大きな認識ミスがあるホンダ F1パワーユニットの実態【コラム】
- 筆者: 国沢 光宏
画期的な設計だと言われているホンダF1のパワーユニットの概要が分かってきた。
最大の特徴はターボ(過給器)に『軸流式』と呼ばれるタイプを採用していることである。一般的なカタツムリのような形状をしているターボは『遠心式』と呼ばれており、ある程度のサイズを必要とし、重量もあるためレスポンスに問題を抱えてしまう。
軸流式ターボは航空機のジェットエンジンのような形状をイメージして頂ければ解りやすい。吸い込んだ空気をそのまま圧縮し、後方に送り出す。ちなみに航空機用エンジンの場合、ブレードを何枚も組み合わせ多段にするが、F1エンジンはレギュレーションで1段に限定される。遠心式より小さく作れ、レスポンスも良い。
ホンダのパワーユニットは、いかにもコンパクトに見える軸流式ターボを使っているため「超小型パワーユニット」などと言われているのだった。その割に期待通りの性能が出ていないし、信頼性という点でも厳しい。
なぜか?少しずつ漏れてきたホンダF1のパワーユニットを見た専門家は「空気の流れの取り回しに大きな認識ミスがある」と言う。
空気は少なからぬ質量を持つ。1リットルあたりおよそ1.3g。F1エンジンでフル出力を出しているときは、1秒間で350gもの重さを持つ空気が流れているのだった。缶ビール一本分です。そんなことから、エンジン設計って空気の流れを曲げないか、曲げるとしても緩いコーナーで曲げていくダクト形状を基本に考える。
現在F1で使われているパワーユニットを見ると、吸入した空気をターボで圧縮。そいつをインタークーラーに通し、エンジンへ送り込むルートが極めて素直なのがメルセデスとフェラーリだ。大きな「弧」を描くように、タービンとインタークーラーを通過し、エンジン吸気ポッドに入っていく。全く無理していない。
ホンダF1のパワーユニットを見ると、そもそも前後方向に置き、空気の流れという点で一方通行の軸流ターボを使っているから、空気の流れを狭いスペースで無理矢理Uターンさせなければならない。さらにインタークーラーの置き場所だって見るからに厳しく、これまた狭いスペースで180度反転させている。2度も180度ターンさせているワケ。
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