プジョー 206CC 試乗レポート

  • 筆者: 西沢 ひろみ
  • カメラマン:芳賀元昌
プジョー 206CC 試乗レポート
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スポーツモデルに冠される称号、S16が与えられたクーペカブリオが登場。

電動開閉式メタルルーフを持つ206CCが国内デビューしたのは昨年5月のこと。発売と同時に、年内の供給台数700台に対して半年以上のバックオーダーを抱え、1.6L+4速ATの1モデルながら1年間で約1500台を販売した。この数値が206シリーズの15%を担うことからも、206CCの人気ぶりが伺える。国内市場では珍しく、MT比率が40%にものぼるプジョーは、当初半年後に2.0L+5速MTの206CC S16の導入も予定していた。けれども混乱を避けるために、発売を延期しざるを得なかったのが本当のところだ。

初夏を迎え、206CCの予約待ちの状況がほぼ解消に向かう。画して、走りの象徴である“S16”の上陸することになったわけだ。同時に、鮮やかな黄緑色のボディカラー、マリオ・グリーンが新たに加わった。

オープン・クルージングとスポーティな走り。2つの個性を備えているのが最大の魅力だ。

ホットハッチの206 S16と同じアルミ合金のヘッド&シリンダーブロックを持つ4気筒DOHCエンジンは、ロングストロークらしいレスポンスの良さが身上。レッドゾーン手前の6000回転までストレスなく軽快に吹き上がり、低速域から高速域まで、俊敏という言葉がピッタリのスピードのノリを見せる。学習機能付電子制御4速ATは変速に迷いが生じ、ショックを伴うのが気掛かりだったが、MTはクロス化されたギア比が小気味いい加速感を与えてくれる。

だがフットワークは、予想するほど引き締められた印象は受けない。偏平率の高い205/45ZR16サイズのタイヤを履いているにもかかわらず、オープン・クルージングも大切にした乗り心地の良さが味わえるのだ。とはいえ連続するコーナーも得意の場面。素直なハンドリングと路面への高い接地感が、流れるようなコーナリングを披露する。

太陽の光と爽やかな風を楽しむクルージング、コントローラブルなスポーティ走行。クーペカブリオの名前の通り、2つの個性を自在に楽しめるのが、S16ならではの魅力といえる。

内外装のS16の主張はひかえめ。実用性は想像以上に持ち合わせている。

パワーソースは206CCと大きく異なるけれども、“S16”のスタイルの専用アイテムは、フロントエアダムとタイヤ&アルミのサイズ& インチアップにとどまる。インテリアも、雨滴感知オートワイパーが奢られ、操作性の高いアルミ製ペダルが装備されているだけ。スポーツ性よりも、クーペカブリオレとしてのスタイリッシュフォルムが優先されたわけだ。

電動開閉式メタルルーフは、左右のフロントフックを手動で外してスイッチを押すだけ。約20秒でルーフが自動的にトランク内に格納される。後方からの風の巻き込みは、意外に少なかった。街中でのクルージングはサイドウインドウを閉めたままでも髪が乱れることはないし、制限速度内での高速クルージングもウインドウを立てれば十分にこなせる。

驚かされるのは、実用性の高さだ。エマージェンシーながら4シーターを備え、後席は荷物を置くスペースとしても活用できる。クーペ時は410Lという上級セダン並、カブリオレ時にも175Lのトランク容量を確保しているのも見逃せない。

206CCとの価格差は15万円。スポーツ性を考えるとS16は魅力タップリのお買い得車だ。

昨年、プジョーはフランス車として初めて、国内における累計販売台数1万台を突破した。このうち約60%を占めるのが206シリーズ。つまりプジョーの最主力モデルにあたる。その中で206CCは予想以上の反響を得て、シリーズの15%を占めるに至った。また名義上のユーザーの25%が女性だそうだ。おそらく実際の女性ユーザーはもっと多いだろう。となると、男性ユーザーをもっと取り込みたくなるのは当然のこと。その大役を課せられたのが“S16”というわけだ。

プジョーらしい走りを求めると、206CCには物足りなさが多く残る。その点“S16”は満足度の高い仕上がり。国産車や他の輸入車では考えられないけれども、MT比率の高いプジョーは販売増が見込めるはずだ。しかも206CCとの価格差はたった15万円。見た目の差別化は少ないが、スポーツ性を考えれば魅力的なお買い得モデルといえるだろう。

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