ジャガー Fタイプ(F-type)新型車解説/大谷達也(2/2)
- 筆者: 大谷 達也
F1などのレーシングカーが徹底的に軽量化に取り組んでいることを見れば、軽いことの重要性がよくわかる。その大切さを知っているからこそ、ジャガーは高価だけれど軽量な素材であるアルミをふんだんに使ってFタイプを作り上げたのだ。
もっとも、軽量化への努力はアルミボディだけに留まらず、フロントガラス、ソフトトップの構造、バンパービーム、インテリアカーペット、ロールプロテクションシステムなど、広範な部分に及んでいる。
しかも、Fタイプはただ軽いだけのスポーツカーではない。
前後の重量配分は、ハンドリングや乗り心地を重視して理想とされる50:50に仕立てられた。シャープなハンドリングを実現するため、フロントセクションのボディ剛性はXKより30%も強化されている。
そもそも、XKのような2+2シーターではなく敢えて2シーターとしたのも、ホイールベースを短縮してスポーツカーらしい俊敏性を手に入れるためだった。
本物のスポーツカーなのか、それともラグジュアリーさを持ち合わせたグランドツーリスモなのか…
エンジンはV6 3.0リッターとV8 5.0リッターの2タイプ。
どちらもスーパーチャージャーが組み合わされ、V6では340psと450Nmを、V8では495psと625Nmを絞り出す。そのフィーリングは、すでにXJやXFで搭載されているので、おおよその想像はつく。
たとえばV6はエンジンのレスポンスがシャープ。しかも、高回転まで回すと「これが3.0リッター?」と思うほどのパワーを発揮する。おまけにバランスが良好で回転フィールが滑らかと、まさに文句の付けどころがない。
いっぽうのV8は、500ps近いパワーを生み出すモンスターとは思えないほど静かでスムーズ。ただし、こちらもアクセルを踏み続ければ恐怖心が沸き上がるような圧倒的な加速感をもたらす。
ちなみに、0-100km/h加速と最高速度は、V6が5.3秒と260km/h、V8は4.3秒と300km/hと発表されている。
ここまで読み進んできても、いまひとつピンとこない方がいるかもしれない。それはそうだろう。なぜなら、こうしたスペックをいくら並べても、Fタイプがポルシェやフェラーリのような本物のスポーツカーなのか、それともメルセデスSLのようなラグジュアリーさを持ち合わせたグランドツーリスモなのかを知る手立てがないからだ。
正直、こればかりは試乗してみなければわからない。
ただし、公表された資料には、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェやイタリアのモンツァといったサーキットでテストを行なったと記されている。
また、開発にあたってはポルシェをベンチマークにしたとも伝えられる。だとすれば、狙ったのはグランドツーリスモではなくリアルスポーツカーであるはず。したがってFタイプは、高速道路を坦々と走るのが得意というよりは、ワインディングロードを思いのままに走らせるのがぴったりなクルマだろう。
ジャガーのサスペンション開発能力が際だって高いことは、最新のサルーン・モデルで実証済み。その能力がスポーツカーに応用されたとき、どんなクルマが完成するのだろうか?
ああ、Fタイプに試乗できる日がいまから待ち遠しくて仕方ない!
ジャガー Fタイプ(F-type) 主要諸元
全長x全幅x全高:4470x1925x1310mm/ホイールベース:2620m/乗車定員:2名/ハンドル:右/車両重量:(F-TYPE)1730kg、(F-TYPE V8 S)1810kg/エンジン種類:(F-TYPE)水冷V型6気筒 DOHC スーパーチャージャー付、(F-TYPE V8 S)水冷V型8気筒 DOHC スーパーチャージャー付/総排気量:(F-TYPE)2994cc、(F-TYPE V8 S)4999cc/最高出力:(F-TYPE)340ps(250kW)/6500rpm、(F-TYPE V8 S)495ps(364kW)/6500rpm/最大トルク:(F-TYPE)450N・m/3500rpm、(F-TYPE V8 S)625N・m/2500rpm/トランスミッション:電子制御8速AT/駆動方式:後輪駆動(FR)/タイヤサイズ:(F-TYPE)245/45 ZR18[フロント]・275/40 ZR18[リア]、(F-TYPE V8 S)245/45 ZR19[フロント]・275/35 ZR19[リア]/希望小売価格:(F-TYPE)950万円[消費税込み]、(F-TYPE V8 S)1,250万円[消費税込み]
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