日本にもビジネスジェットの新時代到来|ホンダとANA、 双日が強力タッグ(1/2)

エクスクルーシブ性ではなく、今までの不可能を可能にする航路を実現していく

2018年3月28日、ANA ホールディング株式会社(以下ANAとする)と双日株式会社(以下双日とする)がビジネスジェットチャーター手配事業を手掛ける会社を設立するという発表と、ANAと本田技研工業株式会社(以下ホンダ)がビジネスジェットマーケット拡大に向けた戦略的パートナーシップを締結したという発表を行った。

記者会見の会場となった羽田空港のANAの整備場には、ホンダジェットも展示され、多くの報道陣が駆け付けた。今この発表をする狙いは何なのだろうか。

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青い空で起こった出来事とホンダとANAの関係性

戦後GHQの命令により日本国籍の運行が停止していたが、1952年にその禁止機関の解除が決定されるタイミングで設立されたのが、日本ヘリコプター輸送株式会社と極東航空株式会社である。現在のANAの前身となる二社がこの国の大空に向けてテイクオフした瞬間である。

一方、1960年代から70年代にかけて、自動車の普及とともに、世界中で大気汚染が深刻な問題となっていた。自動車大国アメリカ合衆国では大気浄化法が制定。1970年には自動車の排気ガスに関する規制も盛り込まれた改正法が成立。1975年以降に製造する自動車の排気ガス中の一酸化炭素と炭化水素の排出量を1970年型のモデルの10分の1にまで抑制できなければ、販売を認めないという厳しいもの。アメリカのビッグスリーも達成できないこの規制を初めてクリアできたのが1972年にホンダが開発したCVCCエンジンだった。まさに青い空を守ろうとした自動車メーカー、象徴的にはそう表現することができるのではないだろうか。

今回、そんな二社、ANAとホンダが共同での発表があると聞いたとき、一番早くからこの国を空で結び、この国の空を知り尽くしてきたANAと、この国の自動車メーカーでは最も早くから空を仰ぎ見上げて、気にしてきたホンダが組むタッグということで、何か「青い空」が妙に象徴的に結びつける協力関係だと感じた。

3社がそれぞれの強みを生かし、弱点を補いあえる関係を確立させられるか

とは言え、双日も含めて、決して青天の霹靂では決してないというのが今回の合弁、協力関係なのではないだろうか。ANAと双日の合弁会社設立に関しても、ANAのニーズと双日の強みがしっかりマッチしている印象だ。

ANAは時間価値の最大化をユーザーの提供しようと目指す。ANA便からの乗り継ぎ便チャーターや、日本から海外目的地への直行便チャーター、またそういった際、現地で、日本で、乗り継ぎ経由地での地上手配業務などを充実させ、今まで不可能だった旅程をも可能にすることを目指すという。双日はこれまでにも機材提供や調達管理の面でANAとパートナーとして実績を積んできた。

また成田で大型ビジネスジェット6機、およびボーイング737BBJ 1機を機材管理しており、こうした期待を活用してきた実績もある。今回2018年夏をめどに設立を計画している新会社では機材は保有せず、信頼できるパートナー企業への手配をしていくという。そしてもう一つのANAとホンダのパートナーシップはここでの一つの選択肢として提供していくのだそうだ。

今までにない、航続距離、登場人数で、小型機の常識を超えた経済性を持つ機体はチャーターを現実的な移動手段、すなわち公共交通機関の選択肢にできる可能性を秘めている。ANAのブランドがもつ公共性、双日がすでに手掛けてきたビジネスジェットのノウハウ、これらによってより多くの人に利用しやすいチャーター便ビジネスジェットが広まることでのビジネスジェット市場の創出はホンダにとっても大きなメリットがある。

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中込 健太郎
筆者中込 健太郎

自動車ライター。1977年生まれ。神奈川県出身。武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部電気電子工学科・水素エネルギー研究センターを卒業。自動車産業向け産業機械メーカーを経て、大手自動車買取販売会社で店舗業務からWEB広告、集客、マーケティングなどに携わる。現場経験に基づくクルマ選びや中古車業界の事情に明るいことから、ユーザーはもとより、自動車販売の現場からの信頼も厚い。幼少期からクルマをはじめとした乗り物好きが高じ、車種を紹介するコンテンツなども手掛ける一方、「そのクルマで何をするか」をモットーに全国をクルマで旅行し、食べ歩き、温泉巡り、車中泊といったカーライフに関する執筆も多数手がける。記事一覧を見る

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