アストンマーティン シグネット 海外試乗レポート/川端由美(1/2)
- 筆者:
- カメラマン:アストンマーティン
小さなボディからも感じ取れる“アストンマーティンらしさ”
アストンマーティンのCEOであるベッツ博士とトヨタの社長である豊田章男氏。
この二人の“カー・ガイ”がニュルブルクリンク24時間耐久レースのパドックで知り合ったことがきっかけで生まれた「シグネット」。
「白鳥のひな」という意味を持つ車名と知って、英国人らしいウィットに富んだネーミングだと思った。聞く人の気持ち次第では、醜いアヒルの子とも、美しい白鳥の子とも取れるからだ。
2011年のジュネーブ・サロンでこのクルマが登場したときには、このクルマに対する評価は賛否両論だった。
純然たるスポーツカーであることを是とし、ボディサイズやコストの制約から解放されたとき、クルマはこれほどまでに美しくデザインできるのかと感心していただけに、シグネットを見た瞬間にもろ手をあげて歓迎することはできなかった。
実際、見た目の印象は最も好みがわかれるところだろう。
ボンネット上のパワーバルジやサイドのエアスケープはダミーだし、コロンと丸いフォルムはどこから見ても兄貴分たちのように”流麗”ではない。
しかし、一族最大のバッジを囲むように見開いた大きな瞳を持つフロントビューは、ベビー・スワンと評すべき愛らしさがある。日本から英国ゲイドンまで送られた後、150時間をかけてアストンマーティンの末っ子として生まれ変わるという売り文句は伊達ではない。
私自身、ゲイドン本社を訪問して、シグネットが白鳥の子に生まれ変わるシーンを目の当たりにして驚いた。
ボディを塗りなおし、手縫いのシート地、遮音の追加、エンジンのリマウントなど、150時間もが“アストンマーティンらしさ”の演出に費やされていたのだ。
そうした事実を知らずにいても、美しい光沢のある滑らかな塗装や質感の高いインテリアに触れれば、小さなボディのあちこちからアストンマーティンらしさを感じることができる。
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