フィアット パンダ 試乗レポート

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コンパクトさが売り物の“イタリア人のサンダル”的モデル?!

初代パンダの発売は1980年のこと。もはや24年も前のデビュー作となる従来型と新型とでは似ても似つかない、と思われるのも当然のハナシ。実は、昨年9月にヨーロッパで発売となったこの新型は、もともとは「パンダの後継車」として開発されてきたモデルではないのだ。このクルマが、当初は『ジンゴ』なる名前が与えられていながら「トゥインゴに似ている!」というルノーからのクレームで名称変更を余技なくされたブランニュー・モデル、というのは、知る人ぞ知る逸話(?)である。

とは言いつつもそんな新型パンダもまた、まずはコンパクトさが売り物の“イタリア人のサンダル”(!?)的モデルであるのは従来型と変わりがない。全長3535mm、全幅1590mmというのは、ヴィッツやマーチと比べてもまだひと回り以上小さいボディサイズだ。ただし、全高の1535mmはそんな前出2車をも凌ぐ背の高さ。ルーフレールを装着する『プラス』グレードではさらに35mmのプラスとなり、場所によってはタワー式パーキングに進入出来なくなる可能性もあるので要注意だ。

前席優先の思考で“2+2”的な使い方がベスト

ご覧のように新型パンダは、従来型とは全く異なるルックスの持ち主。車輪をボディの四隅目一杯へと追いやり、キャビン空間は背の高さと垂直近くまで立てたサイドやリアウインドウなどから稼ぎ出す、というパッケージングづくりのスタンスは、日本の“トールBOX”軽自動車たちと一脈通じるものがあるとも言って良い。

いかにも「働きもの」といった印象のエクステリア・デザインに対し、インテリアは予想以上にポップな雰囲気だった。ベージュがかったイエロー、もしくはブルーのシート・ファブリックは、男性陣にとってはちょっとばかり勇気のいるものかも知れないが…。半ばコンソールと一体化された造形のセンターパネルのデザインがユニークな新型パンダのキャビンだが、スペース的には明らかに前席優先の思想が読み取れる。後席はアップライトな姿勢で高く座る、というスタンスだが、それでも大人にとってはレッグスペースがかなりタイトな印象が拭えない。ラゲッジスペースも「推して知るべし」といった程度。要するに、本来は“2+2”的な使い方をすべきなのがこのクルマという事だろう。

静粛性・フットワークの質感などは高得点。エンジンの進化を望む

従来型パンダの“屋根付きの原付バイク”のような雰囲気から比べると、新型は何とも自動車らしく、立派になったもの。ちょっとした上級車並のドアの閉まり感などにも驚かされる。そして、そんな驚きは実際に走り出すと一層色濃く感じられる事になった。

まずは静粛性がびっくりする程に優れている。それはもはや、従来型とは比べ物にならないばかりか、我らが日本の誇るヴィッツやマーチのそれを軽々と凌いでしまうレベルであるのだ。と同時に、フットワークの質感がこれまた素晴らしい。路面凹凸を優しく包みながらしなやかな乗り味で進むそのさまは、生粋のイタリア車でありながらもどこか「フランス車以上にフランス車らしい」と感じられるものですらある。

加速の能力は決して優れているとは言えないが、それでもMT構造が基本のトランスミッション採用もあり日常の街乗りで不足を感じさせられる事はなさそう。ただし、いかに「1000万基以上の生産実績を誇る“Fire”シリーズエンジン」とはいえ2バルブのSOHCで圧縮比が9・8の60psというのは、プレミアム仕様の1・2リッター・ユニットとしてちょっと寂しいところ。そろそろフィアットにも新世代の心臓が欲しい。

購入前に一度、2ペダル仕様のトランスミッションの体験を

初代モデルのフリークからは「こんなのパンダじゃない!」とも言われてしまいそうではあるが、いざ走ってみればなかなか非凡な実力を味わわせてくれるのが新型。中でも、走ってみれば誰もが感心をするであろう足回りの実力の高さは「さすがはヨーロピアン・カー・オブ・ザ・イヤーの受賞者」と納得の出来るもの。ただし、日本流儀の“チョイ乗り”主体の使い方ではその真価が発揮されにくそうである点がちょっと気になるが…。

このクルマを選ぼうという際に知って置くべきは2ペダル仕様ゆえに“AT免許”でもOKとは言え、“デュアロジック”と呼ばれるそのトランスミッションはあくまでも構造的に「自動変速モードを備えたMTである」という事。絶対的なエンジントルクが小さい事が幸いし、加速時のトルクの断続による違和感はこの種のトランスミッションの中では比較的小さめの部類。が、クリープ現象は存在しないので上り坂発進では後ずさりが発生するし、シフトの瞬間にはMT流儀のアクセルワークを行わないとやはりそれなりのショックは避けられない。かように通常のトルコンAT車とは勝手が異なる事を認識し、是非とも購入前にしっかりとした試乗の機会を持っておくべきとアドバイスしたい。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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