ランボルギーニ 生誕50周年パレードレポート/川端由美(2/2)
- 筆者: 川端 由美
- カメラマン:ランボルギーニS.p.a
ファンにはたまらない“黄色いノコギリ屋根”は、未だ健在
実は、ネプチューン像で有名なマッジョーレ広場は最終目的地ではない。この広場でコンクール・デレガンスを行ったあと、暴れ牛の隊列は生まれ故郷のサンタガタへと向かった。この時期、ヨーロッパの一日は長い。7時を過ぎても青い空の下、本社内の駐車場を埋め尽くすほどの里帰りの隊列を迎えながらシャンパンを傾け…ようと思ったら、工場見学をさせてくれるという。シャンパングラスへのばしかけた手を、一も二もなく上に挙げた。
工場内には初期からある建屋が残されている。壁の色こそ白に塗り替えられているが、過日のスーパーカー・カードの背景にあった黄色いノコギリ屋根の工場である。外観とは裏腹に、内部は非常に近代的に改装されており、その昔、クンタッチを生産していたであろうスペースに、現在はガヤルドとアヴェンタドールのファイナルアッセンブリラインが備わっている。
偶然なのか、演出なのか、来季のトロフェオ・カップ用の車両がライン上に流れていた。限られたメディアだけを招いた試乗会で一度だけ試走したことがあるが、ノーマルのガヤルドとは明らかに違う乗り味に驚いたことがある。実際、シャシーそのものは共通であるが、剛性を高めるための補強や、カーボン素材がふんだんに使われているなど、レースの世界で戦うべく武装されていた。外観からはほとんど区別がつかないだけに、こうした工場見学の機会があったことに感謝したい。
さらに、アヴェンタドールを生産するにあたって増設されたカーボン複合材の工場にも足を踏み入れることが許された。コンタミネーションを防ぐため、工場見学をあまり許さないのがカーボン工場の通例だ。が、今日はさすがに50周年ゆえの大盤振る舞いなのだろう。クリーンルームの中はガラス越しにのぞくだけだったが、RTM方式のための大型プレス機やカーボンを焼成するためのオートクレーブなども間近で見ることができた。
人を乗せるための車を作るのではない。自分自身が楽しむための車を作るのだ
ようやく西の空が赤みがかる頃、ディナーがスタートした。1000人あまりが着席できる大がかりな特設会場の中を見回すと、めまいがするほどの錚々たるメンバーが集まっていた。資本元であるアウディAGのCEOであるルパート・シュタットラー氏、元アウディ・ランボルギーニのデザイナーにして、現在はフォルクスワーゲン・グループのデザイン部門を統括するワルター・デ・シルバ氏が50周年を祝うスピーチを行った。そして、現CEOであるシュテファン・ヴィンケルマン氏のスピーチの中で、ランボルギーニの黎明期を支えたほぼ全メンバーのインタビュー映像が流された。
ここからが、さらに嬉しい驚きの連続だった。名テストドライバーだったボブ・ウォレス、長年テストドライバーを務めてきたヴァレンチノ・バルボーニ、初期のランボルギーニの設計を行ったジャンパオロ・ダラーラの後を継いだパオロ・スタンツァーニ、デザイナーのマルチェロ・ガンディーニと同時期にカロッツェリア・ベルトーネに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ、フェルッチオの甥であるファビオ・ランボルギーニといった当の本人たちが舞台上に上がってきたのだ。
最後に、もうひとつサプライズが待ち構えていた。大きなスクリーンに映画のロール調の字幕が流れて、「Plobably Launch」(もしかしたら発表されるかもしれない)の文字が流れ、映画のタイトルのように「EGOISTA」なる車名が現れた。ワルター・ダ・シルバによってプロデュースされたワンオフのコンセプトカー、『エゴイスタ』である。軍用ヘリの「アパッチ」をモチーフにした個性的なデザインを持ち、シングルシーターでルーフを着脱してキャビンにアクセスするという変わり種だが、フェルッチオ・ランボルギーニが語った『人を乗せるための車を作るのではない。自分自身が楽しむための車を作るのだ』という言葉からワルター・デ・シルバがインスピレーションを得てこのクルマをプロデュースしたのだ。
50年という歳月は、自動車メーカーとしてそう古いものではない。しかし、フェルッチオ・ランボルギーニというスポーツカー作りへの情熱を燃やした一人の男と、彼を取り巻く才能ある人々が紡いだ物語には、いまもってスポーツカー・ファンを魅了するなにかがある。私自身も同級生の女の子たちがピンクレディのモノマネに興じる中、私だけ”カウンタック”の絵が胸に描かれたTシャツで学校に通っていたが、その思いを今につなげてモータージャーナリストになったのだ。来場者の中には、スーパー・スポーツカーに憧れた少年・少女時代の思いを胸に、事業を成功させた末にランボルギーニを手に入れたという人もいた。
それぞれの物語の大小はあっても、50年前、北イタリアの小さな村にスーパー・スポーツカー・メーカーが生まれたことが、世界中でスーパーカーへの熱狂を生み、ファンを育てた。フェラーリやマセラッティといった老舗とは違う、新興ゆえの情熱を注ぎ込んだ野性味溢れるスーパーカーこそがランボルギーニの身上だと実感した週末だった。
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