意思が伝わっているかのようだ。それゆえ、むやみに大きさを感じることなく、街中を走らせることができる。対向車も気にならない。むしろ、ややもすればランボルギーニをドライブしているという事実さえ忘れてしまいそうになる。快適だ。

もっとも、ちょっと前が空いたときを見計らって、アクセルペダルを思い切り踏み込んでみれば、その加速とサウンドのすさまじいことと言ったら！車体がふわりと浮いたかと思うと、即座に後からつま弾きにあったかのような加速をみせた。それは正に、猛牛らしい“ランボな速さ”、だ。

オフロードでの楽しさをしったら、サーキットは洗練された速いだけのクルマ

最後にオフロードコースを試す。

21インチのスコーピオンを履き、マットガードを備えたオフロードパッケージ仕様が勇ましい（個人的にはこの出で立ちが最も格好いいと思う。顔が尖って見えるからだ）。タンブーロを、インストラクターの指示に従ってテッラ＝グラベルモードにセットした。

滑り易い路面におけるトラクション制御のすさまじさには驚くほかない。ひとたび、その恩恵を知れば、強大なトルクを思う存分に使っていけそうな気分になる。さらに左右でデカップ可能なアクティブアンチロールバーの恩恵で、凸凹路面であっても姿勢はほぼフラットを保つから、視線は思いのほか安定し、荒れた道でも運転しやすい。

もちろん、調子に乗って踏みすぎてはいけない。2トンオーバーもの物理的な重さを、シャシー制御だけで完全に克服することなどできやしないのだ。スローインを守って、リア重視の駆動配分をもつ４ＷＤ車に特有の、４輪スライドコントロールで連続するコーナーを脱出する楽しさといったら！この楽しさに比べたら、サーキットでのウルスなんて、洗練された速いだけのクルマだったかも、と思えてしまったほどだ。

オフロードでスーパーに楽しい。それは、ウラカンやアヴェンタドールがサーキットで楽しい、ということと同じである。ウルスを買ったオーナーは、オフロードに行くことなど十中八九あるまい。けれども、本物の性能を有していることが、高性能モデルの価値である。なるほど、ウルスには本物のパフォーマンスと、上等な乗用車テイストが詰まった、オールマイティな“ファミリー”ランボであった。

[Text：西川 淳 Photo：ランボルギーニ ジャパン]

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