アルファロメオ アルファスパイダー 試乗レポート

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80年の歴史を誇るアルファロメオのスパイダー

アルファロメオの歴史は1910年、イタリアのミラノ市からはじまる。当時のイタリアは都市間のライバル意識が激しく、アルファロメオは、トリノ市のフィアットに対抗してつくられた自動車メーカーだった。アルファロメオはモータースポーツでの活躍で、その名を高めた。のちにフェラーリ社を起こしたエンツォ・フェラーリはアルファロメオのレーシングドライバーだったのは有名な話。

アルファロメオは生産車も常にスポーティなモデルをつくり続けてきた。

スパイダーという車名はオープンカーのこと。アルファロメオは約80年間、スパイダーをラインナップしている。とくに1950年代以降は美しいスパイダーを市場に送りこんでいる。その多くはピニンファリーナのデザインだ。先代は1996年から日本で販売され、2006年までに1700台が登録された。新型はクーペモデルのブレラをベースにピニンファリーナとアルファロメオのデザインセンターの共作になる。

先代よりもラグジュアリーで落ち着いた印象

スタイリングの特徴は、フロントマスク中央の楯型のグリルとそこからV字に延びるボンネットライン。ショルダーの盛り上がりはグラマラスな印象だ。今回のスパイダーは、ボディ部分に厚味があり、これまでの軽快さよりも、もう少しラグジュアリーで、落ち着いた印象になる。ボディサイズは先代のスパイダーよりも全長は135mm、全幅は50mm、全高も75mm大きくなっている。ホイールベースは10mm長い。車両重量はV6モデルではなんと36kgも重くなっている。これはフルタイム4WDや幌が電動式になったことも影響しているはずだ。

インテリアはシート、内装はアルファロメオが開発したスウェードフィールのAlfatexを採用、さらにレザーシートも選べる。電動式のソフトトップの耐候性も高い。またシート後方には大きめのラゲッジスペースも備わる。そのうしろにはロールバーと、メタリックな“コブ”がアクセントとしてデザインされている。幌のリアウィンドはガラスになった。

軽快なフィールなら2.2Lエンジン

エンジンは直4のガソリン直噴2.2Lと、V6のガソリン直噴3.2Lが用意されている。2.2LはFF車、3.2Lはフルタイム4WDを採用している。ミッションは両エンジンともに6速のマニュアルミッションのみの設定だ。

4気筒2.2Lモデルから試乗する。こちらは16インチホイールの2.2JTSプログレッションと、17インチホイールの2.2JTSディスティンクティブの2グレードがある。17インチホイールのディスティンクティブは、クラッチペダルも軽く、軽快。2.2Lエンジンもググーンというパンチ力には乏しいが、マニュアルミッションを上手に使えば、かなりスポーツ走行を楽しめる。ハンドリングも素直で、FFらしさはあまり感じられない。

一方、3.2Lモデルはクラッチペダルが重く、シフトも重め。ハンドリングは素直だが、軽快感はイマイチ。エキゾーストノートの室内への侵入は2.2Lよりも大きかった。

ボディ剛性と居住空間が大きく向上

新型のスパイダーになり、大きく進化したのは、ボディ剛性と居住空間だ。とくに、2.2Lモデルは、オープンにしてもルームミラーの揺れは小さく、先代のワナワナした動きはほとんどなかった。

居住空間も、ホロを閉じていてもヘッドスペースは十分に確保され、さらにシートうしろの荷物スペースのおかげで、後方の空間も広くなり、圧迫感がなくなったのだ。トランクスペースも少し大きくなったように感じる。

ボディのつくりも向上した。しかし、雨の日に乗ると、ドアを開けたときにシートにしずくが落ちるなど、相変わらずの部分も残っている。このあたりの配慮もそろそろ手をつけてほしい。

スパイダーは2.2と3.2がラインナップしているが、ドライビングやオープン感覚を楽しむなら2.2で十分。さらに試乗する機会は少なかったが16インチホイールのベースモデルもなかなかいい味を出している。

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石川 真禧照
筆者石川 真禧照

1947年東京都生まれ。1970年日刊自動車新聞社入社。翌年同社退社後、フリーの自動車評論家となる。1982年「I.W.OFFICE」を設立し、自動車を中心としたメディア活動を開始。「自動車生活探検家」として、『GORO』『DIME』(小学館)、『HOT DOG PRESS』(講談社)、『カーセンサー』(リクルート)など多数のメディアで活躍、現在に至る。日本モータースポーツ記者会会員。日本自動車ジャーナリスト協会副会長。記事一覧を見る

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