スイフト/ヴィッツ/ノートを徹底比較 ~ハイブリッド追加で注目のコンパクトカー~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫・和田清志
海外ではスズキの主力車種で3種類のエンジンを設定
スズキは国内では軽自動車のイメージが強いが、海外ではコンパクトカーが人気を高めている。2016年にはスズキの世界生産台数の内、79%は海外で売られたから、軽自動車が中心になるのは約20%の国内における話だ。
しかも今のスズキは国内でも小型車に力を入れ、登録車の比率が16%に達するので、もはや軽自動車が中心のメーカーとは言い切れない。
このような今のスズキを象徴するコンパクトカーがスイフトだ。
販売総数の約50%をインドで売る見込みで(生産はマルチ・スズキ・インディアが受け持つ)、従来モデルは欧州でも約17%が販売された。国内比率は10%程度になる。
要はスズキの世界戦略車だが、全長が3840mm、全幅が1695mmのボディは、最小回転半径が4.8mに収まって取りまわし性が良い。全高は前輪駆動の2WDが1500mm、4WDは1525mmだから立体駐車場も利用しやすい、国内市場に適したコンパクトカーとなっている。
外観は先代モデルに比べるとフロントグリルを大きく見せて、ウエストライン(サイドウインドウの下端のライン)を少し水平に近付けた。外観上ではボンネットをしっかりと見せていることも特徴だ(ただし運転席からはボンネットが見えない)。
注意したいのは斜め後方の視界だろう。ボディ後端のピラー(柱)を太く見せるために後席側のサイドウインドウを狭くしたから、後方視界が悪化した。リア側のドアは、外側のドアノブが高い位置で縦長に配置され、開閉時の操作性も良くない。外観の塊感を演出するために、視界とドアの使い勝手が少し犠牲になった。
エンジンは直列4気筒の1.2リッター、同じく1.2リッターのマイルドハイブリッド、直列3気筒1リッターターボの3種類を用意した。
マイルドハイブリッドにはISG(モーター機能付発電機)が搭載され、減速時を中心とした発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援(ハイブリッド機能)を行う仕組みだ。
1.5リッターのハイブリッドは基本的にはアクアと同じだが改善を施した
ヴィッツはトヨタのコンパクトカーの主力に位置付けられ、欧州や北米では「ヤリス」の名称で売られている。ボディサイズは全長が3945mm、全幅は1695mmだから、国産のコンパクトカーでは平均的な大きさだ。全高は2WDが1500mm、4WDは1530mmとされ、立体駐車場を使いやすい。
現行モデルの発売は前述のように2010年だから、数回にわたり改良を受けてきた。フロントマスクは2014年と2017年に刷新され、今回のマイナーチェンジでは発売当初に比べると迫力の強い造形に変更された。そのために比較的シンプルなボディサイドとは、バランスが良くない面もある。
またサイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたので、斜め後方と真後ろの視界もいまひとつだ。最小回転半径は14インチタイヤを装着したハイブリッドF/ハイブリッド ジュエラ、15インチのハイブリッドUは4.7mに収まって小回りの利きが良いが、16インチのハイブリッドUスポーティーパッケージは5.6mに拡大する。いずれの仕様も購入時には縦列駐車などを試しておくと安心だろう。
エンジンの種類は、直列3気筒の1リッター、直列4気筒の1.3リッター、直列4気筒1.5リッターのハイブリッドの3種類を用意する。マイナーチェンジを受ける前は直列4気筒1.5リッターのノーマルエンジンも選べたが、ハイブリッドの追加と併せて廃止された。
1.5リッターのハイブリッドは、アクアなどが搭載するタイプと基本的には同じだ。欧州では2012年5月にハイブリッドを設定したので、日本では約5年遅れて採用したことになる。
それでもヴィッツのハイブリッドシステムは燃焼効率の改善、ピストンのコーティングなど新たな工夫を盛り込んだ。ハイブリッドの基本的なメカニズムは同じでも、改良が施されている。
ハイブリッドのe-POWERはリーフのインバーターと駆動用モーターを活用
かつて日産には質感を高めたコンパクトカーのティーダがあったが、今では廃止されている。背の高いキューブは発売後8年、コンパクトワゴンのウイングロードも11年も経過した。コンパクトSUVのジュークも6年を経ている。
そのために日産の1.5リッター以下のエンジンを搭載する日産車は全般的に売れ行きが下がり、販売がノートに集中した。ノートも発売から4年以上を経過するので、一般的には設計の古い車種だが、ハイブリッドのe-POWERを追加して売れ行きを伸ばした。
