ダイハツ ムーブ & ムーブカスタム 試乗レポート

  • 筆者: 竹岡 圭
  • カメラマン:原田淳
ダイハツ ムーブ & ムーブカスタム 試乗レポート
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ムーヴの伝統を受け継ぎながら革新的に進化

初代ムーヴが誕生したのは1995年8月。端的に言ってしまうと、1993年に軽マルチワゴンというカテゴリーの先駆者としてデビューしたスズキ ワゴンRの対抗馬として登場したのだ。両者は未だによきライバルといったところだ。当時、ムーヴならではの装備として横開きのバックドアが特徴的だった。余談だが、いちばん多く上開きを選択するのは、雨の日が多い高知県だったそうだ。

もうひとつムーヴの特徴となっているのが、イルミネーションの使い方だ。軽のイルミネーションの先駆者らしく、未だに光の使い方の伝統はそこかしこに受け継がれている。

そしてもうひとつ忘れちゃいけないのが、97年5月に登場したのが裏ムーヴと呼ばれたムーヴカスタムの存在だ。同じく97年にワゴンRもエアロRSというカスタムモデルを出したが、ワゴンR・RRという名前は98年なので、このチョイワルコンセプトはムーヴが先取りしたといっていいだろう。

驚きの後席の広さを持つ室内空間

今度のムーヴは実に4代目となる。初代から受け継がれてきた箱型スタイルを脱ぎ捨てて、セミワンモーションフォルムというボディラインを採用してきたのにはいささか驚いた。ダイハツにはタントという箱型マルチワゴンがあることだし、時代に即した正しい選択だと思うのだが、今までのユーザーに受け入れられるかどうか、余計なお世話だが少々心配なところではある。

インテリアもかなり斬新だ。先代もそうだったが、ムーヴはダッシュボード&インパネのラインにかなり凝ったデザインを採用してくる。先代は出っ張ったインパネのいちばん上にエアコンの吹き出し口があったりして、視界的にもあまり評判がよろしくなかったが、新型は同じく上に出っ張ってはいるものの視界の妨げになっていないのは、さすがのレイアウトといったところ。ユニークな形状から光が差し込むようなデザインになっていて、イルミネーションに凝るムーヴらしいなぁと頷かされるところである。

さて、パッケージング新しくなり、そこに生み出されたのは室内空間の広さだ。特に目を見張るのは後席の広さである。255mmもスライドする後席をいちばん後ろに下げると余裕で足が組めてしまうほど。なんでもあの超高級セダンよりも広いというからビックリしてしまう。ちなみに身長175cmくらいの男性のドライビングポジションに合わせ、シートをいちばん前にスライドしても、まだ膝が当たらないくらい余裕があるのには、もうただただ驚くしかないといったところだ。

燃費の良さと安定感のムーヴ、最速級の走り味のムーヴカスタムRS

新しくなったのはスタイルだけではない。プラットフォームもエンジンもトランスミッションも、今度のムーヴはすべてが新しいのである。オリジナルのムーヴはNAエンジンのみ、カスタムにはNAとターボが用意されている。そこに5MTと4ATとCVTが組み合わせによって用意されているというワケだ。中でも、NA+CVTという組み合わせは今回が初となる。

さすがにアクセルペダルを踏み込み高回転域に突入すると騒がしいが、クルージングレベルならばまったく問題ナシ。それよりなにより燃費が10・15モード23km/Lというのが、ガソリン高騰のご時世嬉しい限りである。最速セットとなるソニカ譲りのターボ+CVTの組み合わせになっても21.5km/Lを達成しているというのだから、やはりCVTはかなり効くようだ。

ちなみにこのターボ+CVTの組み合わせは言うまでもなく余裕たっぷりなことこの上ナシである。NAモデルのハンドリングは安定志向だが、乗り心地も抜群によくて、かなり路面の悪いところでも上手くショックをいなしてくれるので、ドライバーのオシリにガツンという衝撃が伝わることはまったくないレベルに仕上がっている。

上級車からの乗換え組みも納得の1台

高級セダン並みの広さと見合うようにといったワケではないだろうが、スペシャリティ装備も満載されている。なんとムーヴカスタムには、レーザーレーダーとカメラを組み合わせて、前走車との追突事故を防いでくれるプリクラッシュセーフティシステムや、車線から逸脱しそうになったときに知らせてくれる車線逸脱警報機能(レーンキープアシストシステム)が用意されているのである。もちろん軽初の採用だ。他にもソニカから採用された、レーダークルーズコントロールも用意されるなど至れり尽くせりなのだ。

そのムーヴカスタムだが、最上級モデルとなるRSは走り味も最速級である。ローダウンサスペンションやスタビライザー、そして16インチタイヤを履かされた足回りのおかげで、面白いほどキビキビした走りをしてくれるのだ。かといって乗り心地は日常使いレベルで納得できるくらいに収まっているので、マルチワゴンでも走りを楽しみたいというオーナーにはピッタリの選択である。全体的に質感が高く、ダウンサイジングしたいけど、機能はダウンしたくないという上級車からの乗換え組みも納得の1台に仕上がっているのが新型ムーヴなのだ。

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竹岡 圭
筆者竹岡 圭

OLを経て、自動車専門誌を皮切りに、モータージャーナリスト活動を開始。国内外のレース、ラリーなど自らモータースポーツ活動に関わりながら、海外のモーターショーを精力的に回るなど、なにごとにも積極的に取り組んできた結果、近年は一般誌、女性誌、Web媒体、新聞、TV、ラジオなど、その活動はとても多彩なジャンルに広がっている。記事一覧を見る

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