BMW M6グランクーペ 海外試乗レポート/萩原秀輝(2/2)

BMW M6グランクーペ 海外試乗レポート/萩原秀輝
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エレガンスさを感じさせつつも、そこはやはりMファミリー

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それでいて、Mファミリーの一員としての走りは少しも損なわれていない。

アウトバーンでアクセルを踏み続けても、ボディはフラットな姿勢を保ち続ける。サスペンションはしなやかに動いても、M6クーペと比べるとホイールベースが115㎜長いので、ピッチング(縦揺れ)方向、プラットホームを共用するM5と比べると車高が75㎜低いのでロール(横揺れ)方向の姿勢変化が、それぞれ基本性能の段階で抑えられているからだ。

最高速度は305㎞/hと発表されているだけに、走行モードをMドライブ2に設定しアクセルを踏み込む。200㎞/hオーバーの世界には当たり前のように突入でき、ダンパーの減衰力が高めに維持されるので一段と安定感が得やすくなっている。その結果、余計な緊張感に縛れずに済むのだ。

どんなに高速域でも追い越し車線を走り続けることをしないというアウトバーンの原則(本来は日本の高速道路でも同じはずだが)に従ってレーンチェンジを繰り返すことになるが、ステアリング操作に対する応答性が正確であり、直進状態への復帰もスムーズなので手に汗握る必要もない。

アクセルをひと踏みするだけで非日常的な速域に瞬時に移行できる

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ただ、アクセル操作に対する応答性は驚くほど鋭くなるので、サーキットならともかく一般路であれば走り最優先のスポーツ+ではなくスポーツで十分だ。それでも、4.4リッターのV型8気筒エンジンは直噴システムに加えて2個のターボチャージャーをVバンクの内側に搭載している。各バンクからクロスして排気エネルギーを導くという、BMWが特許を持つ技術を採用しているので効率よく速やかに過給効果を発揮。680Nm(69.3kgm)に達する最大トルクが立ち上がり、過激ともいえる鋭さは控えめになっても、アクセル操作に対する応答遅れとは無縁でいられる。

しかも、エンジンは迫力あるサウンドを響かせながら7500回転に迫る勢いで吹き上がる。ターボチャージャーを組み合わせていても高回転型となる、Mが手がけたエンジンの伝統を守っていることが確かめられた。

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さすがに、交通量が多めだったので300㎞/hオーバーに達することはなかったが、最高出力が412kW(560ps)に達する高性能ぶりを知らしめ、力強い加速感を残しながらヘッドアップディスプレイには289km/hが表示された。

先行車に追いついたところで減速すると、ブレーキ操作に対して速やかに制動力が立ち上がり、3桁の速度を一瞬で抜き取る。試乗車は、オプションのカーボンブレーキを装備していたので、スチール製のローターに比べ軽量化による慣性力が大幅に低減されているからだ。こうした安心感が得られるからこそ、心おきなくアクセルを踏み続けられるわけだ。

再びクルージングに移り、走行モードをMドライブ1に設定する。ダンパーの減衰力は低め領域を維持するので、サスペンションはしなやかな動きを取り戻す。エンジン回転数は7速200㎞/hで3200回転となり、サルーンカーに匹敵する優れた静粛性を実現している。

ちなみに、日本の速域であれば100㎞/h で1600回転ということになる。公道でアウトバーンの速域を試す機会はないが、M6グランクーペの性能を圧倒的な余裕として生かせばいい。7速M DCTは、トルクコンバータ付きのATのようなスムーズさでシフトアップ/ダウンを実行する。

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同乗者にとってもM6グランクーペは快適なモデルであり、車高に合わせてM6クーペと同様に乗車位置も低いので前席の頭上スペースは十分に確保されている。後席は、大柄な男性にとって頭上スペースが最小限となるが狭苦しさを感じるほどではない。

足下スペースも広く、結果として大人4名がくつろいで乗れる室内スペースを得ている。それだけに、同乗者は内に秘めた性能に気づかないかもしれない。なおかつ、上質なレザーを惜しみなく用いたインテリアのラグジュアリーな装いにより、最高級サルーンカーに乗っている実感を持つに違いない。

だが、アクセルをひと踏みするだけで非日常的な速域に瞬時に移行できる。そうした、日常と非日常を自由に行き来できる可能性を所有することこそ、M6グランクーペならではの価値といえそうだ。

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萩原 秀輝
筆者萩原 秀輝

在学中より自動車レポーターとして活動をスタート。 同時期から多くのツーリングカー・レースに参戦。多数の入賞や優勝経験もある。 こうした経験を生かし「クルマの走り」と「ドライビングの理論」 について深い洞察力を持つ。 現在では有力な紙媒体をはじめ、WEBにも執筆するなど、 その活動は多岐にわたる。 また、クルマに対する知識とドライビング理論に基づき、 自動車メーカーなどが主催するセーフティ・ドライビング講習会のインストラクターも務める。特に、輸入車メーカー主催のドライビング・スクールでは、 日本への導入開校時の1989年から現在に至るまで、累計で10000人を越える受講者を集め、その指導に携わっている。記事一覧を見る

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