日野が大型バスに”非常停止ボタン”を世界で初搭載、大型車両にも普及が進む自動運転技術を体感した

  • 筆者: 桃田 健史
  • カメラマン:桃田健史・LIGARE

目隠しバスで工場内へ潜入?

集合場所は、JR青梅線 羽村駅の東口。羽村(はむら)は東京都八王子の北部、米軍横田基地にほど近い地域。日野自動車がここに工場を建設した1963年頃とは大きく違い、最近では東京のベッドタウンとして一般住宅も増えた。

羽村駅から日野ハイブリッドバスに乗って10分弱、日野自動車・羽村工場に到着。ここでは、日野とトヨタ向けの2トントラック(ヒノノニトン!)、そしてトヨタ向けのランドクルーザープラドなどを受託生産している(FJクルーザーもこちらで生産されていた)。

トヨタは日野自動車の株式50.1%を所有しており、つまり日野はトヨタの子会社である。

工場の正面玄関で、再びバスを乗り換えた。車内に入ると側面のカーテンがすべて閉まっている。さらに、工場内を進むと運転席の後ろ側のカーテンも閉めて、乗車席側から前方も見えなくなった。

「機密事項が多いための措置であり、ご了承願いたい」(日野関係者)という。

5分程度走行して、到着したのはお客様テクニカルセンター。ここで試乗に備えるためのプレゼンテーションを聞いた。

この日のお題は「安全・自動運転技術説明会」である。

大型車両にも普及が進む自動運転技術

近年、乗用車には軽自動車を含めて自動ブレーキが標準装備されるようになった。また、ミリ波レーダーを使って前車に追従走行するACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)を搭載する車も増えた。こうしたADAS(Advanced Driver Assistance System:アドバンスド・ドライバー・アシスタント・システム・・・高度運転支援装置)の発展型として、自動車線変更など自動運転の領域の量産化も徐々に進み始めている。

また、日本国内では経済産業省や国土交通省と地方自治体が連携して、ドライバーがいない状況も加味した完全自動運転の実証試験が全国各地で行われている。

こうした中、大型バスや大型トラックでも、ADASや自動運転の技術革新が進んでいることを知ってはいたが、モノがモノだけに、体験試乗する機会は極めて少ない。

そこで今回、日本国内のトラック・バス最大手の日野自動車がメディア向けに「安全・自動技術説明会」を実施したのだ。

先に、試乗の感想を言ってしまうと、バスに乗っているお客の気分になった状態で様々な機能を体験できたことがとても有意義だった。各種の機能が作動するのは数秒間の場合が多いが、しばしの間、大型オーバルコースのテストコースに揺られていて、そして

「さあ、大変だ、どうする?」

という状況になるというシナリオがとても良かった。

 

4つの予防安全性能を体験

羽村工場内テストコースでの体験は、4つあった。

順に紹介すると、最初はPCS(プレ・クラッシュ・セーフティ)。一般的に自動ブレーキと呼ばれる技術だ。ミリ波レーダーとカメラの画像認識技術を併用して対応する。前方の停止車両だけではなく、歩行者も認識することができる。

今回の試乗では、空気を入れて膨らませた車の後部を模したダミーのターゲットに向かって時速50キロで大型バスを走行した状態で、PCSを作動させた。実感としては「えっ!このタイミングで本当に止まるの?」という感じで、一気にドカン!!とブレーキがかかってシートベルトが身体にくい込むような大迫力だった。20トン級の大型バスと1~2トン程度の乗用車との重量差が肌身で分かった。

次は、EDSS(エマージェンシー・ドライビング・ストップ・システム)。こちらは運転手が急病などで運転ができない状況になった時、バスを自動で停止させる装置だ。

運転手の異常については、運転手自身が緊急ボタンと押す、または乗客が運転手の異常に気付いて緊急ボタンを押す、または蛇行運転をするなどバスの動きを自動で感知して装置が作動するなど様々な場合を想定している。

EDSSが作動すると、車内の赤いランプが点滅して警報が鳴った。停止するのは、車線内停止、また路肩に自動で退避することも可能だ。

実際、EDSSを高速道路で使用する場合、道路事業者と連携して、道路側のインフラでも他の走行車両に注意を促すシステムが必要となるだろう。

さらに、自動運転については、国土交通省が実証試験を行っている隊列走行のデモンストレーションを実施。現在は、先導車と追従車両それぞれに運転手がいる設定だが、2025年以降では後続の追従車は無人にすることを想定して技術開発を進めているという。

この他、”プラットフォーム正着制御”という技術も紹介された。これは、いすゞ自動車と共同開発していもので、路面上にペイントした専用の誘導線をカメラで認識することで自動操舵、自動減速を行い、バス停側の路肩ぎりぎりにバスを停止させるシステムだ。

開発の目標値としては、バス停とバスの扉との隙間は、45mmプラスマイナス15mm(30mm~60mm)を目指す。これなら車椅子での乗り降りも楽にできる範囲だ。

日野自動車のキャッチコピーは「もっと、はたらくトラック・バス」。

EDSS・ドライバー異常時対応システムは大型観光・高速路線バス車両「セレガ」で世界初採用となる予定だ。EDSSを搭載したセレガは2018年夏に商品化される予定。

自動運転を含めたバスとトラックの最新技術が、庶民にとって安全で豊かな暮らしにつながることを期待したい。

[Text:桃田 健史 Photo:桃田健史・LIGARE]

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筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

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