ダイハツ ミラ イース 試乗レポート／藤島知子(2/3)

ミラ イース『e:S』はシンプルさが持ち味

スタイリングを見てみると、第3のエコカーづくりに向けた“目的意識”が明確に現れている。軽量で省資源なクルマ作りに向けて構造最適化を実践することで、部品点数の大幅減。現行モデルのミラに対して車重は約60kgもの軽量化を実現させた。

このモデルには、ダイハツが得意とする上質さやスポーツ性を高めた“カスタム”の設定はなく、MOMO製ステアリングやエアロパーツといった個性的なアイテムは、ディーラーオプションとして用意される。ボディのシルエットは基本的には1種類。外観上の大きな違いは、上級グレードとなる“G”と“Gf”、“X”と“Xf”はフロントのアッパーグリルを横切るバーにメッキ塗装が施されてアクセントになっている。それ以外の仕様はグリル部分がボディと同色となり、控え目な印象だ。

ボディ形状はあからさまに『効率重視』を印象づける安っぽさは感じさせない。むしろ、無駄な造形が省かれているぶん、シンプルにまとまめられた印象を受ける。外板色についても、スカイブルーやシェルローズはといった色合いは自動車的な華やかさとは違って、エコでフレンドリーな新種のモデルとしては新鮮味が与えられている色だと思う。カタログを眺めながら雑貨的に選べる楽しさもあり、女性ウケは良さそうだ。

ミラ イース『e:S』ならではの珍しいポイントといえば、全グレードのシート表皮やホイールサイズが全グレード14インチで統一されていところ。通常は車両価格が手頃だと、ホイールサイズが小さかったり、シートの見栄えもそれなりだったりするのだが、ミラ イース『e:S』は数種類のパーツを設定する上で掛かるコストと時間を考慮し、パーツを共通化することで低コスト化が図られた。そもそも、ミラ イース『e:S』はシンプルさが持ち味のモデルであり、見栄えという意味でも上級モデルと大差がない。最もお買い得感が高いのは、79.5万円のベースグレードだと思う。

インテリアは奇をてらったものではなく、あくまでも落ち着いたトーンでまとめられている。イメージ的には自然との調和を求めたプリウスやインサイトといったハイブリッドカーの雰囲気に近いもの。このモデルに今ドキ感を期待してしまうと、内装色に使われている暗めのベージュがくすんだ色に見えてしまうのが残念なところ。せっかく第3のエコカーというコンセプトで改革性を印象づけるモデルなのであれば、カジュアルなモデルのミラ ココアのように、もう少し清潔感がある色調を採用してみても良かったのではないかと思う。

一方で、ダッシュボードはモダンなデザインを用いたデジタルメーターと相まって、軽自動車としては力作といえるほどの出来映え。面の造形も巧みで、繊細な陰影をもたらしている。2トーンカラーのダッシュボードの仕様は伸びやかな印象で、車内を明るく広く見せてくれるものだ。

ミラ イース『e:S』は実用性に優れた5ドアモデルということで、軽自動車としての向き合いやすさは健在だ。広々とした視界を確保できる運転席にはじまり、全高は機械式駐車場に収まる1500mm。後部座席はヒザ周りにゆとりがあって、足が組めるほどの空間があるし、外側から自然に腰を落とすことができるシートは、乗降性も悪くない。全長のわりに居住空間が広くとれるのも、エンジンルームがコンパクトな軽自動車だから得られるメリットといえる。

車内は後部座席の居住性を優先させたレイアウトになっている。後部座席は背もたれのリクライニングと前後スライドが付かない固定式で、ラゲッジスペースの床下にはパンク修理キットが詰め込まれている。そのぶん、ラゲッジ自体の容積はちょっと小さめ。買い物した荷物が多いときは座席の上に置くか、リアハッチ側から後席の背もたれを倒して積み込むことになりそうだ。