自転車への自賠責保険加入を“義務化”したい理由とは・・・違反すると「罰金」はあるの?(1/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
自動車ではなく“自転車”に「自賠責保険」の加入を義務付け
自転車にも、自動車と同じく「自賠責保険の加入」が義務付けられるのか!?
大阪府が「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例(仮称)案」の概要を発表した。そこには交通安全教育の充実などと併せて、「自転車の利用者は自転車損害賠償保険等に加入しなければならない(義務化)」という記載がある。さらに「自転車の小売業者は自転車の購入者に対し、自転車損害賠償保険等の加入等の有無を確認するよう努める」とも記載されている。
これと併せて大阪府教育委員会は、府立高校の生徒などに自転車通学を許可する際、「保険加入を条件とする」方針を固めたという。
自転車に自賠責保険の加入が義務付けられると、自転車事故に対する備えが手厚くなる代わりに、ユーザーは保険料を負担せねばならない。
その扱いが自動車の自賠責保険に準じるとすれば、保険に加入しないで自転車を使うと懲役や罰金が科せられることになる。
ちなみに自動車の「無保険車運行」で罰せられた時は、1年以下の懲役、あるいは50万円以下の罰金と、6点の違反点数が科せられる。自賠責保険に非加入の車両が交通事故の加害者になった場合、自動車損害賠償保障法に基づく政府保障事業で被害者を救済する制度はあるが、最小限度の保険として非加入には厳しい罰則を設けた。
自転車の無保険も罰則の対象になるのか。また新たに自転車の自賠責保険を設けるとなれば、その運営方法も気になる。
そこで大阪府に問い合わせた。新たに自転車用の自賠責保険を設けるのか。また罰則はあるのか。
自賠責保険を“義務化”したい理由
「新たに自転車用の自賠責保険を創設するわけではありません。現時点でも、さまざまな保険会社が自転車に適用される損害保険を設けています。自動車の任意保険に特約で付帯できる保険もあります。ユーザーの都合に合わせて、何らかの保険に加入していただきたいのです。義務化という表現をしていますが、今のところ罰則を設ける予定はありません」と言う。
つまり「自転車損害賠償保険」を「義務化」と記載してはいるが、自動車の自賠責保険とは異なり、実質的には任意保険に近い性格だ。「義務化」も話を聞くと罰則のない「努力義務」だが、「奨励」に比べると保険への加入を強く求めている。
大阪府が「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例(仮称)案」を設けた理由は、自転車による事故が増加しているからにほかならない。
大阪府では2015年に自転車に関連した事故の死者数が50人に達し、前年に比べて16人の増加となった。対前年比に換算すると147%に達する。特に高齢者が多く、2015年の死者数に占める割合は50%。その内の80%が頭部の傷害で、65歳以上の致死率は64歳未満の約4倍に達するという。
日本損害保険協会のデータで、自転車乗車中の死傷者数を全国的な数字で見ると、65歳以上が19%で最も多い。次いで15歳以下が17%、16~19歳が14%と続く。注意力が散漫になりやすい若年層と高齢者が目立つ。
自転車乗車中の事故の内、自転車が加害者になった件数は全体の16.2%(約2万件)で、歩道や横断歩道上で歩行者と接触したケースもある。また自転車乗車中に生じた事故の84%は4輪の自動車を相手に発生しており、この中にも自転車の過失割合が高い事例がある。
こういった事故では、自転車の乗員は相手の過失割合に応じた補償しか受けられず、残りは自己負担になってしまう。となれば自転車の保険も、自動車と同様、相手方の損害を補償する対人賠償と、自分に生じた損害を補償する人身傷害や搭乗者傷害に相当する保険が必要だ。
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