ダイハツ 新型ムーヴ/ムーヴカスタム(2012年ビッグマイナーチェンジ) 新型車解説(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:ダイハツ工業株式会社
スタビライザーが装備され、走行安定性が向上!
今回のムーヴマイナーチェンジでは走行安定性も高められている。
フロントスタビライザーとローダウンサスペンションが全車に標準装備され、2WD車ではさらにリアスタビライザーも備わっている。マイチェン前のムーヴ(標準ボディ)ではスタビライザーが一切装備されず、ムーヴカスタム(フロントのみ)とムーヴカスタムRS(フロント・リア)にのみ装着されていた。(ちなみに、スバルへOEM供給された「ステラ」は、全車フロントにスタビライザーが備えられていた)
今回、ムーヴ2WD車のフロント・リア共にスタビライザーが備わったのは大きな進化だ。
ちなみに、スタビライザーとはボディの傾きを抑える棒状のパーツ。装着すれば車両の挙動を制御する自由度が広がるので、走行安定性だけでなく乗り心地の向上にも繋がる。
実際、変更前のムーヴカスタムはフロントスタビライザーの装着により、標準ボディよりも柔らかい足まわりに設定されていた。ボディの傾きを抑えることで走行安定性が向上するから、乗り心地への対策も立てやすい。
マイナーチェンジにも関わらず、サスペンションも刷新!
マイナーチェンジされたムーヴでは、スタビライザーの装着に伴ってサスペンションの設計も刷新されている。ショックアブソーバーが見直され、フロント側にはリバウンドスプリングも組み込まれて走行安定性がさらに高められた。前後輪のブレーキサイズも拡大している。
このサスペンション関連の刷新は、従来の軽自動車の常識では考えられないほど入念だ。
スタビライザーの重量は単体で3kg前後、別の部品を付けることになるからコストも高くなってしまう。そのため、N BOX、N ONE、ワゴンRなどの標準ボディでは非装着だが、ムーヴでは元々スタビライザー機能を持つトーションビーム式リアサスペンションをRSと同様に装着した。
ボディにも手が入り、各部の剛性が高められ遮音材も追加されて静粛性の向上が図られている。
充実装備でライバル車と比べた際のお買い得感が一気に増した新型ムーヴ
価格も見直された。標準装備されていたCDオーディオを省いたものの、最廉価グレードとなる「L」グレードは112万円から107万円へと値下げされている。これは、スズキ ワゴンRの最廉価グレードである「FX(110万9,850円)」よりも4万円近く安い。
ムーヴにおける推奨グレードは、スマートアシストを装着した「ムーヴ L“SA”」(113万円)か「ムーヴ X“SA”」(125万円)がおすすめだ。
後者の「ムーヴ X“SA”」は、前者の「ムーヴ L“SA”」に比べて12万円高いが、キーフリーシステム&プッシュボタンスタート、エアコンのオート機能、アルミホイールなど14万円相当の装備が加わる。
「スズキ ワゴンR・FXリミテッド」(124万9,500円)と違ってエアロパーツは装着されないが、VSCを含めたスマートアシストが付き、スタビライザーも充実。「ホンダ N ONE G・Lパッケージ」(124万円)と比べればカーテンエアバッグはないが、衝突回避支援機能やアルミホイールが付く。
以上のようにマイナーチェンジされたムーヴは、価格をさほど変えずに機能の充実が図られ、ライバル車と比較した時の買い得感が一気に強まった。
特筆すべきは安全面の充実だが、それだけでなくサスペンションの大幅なテコ入れで走行安定性の向上にも取り組んだ。
2013年にはスズキが「パレット」、ホンダは「ライフ」のフルモデルチェンジが施され、6~8月には日産と三菱が共同開発した新型軽自動車も投入される予定だ。現時点で新車販売されるクルマの38%前後が軽自動車だが、2013年の中盤以降は40%を超える可能性が高い。このような「軽自動車戦国時代」に先駆けて、ムーヴが安全性能を高めれば、さまざまな車種に波及効果をもたらす。
冒頭で触れたように、軽自動車はライバル車に負けられないからだ。
同時に、大量生産に基づくコスト低減も重要であり、「スマートアシスト」はタントなどダイハツ車に幅広く装着される。ほかのメーカーも事情は同じだ。税金の安さ、優れた取りまわし性に加え、環境性能、居住性、そしてついに安全面においても軽自動車がリードする時代がやってきたといえるだろう。
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