日本のAT技術の今後は?

日本のAT技術の今後は?
日産 CHERRY(チェリー) VWロゴ レクサス IS-F 画像ギャラリーはこちら

日本のAT技術の今後は?

ATについてお聞きします、昔ニッサンにはスポーツマチックというATがありました。あれってシーケンシャルですか?

また、大好きだったいすゞにはNAVI5という2ペダルマニュアルがありました。あれってシングルクラッチ?すごく進んだATを持っていたのに、いつの間にかドイツ勢に抜かれたのか?

今後の日本のATはどうなるんでしょうか?ニッポン、がんばれ!!(コンチキチン)

其の疑問、MJブロンディがお答えいたします!

コンチキチンさんコンニチハ。ではご一緒に、日本のAT技術の歴史を一部紐解いていきましょう。

日産 CHERRY(チェリー)

まず日産のスポーツマチックですが、これはチェリーやパルサーに搭載されたもので、前進3段、後退1段のトルコン式セミATでした。登場は1977年です。

名前とは裏腹に、まったくスポーティではない、簡易式オートマチックでした。

現在のATは、自動的に変速するのがアタリマエですが、トルコンATが普及したての頃は、「クラッチ操作がいらない」というだけで驚愕モノでして、十分な商品価値があったんですよ。

セミATというと、現在ではフェラーリF1マチックのような、シングルクラッチの操作をコンピューターで自動化したものを呼ぶのが一般的ですが、昔は、トルコンはついているからクラッチペダルはないけれど、変速はドライバーがレバーをガチャガチャ操作して、自分で行うものを指したんです。

クラッチ操作はいらないけれど、変速は自動ではないので「セミAT」と呼んだんですね。この仲間には、シビックやアコードに積まれた“ホンダマチック”があります。

そして1984年、いすゞは「アスカ」に“NAVI5”なる、セミATを導入しました。

これこそ、フェラーリF1マチックやアルファロメオ・セレスピード、フィアット・デュアロジックなどに先駆けて登場した、世界初のシングルクラッチ式セミAT(フルオート機構付き)でした。

が、まだ制御技術が未熟だったため、フルオート状態では対応しきれない状況も多々あり、販売は振るいませんでした。

VWロゴ

さて、コンチキチンさんは、「日本のAT技術はいつの間にドイツ勢に抜かれたのか?」と嘆いてらっしゃいますが、具体的には、VWグループの開発したデュアルクラッチトランスミッションを指すのだろうと推察します。

確かにデュアルクラッチは、フルATのイージーさとマニュアルミッションのダイレクトさを兼ね備えた、非常にすぐれた変速機です。

しかし、あらゆる意味でCVTやトルコンATより優れている、というわけでもありません。

最近は改良されましたが、デュアルクラッチATは、発進時や低速走行時にはギクシャク感があり、当初、北米市場では不評だったんです。

アメリカ人は、「やっぱりトルコンじゃなきゃダメだ」という反応でした。

一方、ヨーロッパでは、低速時の快適性より高速時のダイレクトさやスポーティさを重視する傾向があるので、大好評でした。

レクサス IS-F

ただしこれは、ロックアップ制御の進んだトルコンATでも実現できることでして、トヨタがレクサスIS-Fに搭載した8速トルコンATは、総合的にはデュアルクラッチATと互角以上の性能を持っていると思います。

また日本は、CVTの開発に関しては、常に世界のトップランナーでした。CVTにも弱点はありますが、日本のような低速道路環境には適していますし、燃費では有利です。

ただ、無段変速のフィーリングが、スポーティに走らせるのには適していないので、ヨーロッパでは常に不人気です。

日本車はもともと、国内および北米市場を目指して造られていたので、スポーティなATの開発では、最近ドイツ車に遅れを取っている部分はありますね。

それでも総合的に見れば、日本のAT技術は、ドイツ勢に決して負けていないと思いますよ。

MJブロンディの「ひとりごと」

日本車にトルコンATが導入されたのは、1950年代くらいからですが、70年代に入るまでは、まだまだ珍しい存在でした。

私が中学3年生の時、我が家にやってきた日産ローレルは、3速フルオートマチックでした。

西暦で言うと1977年です。当時のATは「最先端メカ」扱いで、我が家に来るお客さんはみんな、「クラッチペダルがないんですか!?」「上り坂でブレーキを離してもバックしないんですか!?」と、魔法でも見たように感嘆の声を上げていました。

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清水 草一
筆者清水 草一

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で交通ジャーナリストとしても活動中。雑誌連載多数。日本文芸家協会会員。記事一覧を見る

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