ノートのボディサイズは全長が4100mm、全幅が1695mmで、今回取り上げた3車種の中では全長が唯一4mを上まわる。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2700mmだから最も長い。全高はe-POWERが1520mm、ノーマルエンジンの4WDでも1535mmなので、立体駐車場の利用が可能だ。
フロントマスクにはV字型のグリルが備わり、セレナなどと同じく日産車らしい顔立ちに見せている。ボディサイドは水平基調のデザインなので、側方や斜め後ろの視界も良い。最小回転半径は14インチタイヤを装着したe-POWER Xが4.9m、15インチのe-POWERメダリスト/e-POWER Sが5.2mとされ、小回りの利きも悪くない。
エンジンは全車が直列4気筒の1.2リッターを搭載しており、ノーマルタイプ、スーパーチャージャー、そしてハイブリッドのe-POWERを用意した。
e-POWERの特徴は、1.2リッターエンジンのほかに、駆動用モーター、発電機、直流電流を交流に変換するインバーター、駆動用リチウムイオン電池を搭載することだ。エンジンはホイールを直接駆動せず、発電機の作動のみに使われる。ホイールの駆動は駆動用モーターだけが受け持つ仕組みだ。
そしてインバーターと駆動用モーターは、電気自動車のリーフと共通化した。つまりリーフが搭載する24/30kWhのリチウムイオン電池を、エンジン/発電機/ガソリンタンクに置き換えたのがノートのe-POWERユニットと考えれば良いだろう。
デザイン・スペックの総評
今回取り上げた3車種はすべてモーターを併用するハイブリッドだがメカニズムはすべて異なる。
スイフトハイブリッドは最もシンプルで、1個のモーターが発電やアイドリングストップ後の再始動と併せて駆動も行う。モーターの最高出力は3.1馬力と小さく、1回の連続駆動時間は最長で30秒だ。従ってモーターの駆動力を体感する機会はほとんどない。それでもプラットフォームをイグニスと同じタイプに刷新したことで、車両重量が900kgと軽く(ハイブリッドML)、JC08モード燃費は27.4km/Lと良好だ。
ヴィッツのハイブリッドは、トヨタ車に幅広く使われるTHSII。駆動用モーターと発電機を備え、発電とモーター駆動を同時に行える。JC08モード燃費は34.4km/Lだから、アクアの37km/Lには達しないものの、今回取り上げた3車種の中では燃料消費量が最も少ない。
そしてノートe-POWERでは、エンジンが発電機の作動のみに使われ、駆動はモーターが担当して効率を高めた。JC08モード燃費は売れ筋のe-POWER Xとe-POWER メダリストが34km/L。ヴィッツハイブリッドと同等の数値になる。
価格はスイフトハイブリッドMLのセーフティパッケージ装着車が172万1520円、ヴィッツハイブリッドUが208万7640円、ノートe-POWER Xが195万9120円となる。
ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差は、装備の違いを補正するとスイフトが実質9万円、ヴィッツが実質26万円、ノートは実質42万円だ。
レギュラーガソリンの価格が1リッター当たり130円、実用燃費がJC08モードの85%として、前述の実質差額を取り戻すには、価格差の小さいスイフトで10万km、ヴィッツで16万km、ノートでは18万km程度を走る必要が生じる。コンパクトカーはノーマルエンジン車も燃費性能が優れ、最近はガソリン価格も安いために、ハイブリッドの価格上昇分を取り戻しにくい。
また今のクルマは、ジャンルを問わず安全装備などの充実に伴って価格が高まった。ここで取り上げた3車種も170~210万円に達する。セレナなど2リッターエンジンを積んだミニバンは、ノーマルエンジン車でも売れ筋の価格帯が250~280万円だ。コンパクトカーや軽自動車の販売比率が高まるのは当然だろう。
視界はノートが最も優れ、スイフトとヴィッツは斜め後方が見にくい。全長はスイフトが最も短く、ヴィッツ、ノートの順番に長くなる。取りまわし性は一長一短だ。
愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!
-
一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?
これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。
-
一括査定は本当に高く売れるの?
これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は最短3時間後、最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。







