ホンダがシビックを7年振りに日本で復活させる本当の理由(1/2)

ホンダがシビックを7年振りに日本で復活させる本当の理由
ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) ホンダ シビック タイプR コンセプト(2016パリ) 画像ギャラリーはこちら

開発の本音は意外なところにあった

ホンダ シビック セダン

「(自動車産業界が大変革期に突入した)いま、我々にとって最も大切なことは、原点回帰です。ホンダとして、モノ造りを今一度見つめ直したい」。

つい先日、ホンダの開発部門の幹部らと意見交換した際、そろそろ会もお開きになるという段になって、ホンダ側からこうした言葉が出た。

この時の状況を、さらに詳しく説明すると、まず筆者が本田宗一郎氏の言葉を引用し、これからのホンダのあるべき姿について自問自答した。これに対して、ホンダ側が「原点回帰」という言葉を使い、ホンダとしての熱い想いを語ったのだ。

また、そうした会話のやり取りの中で、ホンダ側は日本のシビック復活についても触れた。つまり、日本でのシビック復活は、ホンダにとって“原点回帰への証明のひとつ”なのだ。

なんとも抽象的な表現で、読者の皆さんには分かりにくいと思う。だが、ホンダ側と対話したその場で、『ホンダはなぜ、このタイミングでシビックを日本で復活させるのか?』という謎について、筆者としては明確な答えが見えたような気持ちになった。

>>日本で復活の新型シビックは3タイプ!?セダン/ハッチバック/タイプRを写真で見る

ホンダ国内営業の考え方はもっと現実的

マツダ アクセラスバル インプレッサ

一方で、日本の国内営業にとって、シビック復活は必要という判断だ。ホンダにとって、Cセグメントでライバルたちに真っ向勝負できる戦力が必要なのだ。

ただし、誤解がないように申し上げておきたいが、これは筆者の個人的な解釈であり、国内営業の関係者が直接発言した内容ではない。

現在、ホンダの日本投入モデルはハイブリッドを単独モデルとしてカウントしないと、合計24車種。中核は、軽自動車のNシリーズとBセグメントのフィット、さらにミニバンのフリードとステップワゴン。その他では、トヨタCH-R参入で今後さらなる盛り上がりが期待されるSUVのヴェゼルが奮闘している。

セダンでは、アコード、レジェンドという大御所と、比較的新しい戦力であるグレイスの3モデル。シビック全盛期は、日本市場のボリュームゾーンはCセグメントセダンであったが、近年の日本におけるCセグメントは“プリウスひとり勝ち”が長らく続いてきた。そこに勝負を挑んだのが、マツダとスバルだ。両社は、「走る歓び」を前面に押し出して、グローバルCセグメントの王道であるマツダ・アクセラと、スバル・インプレッサで、飛び道具満載のトヨタ・プリウスに挑んできた。そうした愚直な戦い方が、今日のマツダとスバルのブランドイメージの確立へと結びついた。

2016年2月のホンダ八郷社長会見の様子

このようなマーケットの状況を、全国のホンダのディーラーは歯がゆい想いで見つめてきた。それが、目を海外に向けると、アメリカでは2015年11月に発売された10世代シビックが、グローバルプラットフォームの採用、斬新なデザイン、加えてスポーツ性を強調する1.5リッターVTECターボも後押しとなり販売が好調。2016年1~11月の累積販売台数は、前年同期比109%増の33万5445台を記録している。となれば、日本のディーラーからも、ホンダの“走る歓び”をダイレクトに訴求する商材として「是非とも、シビックが欲しい」という声が挙がるのは当然だ。

その他、生産の観点からもシビックは重要な位置にいる。日本におけるホンダ車の需要がNシリーズへと偏在が進む中、グローバルプラットフォームとなった10世代シビックは、狭山工場の生産効率を上げるために必要不可欠な存在だ。

また、八郷社長が今年2月に「2018年までに日本でシビック復活を目指す!」と発表した時点では、ホンダとしてはトランプ政権誕生を想定していないはずだ。来年以降、トランプ氏が大統領選挙中に公約した通り、対米輸出の関税が上昇する場合、狭山工場のあり方を根本から見直すことになる。そうなれば、なおさら日本向けシビックの存在感が増す。

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

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